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1章

12・気のせいでしょうか、少し笑ってくれたように見えます

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「あの、勘違いかもしれませんが。もしかして今のお話は、セルディさまが私と仲良くしてくれるということでしょうか?」

 少し下がった場所に立つ、ポリーの沈黙が伝わってくるような間が空く。

 セルディはその真意を確かめるように、エレファナをまじまじと見つめた。

「……いいのか?」

「はい。私は仲良くしたいです」

(あら。セルディさまから伝わってくる張り詰めた感じが、少し緩んだ気がします。仲良くしてもらえるのかもしれません)

 期待からエレファナが笑顔を浮かべると、セルディの硬質な銀の眼差しが柔らかくなる。

「エレファナ、ありがとう。話の続きはまたにしよう。ポリーから許可が出るまで、無理はできない」

「わかりました!」

「困ったことがあったらポリーに話せるな?」

「はい、話せます!」

「時間が空けば俺も隣の部屋にいるようにする。なにかあれば遠慮せずに呼べるな?」

「呼べます! 私はセルディさまに言われた通り、よく飲んでたくさん食べて早めに寝ます。困ったことがあったらお話しします!」

(たくさんお願いをしていただけました! きっとお役に立てていますし、しばらくは大丈夫そうです!)

 エレファナは寝台に横たわったまま、楽しいことを待ちわびるようにセルディを見上げる。

「セルディさまのお話の続きは、元気になったあとですが……。私、すでに元気になってきたようです。ふふ。きっともう少しで、色々なお話ができますね」

「そうだな」

 セルディは癖のない黒髪を揺らしながら穏やかに頷くと、エレファナの首の辺りまでふかふかの寝具をかけた。

(あ。気のせいでしょうか、少し笑ってくれたように見えます)

 エレファナはまじまじとその美貌を見つめたが、セルディはすぐに立ち上がったため隠れてしまった。

 セルディはこの場を去る前に、先ほどからの彼の振る舞いに目を見開いているポリーへ一声かける。

「ポリー、言うまでもないと思うが」

 ポリーはぎくりと肩を揺らし、表情を引き締めた。

「わ、わかっております。予想もしていましたが、まさかここまでとは……今この場で起こったことは、他言無用と致します」

「……? いや、エレファナのことを頼むと伝えたかっただけだが」

「あの、セルディさま。まさか自覚が無いのですか?」

「ポリーまでそんなことを言うのか」

 セルディはいまいちわかっていない様子で部屋を出て行く。

 エレファナはふかふかの寝具にくるまれたまま、そのすらりと伸びた後ろ姿を見送った。







 ***




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