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5章
39・旦那さまのしたいことはこれでした
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セルディが指し示す林の先に、エレファナと同じほどの丈の木が青々と葉を茂らせている。
駆け寄ってみると、枝葉の隙間にはコインほどの大きさをした丸く青い果実が、群れるようになっていた。
「セルディさま、これは一体なんの木ですか?」
「ここに自生しているブルーベリーだ」
「わぁ、こんな風に実っているのですね。はじめて見ました!」
「ドルフ領は手つかずの自然が溢れていて、野生の植物も色々ある。ブルーベリーの実は柔らかいから、潰さないように気をつけて採って食べよう」
「とれたてを食べられるなんて……! それだけでごちそうです!」
セルディが慣れた様子で摘み取っていくので感心しつつ、エレファナも潰さないよう慎重に、見よう見まねでいくつか採る。
ころんとした数個の実をそっとてのひらにのせて、エレファナは感嘆の声を上げた。
「綺麗な宝石のようです!」
「しかもこの木は特別だからな。普通の実の倍ほどの大きな実がなる」
「すごいです!」
「そうだろう。俺がドルフ領に来て一番初めに喜んだのはこれだな」
セルディがぱくりと実を頬張るその姿を、エレファナはまじまじと見つめた。
(なんだかいつもは真面目なセルディさまが、今はやんちゃな少年のような気がしてきました)
「セルディさま、食べ慣れた感じがかっこいいです」
エレファナが憧れるような眼差しを向けるので、セルディは「君はそんなことまで褒めるのだな」と笑いながら、自分の採った実をエレファナの口へひょいと入れる。
「採ったばかりは味が違うのだが、わかるか?」
潰さないように気をつかったブルーベリーだが、口の中では意外とはりがあるように感じられた。
おそるおそる噛んでみると、果肉がじゅわっと溢れる。
「! すごく濃い味がして甘いです! ジュースを超えるみずみずしすさです!!」
エレファナが目を見開いて感激していると、セルディが最後にとっておいた大粒もくれる。
「ようやく俺のしたいことが叶ったな」
「セルディさまのしたいこと……?」
エレファナはセルディとはじめて食事を取ったときのことを思い出した。
「あ、覚えています! セルディさまが一緒に苺を食べたとき、言っていました。私と話してしたいことが見つかったけれど、もう少しあとの方がいいと……このブルーベリーのことだったのですね!」
「ああ。近々散歩がてらここ来て、一緒に食べようと思っていたんだ」
(あれは、私がはじめて自分のしたいことができたときでした。だからセルディさまは、私とここに来ようと思ったのですね。あのとき、一緒に果物を分けて食べた私がすごくすごく、嬉しかったから……)
「セルディさま。素敵なところに連れてきてくださって、ありがとうございます」
「気に入ってくれたのなら、なによりだ。この木は変異種なのか、一般的な物より大きさも倍以上ある。甘みも強くて、俺のお気に入りだからな」
「そう言われるとますます、特別な味に思えてきました!」
エレファナは柔らかな酸味と濃い甘みが凝縮されたその実を自分で摘んで食べたり、木の幹や枝葉に触れたり観察したりする。
そうしているうちに二人の唇がブルーベリー色に染まったので笑いあってから、エレファナの魔導で色素を綺麗に分解して消した。
「エレファナは当然のように、こんな魔導まで使えるのだな」
「はい。普段からそうしていたので、魔導は私の手足のようなものです。でも力加減が難しいです」
エレファナは右のてのひらを空に向けて広げる。
駆け寄ってみると、枝葉の隙間にはコインほどの大きさをした丸く青い果実が、群れるようになっていた。
「セルディさま、これは一体なんの木ですか?」
「ここに自生しているブルーベリーだ」
「わぁ、こんな風に実っているのですね。はじめて見ました!」
「ドルフ領は手つかずの自然が溢れていて、野生の植物も色々ある。ブルーベリーの実は柔らかいから、潰さないように気をつけて採って食べよう」
「とれたてを食べられるなんて……! それだけでごちそうです!」
セルディが慣れた様子で摘み取っていくので感心しつつ、エレファナも潰さないよう慎重に、見よう見まねでいくつか採る。
ころんとした数個の実をそっとてのひらにのせて、エレファナは感嘆の声を上げた。
「綺麗な宝石のようです!」
「しかもこの木は特別だからな。普通の実の倍ほどの大きな実がなる」
「すごいです!」
「そうだろう。俺がドルフ領に来て一番初めに喜んだのはこれだな」
セルディがぱくりと実を頬張るその姿を、エレファナはまじまじと見つめた。
(なんだかいつもは真面目なセルディさまが、今はやんちゃな少年のような気がしてきました)
「セルディさま、食べ慣れた感じがかっこいいです」
エレファナが憧れるような眼差しを向けるので、セルディは「君はそんなことまで褒めるのだな」と笑いながら、自分の採った実をエレファナの口へひょいと入れる。
「採ったばかりは味が違うのだが、わかるか?」
潰さないように気をつかったブルーベリーだが、口の中では意外とはりがあるように感じられた。
おそるおそる噛んでみると、果肉がじゅわっと溢れる。
「! すごく濃い味がして甘いです! ジュースを超えるみずみずしすさです!!」
エレファナが目を見開いて感激していると、セルディが最後にとっておいた大粒もくれる。
「ようやく俺のしたいことが叶ったな」
「セルディさまのしたいこと……?」
エレファナはセルディとはじめて食事を取ったときのことを思い出した。
「あ、覚えています! セルディさまが一緒に苺を食べたとき、言っていました。私と話してしたいことが見つかったけれど、もう少しあとの方がいいと……このブルーベリーのことだったのですね!」
「ああ。近々散歩がてらここ来て、一緒に食べようと思っていたんだ」
(あれは、私がはじめて自分のしたいことができたときでした。だからセルディさまは、私とここに来ようと思ったのですね。あのとき、一緒に果物を分けて食べた私がすごくすごく、嬉しかったから……)
「セルディさま。素敵なところに連れてきてくださって、ありがとうございます」
「気に入ってくれたのなら、なによりだ。この木は変異種なのか、一般的な物より大きさも倍以上ある。甘みも強くて、俺のお気に入りだからな」
「そう言われるとますます、特別な味に思えてきました!」
エレファナは柔らかな酸味と濃い甘みが凝縮されたその実を自分で摘んで食べたり、木の幹や枝葉に触れたり観察したりする。
そうしているうちに二人の唇がブルーベリー色に染まったので笑いあってから、エレファナの魔導で色素を綺麗に分解して消した。
「エレファナは当然のように、こんな魔導まで使えるのだな」
「はい。普段からそうしていたので、魔導は私の手足のようなものです。でも力加減が難しいです」
エレファナは右のてのひらを空に向けて広げる。
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