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5章

40・旦那さまから任されました!

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 木の枝葉が揺れると、そこからゆったりとした速度で一粒のブルーベリーが降りてきた。

 魔導で収穫した実をてのひらに受けると、エレファナはそれを食べる。

「ブルーベリーを潰さない加減が難しいのですけれど、上手くいきました!」

「気に入ってくれたようだな」

「はい! 毎日でも来たいです」

「それはちょうどいいかもな。エレファナもずいぶん体力がついて来たようだから、少しずつ体を動かした方がいいだろうし……うん。これはエレファナの木にしよう」

 エレファナの表情がぱっと明るくなる。

「このブルーベリーが私の木になるのですか?」

「ああ。大切にしてやってくれ」

 エレファナは改めてブルーベリーの木を見上げた。

(セルディさまの特別な木をもらってしまいました。責任重大です)

「セルディさまから預かったので、木のお世話もきちんとしたいです。でも難しいのでしょうか?」

「散歩がてら来て、好きなだけ食べるといい」

「それなら私にもできます!」

「そうか。俺でよければ付き合うし、いないときはバートを護衛にして来ることもできるだろう。近ごろは魔獣の出現率が明らかに減っていて、城の周辺ならまず問題ないからな」

「だから最近のセルディさまは、お城にいる時間が増えてきたのですね!」

「そうだな。俺だけでなく他の騎士たちも、休暇が増えてのんびり過ごせるようになったと喜んでいるよ。俺は君の精霊の加護だろうと思っているが」

「なるほど! 確かにここへ来たころより、胸の辺りの精霊の気配が膨らんでいる感じがします。でも、精霊はまだ姿を見せてくれたことがありません……。なぜでしょう? まだそこまでは回復していないのでしょうか」

 不安そうに手を胸に当てたエレファナに気づき、セルディはそばに寄ると包み込むように抱きしめた。

「焦ることはないさ。君の魂に隠れていて、居心地がいいのかもしれない」

 精霊の加護を望んでいたセルディが思いのほか軽い口ぶりで言うので、エレファナもほっとするような気持ちになる。

 そしてはじめて出会ったとき、力が出ずに倒れて気を失った自分を支えてもらったときに感じた、あの不思議な気持ちを思い出した。

(セルディさまの腕の中は、やっぱり居心地がいいです。休んでいる精霊もこんな気持ちなのだとしたら、あまり急がず、ゆっくりしてもらってもいいのかもしれません)

「そうですね。元気な感じは伝わってくるので、精霊が出てきたくなるときを待ちます!」

「ああ。そうしよう」

 セルディはエレファナと並び、再びその木と向き合った。




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