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ep2

黄金の仮面

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柩の蓋は、どんどんずれて床に落ちた。

中から何かがムックリと起き上がる。

「見ちゃ駄目!」
ロキシーがアクアの目を手で覆った。

「もういいわよアクア
目を開けても」

ミイラが柩の中で立ち上がる。
その両脇で、ミルドとシェリーが目を不気味に光らせてこっちを見ている。

「またなの?いい加減に学習してよ。
『クリメイション』」

柩の中のミイラが燃えあがった。
赤い炎から青い炎になりやがて白い炎に包まれて、ミイラは消滅した。

「ヨシ 成仏したわね。」

「ロキシー 今の技は何、火が色んな色になって、でもちっとも熱く感じなかったわ」

「ああ『クリメイション』って技で魂を火葬して天国に送る技よ」

「成仏って言ったけど、あのミイラ仏になるの?」

「アクア、私は死んだこと無いから、よく分からないの。
あなたは、一度死んで女神様にあったんでしょ。その時仏になったの?」

「直ぐに転生させられたから、仏にはならなかったわ。」

「そっかぁ。まぁ死んだ後のことを考えても仕方無いわね。
レアケースとしては、アクアみたいなこともあるってことね。」


ロキシーは、ツカツカっと柩の方に歩いて行き

「全く~~、ミルド
あなた、なんで毎度同じ技に引っかかるのよ。
この前ここに来た時も、あれにやられて、私に襲い掛かって来たわよね。」

「えっ ああ そうだっけ」

「もう!
シェリー、あなたもよ。
前回私たちが、ここをクリアしたあとボス部屋のことも報告したはずよ。
ミルドはまだしも、あなたまで」

「ロキシー、ごめんなさい。
スフィンクスを倒して、興奮して忘れてたわ。
ボスを倒してくれてありがとう。助かったわ。」

「そうね、私はスフィンクスとの戦いに参加してないから、冷静に見れたのかもね。
ちょっと言い過ぎたわ。」

「ねぇねぇ、柩のなかに金色のマスクがあるよ」

「アクア、それがボスを倒して出てくるインディー迷宮のお宝『カーメン王の黄金の仮面』よ」

「それ、被ると呪われたりするの」

「いや、その逆だよ。
生涯に一度だけ、その仮面を被ると、スキルが得られるんだよ。
あたしは、黄金の仮面でスキル『槍聖』を得て、『縮地』ができるようになったんだ。」

「その後仮面はどうなるの?」

「消えて無くなったよ。」

「そっかぁー
それで、今回は誰が使うの?」

「私は、シェリーに使って貰いたい」ロキシーがそう言った。

「えっ 私?
ミルドの次はロキシーの番じゃないの、ボスを倒したのもロキシーだし」

「シェリー、私は魔法使いとしてもう超一流よ。
あなたの方が、きっと役にたつでしょ。
正直に言うわ。
今回このダンジョン攻略でシェリーは、かなり経験値を増やしてレベルアップしたわね。
スフィンクスとの戦いも見事だった。
だけど、まだまだなのよ。
私たちとあなたの戦力には、まだ差があるの。
シェリーはその剣や盾に頼って戦ってるの。
遠慮しないで、『カーメン王の黄金の仮面』あなたが使ってよ」

「ロキシー、みんなぁ~
ありがとう。
わたし頑張るから。」

シェリーは、柩の中から『カーメン王の黄金の仮面』を取出して被った。

シェリーの体が光り出して、やがて光りが収まると、仮面は消えていた。

「スキル『解析』を手に入れたわ。やっぱり私、戦闘には、向かないのかな。」

すると、ミルドが
「なに言ってるんだシェリー
『解析』でしょ。
ちょっと私を見てて」

ミルドは、『縮地』を使って、右に左にと瞬時に飛び回った。

「どう?シェリー、何かわかった」

「そうね、足にこう魔力を集めておいて瞬時に………あっ
私も出来そう」

「次は、私の番ね。ファイアーランス」
ロキシーの放った炎の槍が壁に当った。

「ああ わかる、わかるわ。
ロキシーのやり方が。
私炎の適性無いのに、これも出来そうよ。」

「私のも見て、シェリー」

アクアが少し離れた所に水牢を出して見せた。

「ごめんなさい。アクア。
あなたは、やっぱり特別みたい。
天女は『解析』出来ない存在みたいね。」

「なんかつまんないなぁー。」

そう言うアクアを見て、シェリーは驚いた顔を一瞬だけした。
しかしシェリーは、アクアの何を見たのかは、誰にも明かさなかった。
そして、誰もそのことをシェリーに尋ねることもなかった。





いつものように、パーティー『マーズ』は、アクアの『水のベール』に乗って空を飛んで、ギルドへと凱旋した。

当然、ギルド長室へと直行して

「ハック、またお菓子食べてたでしょ。」

「シェリー、な なにを突然いいだすかと思ったら。
また、カマをかけて俺に言わせるつもりだろ。
そうはいかないよ。」

「カマなんてかけてないわ。
インディー迷宮のお宝『カーメン王の黄金の仮面』でスキル『解析』を手に入れたのよ。
私に嘘は一切通用しないわ。」

「嘘だ!そう言って俺を騙そうとしてるんだ!」

「信じなくても、別にいいわよ」

4人のギルドカードを机に出した。

「どうぞ、好きなだけ調べて頂戴」

シェリーはギルド長の机に腰かけて、スラリと伸びた足を見せつけるように、足を組んだ。

「ムムム う~~ん」

「わかったかしら?
じゃあアクア、買い取ってもらう魔石を出していいわよ。」

「ちょ ちょっと待ったぁ
今は、マネマネの分だけにしてくれよ。俺だけじゃそうそう処理出来ないから。
皆カード入金でいいよな。
あと、シェリーは、Aランクに昇格だな。」

「私がAランク。本当に。」

「アハハ なにを言ってるんだシェリーは、君が受付の頃、これだけの実績をあげた冒険者がいたらどうしてたか覚えてるか?」

「さぁ どうしてたのかしら?」

「ランクアップさせろってゴリ押ししてたよ」

「そんなぁ~ 正当な評価をお願いしてただけですよ。」


二人の会話にロキシーが割って入った。

「二人のコントがまだ続くなら、私たち先に宿探しに行くけど、いいかしら」

「ごめんロキシー、置いてかないでよ私も行くわ。」

シェリーは、新たなAランクのギルドカードを受け取った。


ミルドがアクアの頭を撫でながら

「アクア、ごめんよ『かあちゃんの店』よりもう少し広い部屋が無いとあたしやロキシーは落ちつけないんだ。
宿を変えてもいいかな。」

「う~~ん 私はシェリーと同じ部屋でもいい?」

「ああ いいよ」

「もしも~~し ミルド
なんであなたが、そこオッケーだすのよ。」

「シェリーがNoって言わないってわかってるからな。」

「そうね、アクアとシェリーはセットよね。」
ロキシーが相づちをうった。

「シェリー、私と一緒は嫌なの」

シェリーは、アクアの頭を撫でながら
「安心していいわアクア。
私は、あなたのこと大好きよ。
これからもずっと一緒だからね」

「うん」



♤♡♢♧♤♡♢♧

シェリーは、ここでアクアに生涯寄り添おうと決心しました。『解析』で、アクアの何を見たんでしょうね。

皆さん応援ありがとうございます。
hot男性向け で4位
人気 カテゴリーでも100位以内に入りました。
改めて、大感謝しています。
これからも、よろしくお願いします。
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