姉になった隆司

再び入れ替わる

### タイトル：**「入れ替わり再び」**

隆司は次の朝、再び奇妙な感覚に襲われながら目を覚ました。布団の中で手を動かすと、昨日と同じ違和感が彼を包む。

「またかよ…」

体を起こして、鏡を見た瞬間、やはりそこに映っていたのは姉・美咲の顔だった。何が起こったのか頭の中で整理しようとするが、思考はまとまらない。心の底から嘆きがこみ上げてくる。

「また美咲姉ちゃんの体か…」

その時、ドアが開き、隆司の体に入った美咲が部屋に入ってきた。美咲の顔には驚きの色が浮かんでいたが、同時に冷静さも漂っていた。

「また入れ替わったみたいね。どうやらこれ、簡単には解決しそうにないわね」

隆司は肩を落としながらため息をつく。

「どうするんだよ…また会社に行かなきゃならないのか？」

美咲はしばし考え込んでから、少し笑みを浮かべた。

「昨日はちょっと無理をさせちゃったけど、今日はもっとちゃんと準備させてあげる。まず、化粧を教えるわ」

「え、化粧…？」

隆司は目を見開いた。昨日は最低限の準備で出勤したが、今日は念入りに準備するということらしい。

「そうよ。女の体で外出するなら、ちゃんと美咲として見られないとね。それに、社会人の女性はちゃんとメイクをして出かけるのがマナーよ」

そう言って、美咲は自分の化粧道具を取り出して、隆司の前に座らせた。

「まずは基礎化粧品からね。化粧水、乳液、それから保湿クリーム。これをちゃんと肌に馴染ませておかないと、メイクが浮いちゃうから」

美咲は自分の手で化粧水をつけて見せながら、丁寧に説明を続けた。隆司は少し戸惑いながらも、彼女の指示に従って顔に化粧水を塗り始めた。

「次は下地。これをしっかり塗って、肌の色を均一に整えるのよ」

「そんなにいっぱい塗るのか…」

「もちろん。大事なビジネスの場で失礼があったら困るでしょ？　さあ、次はファンデーション。スポンジで薄く伸ばして、自然な仕上がりにするの」

隆司は慣れない手つきで、スポンジを使ってファンデーションを伸ばした。思っていた以上に細かくて、予想外の難しさに苦戦する。

「上手よ。少しムラがあるけど、初めてならこんなもんでいいわ。次はアイメイクね。アイシャドウを少しだけ塗って、それからアイライナー。これがちょっと難しいけど、練習すればできるようになるから」

美咲は器用にアイライナーを引いて見せるが、隆司はそれを見て震える手で挑戦する。何度も失敗してはやり直し、ようやくまともな線を引けた。

「やっとできた…けど、こんなに手間がかかるのかよ…」

「そうよ。でも、これで美咲として見られても違和感はないはず。最後に口紅をつけて、仕上げるわね」

隆司は口紅をつける感覚に少し違和感を覚えながらも、無事にメイクが完成した。

「これで準備完了。さあ、次は服を着替えるわよ」

昨日と同じようにスーツを選びながら、隆司はもう一つの課題を思い出した。

「…姉ちゃん、下着のことなんだけどさ、昨日は適当にやったけど…今日はちゃんと教えてくれない？」

美咲は少し顔を赤らめたが、すぐに真剣な表情になった。

「そうね、確かにそこもちゃんと教えておかないと…」

彼女はクローゼットから下着を取り出し、手に持った。

「まず、ブラジャーね。これはカップの部分をしっかり胸に合わせて、肩ひもを調整するの。こうやって体にフィットさせないと、ずれて不快になるから」

美咲は隆司の体で実際に見せながら、細かいステップを説明していく。隆司は恥ずかしさを感じつつも、姉の指示通りにブラジャーをつけていった。

「それから、ショーツ。これはまぁ普通に履けばいいけど、服によってはラインが目立つから、その辺りも気をつけてね」

「そんなに気を使うんだな…」

「そうよ。女性は細かいところまで気を配る必要があるの。これで着替えは完了ね」

全ての準備を終えた隆司は、再び鏡を見た。そこには、完璧に美咲として仕上がった自分の姿があった。

「昨日より、ちゃんとしてる…」

「そうでしょ？　これで堂々と会社に行けるわ。さあ、今日も一日頑張ってね」

美咲は微笑みながら、隆司の背中を押した。彼はため息をつきつつも、覚悟を決めて再び美咲としての一日を始めた。