カオルとカオリ

廣瀬純七

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二人のママと二人のパパ

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夜のリビングには、照明を落とした穏やかな灯りがともり、結音の寝息が隣の部屋からかすかに聞こえていた。

香織はソファに座り、ホットミルクを両手で包みながら、穏やかな顔でため息をついた。

「……本当に、薫のおかげで助かるわ。
私、あのままだったら絶対倒れてた」

「いや、俺はただ香織の体で赤ちゃんに母乳をあげてるだけなんだけどね!」

香織は思わず吹き出しそうになって笑いながら返した。

「“だけ”って言うけどね、**ちゃんと搾乳もしてくれる**から胸が張って痛くなる事がなくて本当に感謝してるんだよ?」

「……まあ、それはね。寝てる君の身体からうまく搾乳するの、最初ちょっとドキドキしたけど。だんだん慣れてきよ。」

そのやり取りを、キッチンの椅子に腰かけて聞いていた悟志が、手にしたマグを置いてぽつりと呟いた。

「……うちは本当に変な家族だね」

その一言に、三人ともふっと笑いがこぼれる。

香織がにやりと笑って返す。

「変だけど、すごく役割分担してるよね?育児的に」

「そうだね、他に類を見ないレベルでの役割分担ができてる気がする」

薫も冗談まじりに言うと、悟志は苦笑しながらもどこか誇らしげな表情でうなずいた。

「まあ、普通じゃないけど……俺はこの家族が好きだよ。
自分の“親友”が“妻の体で授乳”してるっていうシュールな状況に毎日慣れていく自分が怖いけどな」

「ふふっ、もう悟志も十分“この変な家族の一員”だよ」

香織がそう言って、そっと悟志の手を握った。

「……ありがとう。これからもよろしくね、パパ」

「うん、よろしくね、“ママ”と“もう一人のママ”」

三人は小さく笑い合いながら、あたたかい夜を共に過ごしていった。

それは、不思議で、優しくて、誰よりも絆の深い「家族」の時間だった。

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