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目覚めた香織
しおりを挟む朝のやわらかな光が、レースカーテン越しに部屋を淡く照らしていた。
布団の中でゆっくりと目を開けた香織は、まるで夢から覚めたようなぼんやりとした表情で天井を見つめた。
頭は少し重いけれど、身体の芯からすっきりとした感覚がある。
…ぐっすり眠れた。こんなに深く眠れたのは、いつぶりだろう。
その時、隣の部屋から微かに聞こえる、赤ちゃんのくすくす笑う声。
香織は部屋のドアをそっと開けた。
リビングのソファには、悟志が、結音を抱きながらゆっくりと揺れていた。
結音はすでに授乳を終えたのか、満足そうに腕の中で眠っている。
「……おはよう」
香織が声をかけると、悟志は驚いたように顔を上げ、そしてふっと微笑んだ。
「おはよう、香織。よく眠れた?」
「うん、すっごく。……昨日は薫が私の代わりに結音に母乳をあげてくれたんだね」
香織の体の中にいる薫は少し気恥ずかしそうに、でもどこか誇らしげにうなずいた。
「うん。泣いてたから……放っておけなかったよ。それに、香織が休まないと、体を壊しちゃうなって思って」
香織は、薫に心の奥から言葉を紡いだ。
「……ありがとう、薫。本当にありがとう。
私の体を通して、私の娘に愛情を注いでくれて……ううん、それだけじゃなくて、**私を信じて、代わりに“母”でいてくれて**」
薫は一瞬だけ何かを言いかけて、でもやめて、ただ小さく笑った。
「結音、すごく温かかった。泣きながら飲んで、飲みながら安心して、最後には笑ってたんだ。
……あの瞬間、なんか、僕も泣きそうになったよ」
香織は静かに、けれどしっかりと“彼”に語りかけた。
「私たち、普通じゃないけど……でもきっと、世界でいちばん特別な“親”だよね」
「……そう思う。君と僕と悟志と、三人で結音を育てていく。それが、僕らの家族のかたちだね」
香織は、そっと手を差し出して、悟志が抱いていた結音を自分の胸に抱き取った。
赤ちゃんの頬が自分の胸に触れた瞬間、じんわりと熱が心に広がった。
「おはよう、結音。ママに戻ったよ」
そして、香織の中からふっと静かに、薫の意識がやわらかく沈んでいった。
——その感覚は、まるで“微笑んでくれた”かのように、やさしく、あたたかかった。
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