俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純七

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消えた地下室

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寒さが和らぎ始めた二月のある日、咲良は教室で健太に話しかけた。  
「ねえ、健太君。あの地下室、気にならない?一度だけじゃわからなかったこと、また調べてみたいの。」  
健太はノートに走り書きをしていた手を止めて、少し考え込むようにしてから笑顔を見せた。  
「確かに気になるな。よし、放課後にもう一回見に行ってみよう!」  

放課後、二人は学校の廊下を静かに歩きながら地下室の入り口へ向かった。かつて体が入れ替わるきっかけとなった場所だ。廊下の奥へ進むにつれて、二人の足取りは少しずつ緊張で重くなる。  

やがて、地下室への入り口があるはずの場所にたどり着いた。  

---

### 見つからないドア  
しかし、そこには予想外の光景が広がっていた。かつて重々しい鉄の扉があったはずの壁は、何事もなかったかのようにきれいに塗り直されていた。まるで最初からそこにドアが存在しなかったかのようだ。  

咲良が目を見開き、壁をじっと見つめる。  
「え? ここにドアがあったよね? 見間違いじゃないよね?」  
健太も信じられないという顔で壁に触れた。冷たく固いコンクリートが返事をする。  
「確かにここにあったんだ。でも、どうして…?」  

咲良は壁を手で探りながら言った。  
「だって、あの時地下室に入って機械を見たよね。振動も起きて…それで、私たち…。」  
健太がうなずく。  
「ああ、確かに見た。あの奇妙な機械と古びた部屋。でも、この壁…まるで初めから何もなかったみたいだ。」  

---

### 不可解な現実  
咲良が後ろを振り返り、誰もいない廊下を見渡す。  
「もしかして、学校が何かを隠そうとしてるのかな?あの機械、危険だったから…。」  
健太が腕を組みながら低い声で答えた。  
「いや、それだけじゃない気がする。だって、こんな短期間でここまで跡形もなく消すなんて普通はできないだろ。」  

咲良が首をかしげる。  
「じゃあ、一体どういうこと?」  
健太は深いため息をついて壁をもう一度見た。  
「わからない。でも、ひとつだけ確かなのは、この学校にはまだ何か秘密があるってことだ。」  

---

### 残された謎  
その後も二人はしばらく壁の周囲を調べたり、手がかりを探したりしたが、何も見つからなかった。地下室の存在を証明するものはすべて消え去り、学校のどこにも痕跡は残されていなかった。  

咲良は最後に一度だけ壁に触れてから言った。  
「本当にもう、あの場所に入れないのかな…。でも、私たち、ちゃんと覚えてるよね。あの機械と、そこで起きたこと。」  
健太はうなずき、咲良の肩を軽く叩いた。  
「そうだな。たとえこの場所がなくなっても、俺たちが経験したことは本物だ。忘れないようにしよう。」  

冷たい冬の風が廊下の窓を揺らす音だけが響く中、二人はその場を後にした。地下室の謎はますます深まるばかりだったが、二人の間には確かな絆が芽生えていた。
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