悪役令嬢はヒロインを虐めている場合ではない

四宮 あか

文字の大きさ
73 / 171
人の恋路を応援している場合ではない

第22話 で?

しおりを挟む
「レーナ様、特定保護魔物って知っててスライム狩ってた?」
 笑顔でシオン話しかけてきたけれど怒っているのがわかる。
「レーナ孃、流石に理由を聞かずにはもう無理だ……。俺たちが何をやらかしたか解ってるだろ」
 あの優しいフォルトですら厳しい表情である。


 恥を言わねばいけない時が来てしまったようだ。
「始まりはアルバイト斡旋所でした……」
「……冒頭からさ、ほーーーーーんと一人にしておくと碌なことしないね」
 アルバイト斡旋と言っただけでこれである。
「シオンその辺で、話を聞くことが最優先だ」


 これダメなやつだ。騙されましたって言ったら大変なことになりそう。
「怒らずに聞いてくださいね。私は実は街でアルバイトをしておりました」
「「「は!?」」」
 三人がハモった。
「ちょっと待って、お金ならもう十分あるよね? 何やってんのさアンタ」
「怒らず聞いてくださいと最初にいったでしょう! えー、私は食堂で主に生ビールやツマミを運んでました。シフトは週三で……」
 シオンはワナワナと震え、フォルトは信じられないものを見るような目で私を見つめ、リオンは真っ青になっていた。



「週三食堂でバイトする公爵令嬢とかどこにいるんだよ」
「残念ながら此処に。これでも看板娘の座にまで上り詰めたんですからね」
「看板娘って……。そりゃそんだけ金掛けて容姿維持してりゃ町娘より頭一つはとびぬけるでしょうよ。なんでバイトなのさ。やるんだったら大人しく部屋で刺繍の一つでもしてなよ! なんで飲食店で生運ぼうと思ったのさ」
 シオンの突っ込みは今日もキレッキレである。
「私も流石に今回の行動は軽率だと思います」
 リオンもシオンの意見に賛同した。
「14歳で酒を出すような場で働いていたのか……」
 フォルトは愕然としていた。それくらい私が街で生ビールを運んでいたことは本来あり得ないことなんだろう。


「ちょっともう、ジーク様呼んでくる。あの冷やかな目で存分に見つめてもらえばいいと思うよ。よかったね、レーナ様のお好きな顔面偏差値の高い方にたっぷりと見つめられて」
「ちょっと……ジーク様はやめておきましょう? シオンもザクザク言葉で私の心のHPを削ってきますが、それが二人になったら私死んでしまうかも……」
「大丈夫、心をそれくらいで病むような人は公爵令嬢って身分にも関わらず街で生運んでないよ」




 先ほどのアルバイトの下りをジークの前でも話すこととなった。はい、冷やかです。笑顔でいらっしゃるのに、吹雪の中にいるかのよう。
 座席も私が下座で皆が上座で尋問される形になった。

「へぇ~。それは愉快な活動だね」
 そんなこと微塵も思っていないだろう。
「社会勉強になりまして……よ。ホホホ」
 私も内容だけ聞くと普通だが実に冷やかな言葉に対してごまかして笑う。
「それで?」
 顔は笑顔なのだ、それはもう優雅なのだ。公爵家の嫡男として生まれてからずっと絶対的な地位にいた彼の尋問は突き刺さる。


「お酒が入りますと皆さま口が軽くなりまして……。その中でアルバイト斡旋所でカモにされた話を聞いたのです」
 本当は私が騙されてから、周りの話しを聞いて定期的にカモられる人がいることを知ったのだけれど。
私がこの話を客から聞いたのは事実。私が騙されたことはしれっとなかったことにした。
「一応、仕事の斡旋業者は国とまでは行かなくても、街の管轄だ。その話が本当であれば大問題だ」
 フォルトはそう答える。


「アルバイト斡旋所に水路の清掃というバイトが募集されているのです。これが、他のバイトよりホンの少し報酬がいいのです。でも、実際の水路を清掃するだけでは報告しても水路は綺麗になってないと言われ報酬は支払われません。あちらもスライムのことはハッキリと言ってきませんが、そこでようやく斡旋所で以来された水路の清掃の真の意味を知るのです。意味さえ知って冷静に依頼書をみれば、その依頼書だけ紙の色が変わるほど古くから張り出されているものでずいぶんと長い間知らずに引き受けたカモからお金を巻き上げたのだと思われます」
 私がそう話すと皆頭を抱え出した。

「水路には数えきれないほどのスライムがおりまして……。アルバイト斡旋所で仕事を受けるような者が狩りきれる数ではありません。依頼が達成されないとなると平民にとってはかなりの額を達成できなかったペナルティーとして斡旋所に納めないといけないのです」
 水路を普通に掃除しただけでは、綺麗になってないと報酬は払われない。スライムを倒せとは一言も言われないけれど。普通に清掃しただけでは駄目ということはそういうことなのだ。


 平民がそのペナルティーを払うとすれば、バイト漬けになって、小銭がないか地面をみて歩く癖ができるくらいの事態となる。
「ちょっと、待って……だから一人で水路でスライム狩ってたの? 緑の魔法じゃ狩れないから、あのバカでかい熱石を振りまわして」
「一人で水路でスライムを狩る……レーナが? シオンどういうことだい?」
 シオンの発言により、一人で水路にこもりスライム狩りしていたことがばれた。


 次々と秘密にしていたことがばれていく。婚約解消しておいてよかった、きっと婚約者のままだったら自分にも影響がでたかもと大きな雷を落とされてしまったかもしれない。

「とにかく……そんなわけで。スライムがいなくなればアルバイト斡旋業者も水路の清掃が終わってないなどと言えなくなるし。第二、第三の騙される方もいなくなるしと思って……。軽い気持ちで3人にお願いしたらその、今の事態に」
 三人もジークから目をサッとそらす、理由をあえて聞かず行動に移してしまった負い目があるのだ。



「はぁーーーー」
 ジークは今まで見たことがないくらい長い溜息を一つ吐いた。
 怒っているだろうか? とチラリと様子をうかがう。
「スライムは水の浄化のために放たれていたんだ……。繁殖も水路の規模に合わせてスライム自身が調整して増えるからとても便利な魔物なんだ。ただ、たまにスライムを討伐する輩もいる。でもスライムの数が膨大だからほんの少し狩られた程度では、自然繁殖で補える。……まさか1匹残らず狩りつくされて、ご丁寧に再生できないように魔核をすべて回収し、店に1つたりとも売りに出されていない。そんな大事にはさすがに関与してないと思ったのだが……」
しおりを挟む
感想 582

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。