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第四章 白魔導師の日々
収穫祭~4
こんなことがあっていいのだろうか。ギルが自分のことを好きだと言う。胸の奥からじんわりと嬉しさがわき出してくる。
「俺のことを、どう思ってる?好ましい?それとも・・・」
ギルは言葉を濁しながらも、フロルの返事をいかにも待ちきれない様子だ。
けれども、やはり身の程というものがある。もし、ギル様と自分との関係を知ったら、ライル様はなんと言うだろうか・・・? ライル様だけではない。女官長のエリザベス様や、キマイラお爺さん、・・・それにドレイク様や他の人の顔も、フロルの心の中に浮かぶ。
── 他の人は? 自分とギル様の関係について、何て言う?
フロルは戸惑うように顔をあげて、ギルを見つめた。
「・・・私は平民だし、きっと、そんなこと誰も認めてくれない。それにギル様の家族だって・・・」
そうマルコムは明らかに自分とギル様との関係は認めないと断言していたではないか。
そんなフロルに、ギルは安心させるように口を開いた。
「今日、実は、ここに来る前に、父上と母上にお前について話をしたんだ」
「そ、それはどういう・・・?!」
「お前のことが好きだと両親に伝えた。そしたら両親共に・・・」
「ご領主様たちはなんて?」
「お前との交際を祝福すると」
「ええっ?どうして?なんで?」
「最初から、お前のことは好感を持っていたと。他の令嬢よりも、俺にはお前が似合っていると言われた」
「そ、それは・・・もしかして?」
そうだ、とギルはにやりと笑う。
「もちろん。両親は、お前との交際を認めてくれたんだ」
「だって、だって、私は、平民の、どの里の子かもしれないもらい子だし」
「そんなこと、関係ない。俺がお前を好きで、両親がそれを認めてくれた。それだけだよ。フロル」
ギルはリード家の中でも三男坊だったので、自分の縁談には両親は特にこだわりがないのだと、ギルは言う。
「上二人の兄の縁談がとてもいい家との縁組みだったから、俺にまでそれは要求しなくてもいいらしい。・・・それとも、俺のことは嫌いか?」
切なげな顔をするギル様に、フロルは慌てる。ぶんぶんと頭を横に振って、否定する。けれども、全く予想していなかった展開に、まだ実感がついていかないのだ。
「そ、そんなことないです。だって、ギル様は、格好良くて、優しくて、明るい笑顔が素敵で・・・」
「じゃあ、もう結論は出たな」
ふんわりともう一度、ギルがフロルを抱きしめた。
(うわ。リア充爆発した・・)
もう本当に爆発してもいいかもしれない。
どうしよう。幸せ過ぎる。
収穫際にいく直前は、幸せすぎて、このまま三途の川を渡ってしまおうかと思っていたけど、あの時、渡らなくて本当によかったとフロルは本気で思う。(そもそも、渡れるはずもないのだが)
「俺の大切な人になってくれるか?フロル」
「・・・はい。・・・喜んで」
こくりと頷くフロルを前に、ギルはお日様のような素晴らしい笑顔を浮かべる。
「そうか。よかった。フロル、好きだ。この世の世界の誰よりもお前が好きだ」
そう言って、ギルはフロルをもう一度、自分の胸の中に抱きしめて、フロルの髪の毛に顔を埋める。
(えーっと、昨日、髪の毛洗ってたよね?)
臭くないだろうかとフロルは一瞬、悩んだが、昨日はきちんと髪の毛を洗っていたのを思い出して、安堵のため息をついた。
◇
そうして、帰路についたのは、もうすっかり夜も更けてからだった。馬車に乗り込もうとすると、ギルがさっと手を差し出して、お姫様のように馬車に乗せてくれる。帰り道は、馬車の中で二人きりだ。当然の成り行きとして、二人はずっとイチャイチャしていて、フロルは幸せのあまり、ギルの膝の上に座ったまま、ぼーっとしていた。
「ほら、もうすぐ館につく。もう遅いから、みんな寝静まっているかもな」
リード家の森に続く門をくぐった時、ギルはそう言いながら窓の外をみた。その横顔が、少し険しく曇ったのをフロルは見過ごさなかった。
「ギル様、どうしたんです?」
「館に明かりが灯っているんだ。普段、この時間なら、もう明かりが落とされてるはずなんだが」
「お祭りのせいでしょうか?」
「いや、それはないな。むしろ、大勢の人が来ているようだ」
フロルも窓の外を眺めると、確かに、城には沢山明かりが灯されている。
「あれは、竜の飛来地用の松明のようですけど・・・」
「ああ、確かにそうだ。なんで、この時間帯に竜が・・。あれは、ドレイクの騎竜部隊じゃないか?」
もう一つ森の道を横切ると、城の広間に大勢の人間がいるのが見える。そして、その横には、竜たちがそれぞれ休んでいるようだ。
「本当ですね。竜騎士団ですね。緊急事態でしょうか?」
「それにしても、なんで俺の実家に来るんだ?訳がわからない。用があるのは俺か、それともフロルか、どちらだろうな?」
「さあ、私にもさっぱり訳がわかりません。どうしてでしょう?」
そうしている内に、馬車は城の大広間に到着する。二人は慌てて馬車から降りると、広間にいた人間達が一斉に、自分達を見つめた。
「ライル様・・・どうしてここに?」
フロルが視線を向けて驚いた先には、魔道師長ライルがいた。その後には、竜騎士団長アルフォンソ・ドレイクがいて、何かげっそりした表情を浮かべている。
彼らの表情から察するに、何かよからぬことが起きたようだった。
魔道師長ライルは、神経質そうに眉を顰めて、渋い顔をしていた。
「フロル、迎えに来た」
「ライル様? どうしてこんな所に?」
「私の可愛い弟子がトラブルに巻き込まれる前に、回収しにきたんだ」
「可愛いって誰のことです?」
「お前のことに決まってるだろう。フロル」
「へ?なんでですか?」
きょとんとしているフロルの腕をライルはしっかりと掴む。
「いいから私の後を見ろ」
ライルが耳元で小声で囁くので、フロルは何気なく振り返るとぎょっとした表情を見せた。
「・・・なんで、あの人がここにいるんです?」
── ドレイクの遙か後ろには、フローリア・マリアンナ・デ・レルマ子爵令嬢がいた。竜騎士が連れてきた竜の横に立ち、こちらを見ていたのだ。
◇
収穫祭~5は、書籍化のため、ストーリーを少し改変しております。公開は、ネタバレ防止のため、1/28以降になります。何卒、ご理解いただけますようお願い申し上げます。
「俺のことを、どう思ってる?好ましい?それとも・・・」
ギルは言葉を濁しながらも、フロルの返事をいかにも待ちきれない様子だ。
けれども、やはり身の程というものがある。もし、ギル様と自分との関係を知ったら、ライル様はなんと言うだろうか・・・? ライル様だけではない。女官長のエリザベス様や、キマイラお爺さん、・・・それにドレイク様や他の人の顔も、フロルの心の中に浮かぶ。
── 他の人は? 自分とギル様の関係について、何て言う?
フロルは戸惑うように顔をあげて、ギルを見つめた。
「・・・私は平民だし、きっと、そんなこと誰も認めてくれない。それにギル様の家族だって・・・」
そうマルコムは明らかに自分とギル様との関係は認めないと断言していたではないか。
そんなフロルに、ギルは安心させるように口を開いた。
「今日、実は、ここに来る前に、父上と母上にお前について話をしたんだ」
「そ、それはどういう・・・?!」
「お前のことが好きだと両親に伝えた。そしたら両親共に・・・」
「ご領主様たちはなんて?」
「お前との交際を祝福すると」
「ええっ?どうして?なんで?」
「最初から、お前のことは好感を持っていたと。他の令嬢よりも、俺にはお前が似合っていると言われた」
「そ、それは・・・もしかして?」
そうだ、とギルはにやりと笑う。
「もちろん。両親は、お前との交際を認めてくれたんだ」
「だって、だって、私は、平民の、どの里の子かもしれないもらい子だし」
「そんなこと、関係ない。俺がお前を好きで、両親がそれを認めてくれた。それだけだよ。フロル」
ギルはリード家の中でも三男坊だったので、自分の縁談には両親は特にこだわりがないのだと、ギルは言う。
「上二人の兄の縁談がとてもいい家との縁組みだったから、俺にまでそれは要求しなくてもいいらしい。・・・それとも、俺のことは嫌いか?」
切なげな顔をするギル様に、フロルは慌てる。ぶんぶんと頭を横に振って、否定する。けれども、全く予想していなかった展開に、まだ実感がついていかないのだ。
「そ、そんなことないです。だって、ギル様は、格好良くて、優しくて、明るい笑顔が素敵で・・・」
「じゃあ、もう結論は出たな」
ふんわりともう一度、ギルがフロルを抱きしめた。
(うわ。リア充爆発した・・)
もう本当に爆発してもいいかもしれない。
どうしよう。幸せ過ぎる。
収穫際にいく直前は、幸せすぎて、このまま三途の川を渡ってしまおうかと思っていたけど、あの時、渡らなくて本当によかったとフロルは本気で思う。(そもそも、渡れるはずもないのだが)
「俺の大切な人になってくれるか?フロル」
「・・・はい。・・・喜んで」
こくりと頷くフロルを前に、ギルはお日様のような素晴らしい笑顔を浮かべる。
「そうか。よかった。フロル、好きだ。この世の世界の誰よりもお前が好きだ」
そう言って、ギルはフロルをもう一度、自分の胸の中に抱きしめて、フロルの髪の毛に顔を埋める。
(えーっと、昨日、髪の毛洗ってたよね?)
臭くないだろうかとフロルは一瞬、悩んだが、昨日はきちんと髪の毛を洗っていたのを思い出して、安堵のため息をついた。
◇
そうして、帰路についたのは、もうすっかり夜も更けてからだった。馬車に乗り込もうとすると、ギルがさっと手を差し出して、お姫様のように馬車に乗せてくれる。帰り道は、馬車の中で二人きりだ。当然の成り行きとして、二人はずっとイチャイチャしていて、フロルは幸せのあまり、ギルの膝の上に座ったまま、ぼーっとしていた。
「ほら、もうすぐ館につく。もう遅いから、みんな寝静まっているかもな」
リード家の森に続く門をくぐった時、ギルはそう言いながら窓の外をみた。その横顔が、少し険しく曇ったのをフロルは見過ごさなかった。
「ギル様、どうしたんです?」
「館に明かりが灯っているんだ。普段、この時間なら、もう明かりが落とされてるはずなんだが」
「お祭りのせいでしょうか?」
「いや、それはないな。むしろ、大勢の人が来ているようだ」
フロルも窓の外を眺めると、確かに、城には沢山明かりが灯されている。
「あれは、竜の飛来地用の松明のようですけど・・・」
「ああ、確かにそうだ。なんで、この時間帯に竜が・・。あれは、ドレイクの騎竜部隊じゃないか?」
もう一つ森の道を横切ると、城の広間に大勢の人間がいるのが見える。そして、その横には、竜たちがそれぞれ休んでいるようだ。
「本当ですね。竜騎士団ですね。緊急事態でしょうか?」
「それにしても、なんで俺の実家に来るんだ?訳がわからない。用があるのは俺か、それともフロルか、どちらだろうな?」
「さあ、私にもさっぱり訳がわかりません。どうしてでしょう?」
そうしている内に、馬車は城の大広間に到着する。二人は慌てて馬車から降りると、広間にいた人間達が一斉に、自分達を見つめた。
「ライル様・・・どうしてここに?」
フロルが視線を向けて驚いた先には、魔道師長ライルがいた。その後には、竜騎士団長アルフォンソ・ドレイクがいて、何かげっそりした表情を浮かべている。
彼らの表情から察するに、何かよからぬことが起きたようだった。
魔道師長ライルは、神経質そうに眉を顰めて、渋い顔をしていた。
「フロル、迎えに来た」
「ライル様? どうしてこんな所に?」
「私の可愛い弟子がトラブルに巻き込まれる前に、回収しにきたんだ」
「可愛いって誰のことです?」
「お前のことに決まってるだろう。フロル」
「へ?なんでですか?」
きょとんとしているフロルの腕をライルはしっかりと掴む。
「いいから私の後を見ろ」
ライルが耳元で小声で囁くので、フロルは何気なく振り返るとぎょっとした表情を見せた。
「・・・なんで、あの人がここにいるんです?」
── ドレイクの遙か後ろには、フローリア・マリアンナ・デ・レルマ子爵令嬢がいた。竜騎士が連れてきた竜の横に立ち、こちらを見ていたのだ。
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