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第二部 フロルの神殿生活
第二部 プロローグ 新しい客人
ジェイド・パーセルは、長い旅路の途中だった。自国を出発して、めざすは、少し遠い所にある国、カルナード王国。そこで、女神フローリアの生まれ変わりという娘が見つかったとの情報を得たためだ。
そして、その娘が本物かどうか ──
それを見極めに、ジェイドは、カルナードへ向かっているのである。
ジェイドがいる場所は、女神フローリアの信仰が厚く、女神信仰の中枢を担う大聖地に位置するカルシス大神殿。いわゆる、バチカン的な場所であり、ここが女神フローリアの一番の聖地である。
その最も権威のある神殿で、ジェイドは副大神官という役職にある。
ジェイドは、代々、神官、ひいては大神官を輩出する高貴な家柄の出である。彼の両親、親族からは、神官を輩出するほど、特権的な家系に生まれ、ジェイドもその例にもれず、大神殿の副大神官と言う役職にいた。
黒い髪を、聖職者らしく短くきったジェイドは、今年30歳を迎えようとしていた。才気あふれる眼差しや、間髪を入れぬほど機転のとんだ会話は、沢山の人を魅了した。濃紺の瞳に見つめられれば、大抵の人間は魅了されてしまうのである。
魅力的な外見だけでなく、ジェイドは野心家でもあった。
副大神官から、大神官へと昇格できる日も近いと噂されるジェイドは、その魅力的な容姿のせいで、どこにいっても人気者である。しかし、ジェイド本人は、それについては本当は少し煩わしく感じている部分もある。
今回の旅の目的は、カルナードに現れたという女神の生まれ変わりが本物であるかどうか見極め、もし、本物であれば、自国に連れて帰り保護するというものである。
カルナードでは最初に女神を取り違えて、冥界の魔物を神殿に呼び込むという失態をやらかした。そんな所に、女神様をおいておく訳にはいかない、と言うのが大義名分なのが本当の所だ。
女神の生まれ変わりを求めているのは、カルナードだけではない。ジェイドの国だって、女神の生まれ変わりが、のどから手が出るほどほしいのだ。女神がいる国は、精霊の守護が厚く、天変地異にも影響されることなく、繁栄を極めるからだ。
ジェイドは、馬車の窓から外を眺める。まだ日は高い。途中、小さな町で休憩のために立ち寄ると、ジェイドは足を延ばすために少し散策することにした。
小さな馬車で揺られるのは、結構疲れるものだ。
普段乗りなれない質素な馬車にするんじゃなかったと、ジェイドは少し後悔した。しかし、自分のカルナード入りは出来るだけ目立たないようにと注意して、この馬車をあえて選んだのは自分だ。
いつも乗っているような豪華で乗り心地のよい馬車だと、否応なく、カルナードに警戒される。
小さな村であるが、食堂などもあり、休憩にはちょうどよさそうだ。ジェイドは、簡単な昼食をそこでとり、少し歩くことに決めた。
「旦那様、この先の森は道に迷いやすくなっておりますだ」
年を取った店の給仕がジェイドにおずおずと言う。着ているものは質素だが、彼の物腰が非常に洗練されていたので、給仕は、老婆心ながらそう伝えた。森にひかれて散策に出て、道に迷う旅人が後を絶たなかったからだ。
「いや、その辺を少し歩くだけだから、心配はいらない」
ジェイドは笑いながら、心配性の給仕に礼を言う。昼食の代金を払い、御者には少し待つようにと伝えた。
森の入り口は明るく、道も綺麗に整備されている。この森でどうして道に迷うことがあるんだろうと、ジェイドは訝し気に思いながら、散策路に足を踏み入れる。
季節は、そろそろ冬に入りかけようとしていた。木々の赤やオレンジに色づいた葉が地面を覆うように広がっていた。
そして、その娘が本物かどうか ──
それを見極めに、ジェイドは、カルナードへ向かっているのである。
ジェイドがいる場所は、女神フローリアの信仰が厚く、女神信仰の中枢を担う大聖地に位置するカルシス大神殿。いわゆる、バチカン的な場所であり、ここが女神フローリアの一番の聖地である。
その最も権威のある神殿で、ジェイドは副大神官という役職にある。
ジェイドは、代々、神官、ひいては大神官を輩出する高貴な家柄の出である。彼の両親、親族からは、神官を輩出するほど、特権的な家系に生まれ、ジェイドもその例にもれず、大神殿の副大神官と言う役職にいた。
黒い髪を、聖職者らしく短くきったジェイドは、今年30歳を迎えようとしていた。才気あふれる眼差しや、間髪を入れぬほど機転のとんだ会話は、沢山の人を魅了した。濃紺の瞳に見つめられれば、大抵の人間は魅了されてしまうのである。
魅力的な外見だけでなく、ジェイドは野心家でもあった。
副大神官から、大神官へと昇格できる日も近いと噂されるジェイドは、その魅力的な容姿のせいで、どこにいっても人気者である。しかし、ジェイド本人は、それについては本当は少し煩わしく感じている部分もある。
今回の旅の目的は、カルナードに現れたという女神の生まれ変わりが本物であるかどうか見極め、もし、本物であれば、自国に連れて帰り保護するというものである。
カルナードでは最初に女神を取り違えて、冥界の魔物を神殿に呼び込むという失態をやらかした。そんな所に、女神様をおいておく訳にはいかない、と言うのが大義名分なのが本当の所だ。
女神の生まれ変わりを求めているのは、カルナードだけではない。ジェイドの国だって、女神の生まれ変わりが、のどから手が出るほどほしいのだ。女神がいる国は、精霊の守護が厚く、天変地異にも影響されることなく、繁栄を極めるからだ。
ジェイドは、馬車の窓から外を眺める。まだ日は高い。途中、小さな町で休憩のために立ち寄ると、ジェイドは足を延ばすために少し散策することにした。
小さな馬車で揺られるのは、結構疲れるものだ。
普段乗りなれない質素な馬車にするんじゃなかったと、ジェイドは少し後悔した。しかし、自分のカルナード入りは出来るだけ目立たないようにと注意して、この馬車をあえて選んだのは自分だ。
いつも乗っているような豪華で乗り心地のよい馬車だと、否応なく、カルナードに警戒される。
小さな村であるが、食堂などもあり、休憩にはちょうどよさそうだ。ジェイドは、簡単な昼食をそこでとり、少し歩くことに決めた。
「旦那様、この先の森は道に迷いやすくなっておりますだ」
年を取った店の給仕がジェイドにおずおずと言う。着ているものは質素だが、彼の物腰が非常に洗練されていたので、給仕は、老婆心ながらそう伝えた。森にひかれて散策に出て、道に迷う旅人が後を絶たなかったからだ。
「いや、その辺を少し歩くだけだから、心配はいらない」
ジェイドは笑いながら、心配性の給仕に礼を言う。昼食の代金を払い、御者には少し待つようにと伝えた。
森の入り口は明るく、道も綺麗に整備されている。この森でどうして道に迷うことがあるんだろうと、ジェイドは訝し気に思いながら、散策路に足を踏み入れる。
季節は、そろそろ冬に入りかけようとしていた。木々の赤やオレンジに色づいた葉が地面を覆うように広がっていた。
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