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~ 第一部 出版記念番外編 ~
書籍化記念番外編 ~ ざまあになった人々~
その男の名は、ガストン・チャービルという。
そろそろ50歳を超えそうなガストンは頑固な男である。そして、わりと大雑把でもある。たまたま、親戚の縁故採用で、王宮の事務官になれたことはとてもラッキーだったと、ガストンは思っている。
事務所は今日も新しい従者の雇用登録で忙しい。会社でいうと人事部のような場所で、ガストンは主に採用に関する書類仕事にいそしんでいた。採用担当事務長というのが彼の役職名だ。
夕方に近い時間、あと小一刻で今日の仕事も終ろうとしている時だった。
「おい、今日は何人新入りが入った?」
椅子に座ったまま部下にぞんざいな口調で聞けば、新入りの文官は書類を見ながら、彼の問いに答えた。
「え~っと、三人ですね。清掃係が一名、貨物係が一名、それと・・・ああ、新しい下級侍女が一名ですか」
「ふーん、今日は少し少な目だな。明日はどうなってる?」
「明日は、新しく赴任してくる護衛騎士が一名、と、魔道師が一名ですね。こちらは丁寧に対応しないといけないので、こういう場合どうしたらよろしいでしょうか? 身分の高い人にこちらまで出向かせる訳にはいかないでしょうし」
この部署に来てから、まだ日も新しい事務官がガストンに尋ねると、ガストンはいかにも不機嫌そうな顔をした。
「けっ。あいつら偉そうに、俺達に出向けとか言いやがる。全く胸糞が悪いぜ。特に、魔道師。あいつら、神経質なくせにお高くとまりやがって、めんどくせえ」
「そういえば、ずっと前に雇用登録したダーマさんも、厩舎係りから白魔導師への登録に変わりましたね」
若い事務官は、一人の女の子の書類手続きをしたことを思い出した。
「は? ダーマ、誰だそいつ?」
「ほら、7歳くらいの女の子ですよ。フローリアって名前を書いたあの子です」
「ああ、あの嘘つきのチビか。全く、小さいくせに、偽名を使うなんてこざかしい真似をどこで覚えてきたのかね。俺が、あの子の親なら、こっぴどく尻を叩いてやる所だ」
「それでも、白魔導師だなんてすごいじゃないですか。事務長」
「けっ。あのチビが魔道師だなんて、片腹痛いぜ。あのチビも、ついにお高くとまった魔導師の仲間入りって訳か。女神になり損ねて、魔道師入りとは、小さいのに恐れ入るぜ。まったく」
「小さな女の子ですよ。もう少し、手加減してあげてはいかがですか?」
「俺がこざかしいチビに忖度してやらなきゃならん理由はないさ。そもそもさ、魔道師なんつー連中はな、何しろ気位が高いんだ。ちょっとでも気に入らないと、眉をしかめて、嫌みばかり言いやがる。なあ、お前たち、そう思うだろ?」
ガストンはくるりと後ろを振り返り、自分の後ろにいた部方たちに話しかける。その時、ガストンの背後の扉が静かに開いたことを彼は知らなかった。
部下たちから返事がないので、男は怪訝に思って、部下に視線を向けると、みんな目を丸くして、固まっている。
「なんだよ。お前らだって、魔道師たちが気に食わないって前々から言ってたろ?」
ガストンがそういうと、部下たちはさっと目をそらして下をむいた。
「へぇ、そうなんだ」
背後から、凍りつくような冷たい声が耳に響く。
「なんだよ。俺達は今、取り込みち・・・」
ガストンは、そう言って振り向きながら、途中で言葉を止めた。
自分は幻覚を見ているのではないかと、目をひん剥いて、目の前の人物を凝視しながらその名を呟く。
「ノワール魔道師長・・・・」
雑然とした事務所の入り口に立っていたのは、まぎれもなくライル・ノワール宮廷魔導士長である。彼の後ろには、なぜか騎士が立ち、なんとなく殺気を放っているのを、ガストンは見た。
「魔道師長ともあろうお方がどうしてここへ……」
周囲の文官たちも、突然のお偉いさんの登場で、仕事の手を止めて、ライルをじっと見つめている。
宮廷魔導士長と言えば、王族の居住区ですら自由に出入りをゆるされるほどの超VIPだ。
その美貌と魔力に惹かれるものは後を絶たないのだが、ライルは主に魔導士塔を中心に生活しており、一般従者にはまず滅多にお目通りできない人物である。
「きれい……」
そう呟いたのはまだうら若い女性の事務官だ。
ライルの紺色の瞳が機嫌悪そうに歪むのをガストンは息を詰めて見つめた。彼からは、いかにも不機嫌そうな雰囲気ひしひしと滲み出ている。魔力の強さと相まって、そのオーラは人を畏怖させるようなものだった。
「魔道師が気に入らないと聞こえたんだけどね」
あてこすりのようなライルの嫌味に、ガストンははっと襟を正した。今の陰口が、筒抜けだったと知った途端、男の顔からはさっと血の気が引く。
弾けたように椅子から飛び上がり、男は入り口のライルの所まで慌てて小走りに近寄っていった。
「魔道師長様、今日は、一体、どのようなご用で?」
ご機嫌を取るかのように、なれなれしく近寄ってきたガストンに対し、ライルは侮蔑的な視線を向ける。
そして、ガストンを冷たく無視して、ライルは自分の背後に控えていた騎士たちに声をかける。
「よし。始めろ」
ライルが珍しく騎士に声をかければ、騎士達は、「ははっ」と声をあげ、ガストンの両側からがつりと締め上げた。
「ノワール様、これは一体?」
ライルはガストンを冷たく無視して、周囲の事務官に声を上げる。
「国王陛下の名により、事務所をあらためさせてもらう。事務官は、全員、外に出てくれないか」
魔道師長の顔には、深い怒りのようなものが現れている。そう、ノワール魔道師長は、怒っている。その怒りはかなり根深いものに違いない。
魔道師を怒らせるととんでもない目にあわされるのを文官たちは知っている。ガストンを事務所に一人残したまま、彼らはわれ先にと、アリの子を散らすようにと逃げ出していく。
「おい、ちょっと待った」
ライルの背後に控えていた騎士が、そのうちの一人をひょいっと捕まえる。
「ひぃぃっ、お、お許しを・・・・」
意味が分からないまま、事務官は、恐怖に震えながら、騎士に引きずられ、ライルの前へと連れていかれた。
「私の調べものにちょっと付き合ってもらいたいんだ」
ライルの声は凍るように冷たく、凄い威圧感がある。今まで、ノワール宮廷魔導士長は怖い存在だとは聞いていたが、まさか、これほどまでとは思わなかった。まだ何もされていないのに、拷問されているような気になるのはなぜだ。
がくがくと足が震えて、立っているのがやっとの事務官に、ライルはぶっきらぼうに命令した。
「魔道師の雇用登録票を出してくれないか」
「は、はい。ただいま」
震える手で、棚の中から魔道師の雇用登録ファイルを見つけ出し、それを渡せば、ライルはすぐさまそれに目を通す。
ライルが探していたものはすぐに見つかった。雇用登録を行う際に、本人が書き込んだ書類だ。
「フローリア・ダーマ、17歳」
そこに書いてあった名前と年齢は二重線で訂正され、その代わりに、「フロル・ダーマ 7歳」と上書きされている。
それを見つけて、ライルは満足げに微笑んだ。
やはり、フロルの名前は、フローリアであったのだ。
「やはり思った通りだ」
そう呟くライルの声を聞いて、騎士たちは、お互いの目を見て頷きあう。
そして、ライルは、その書類を一枚、素早く抜き取り、ローブの中へとしまった。
これで証拠は押さえた。
ライルは、振り向いて騎士達に命じる。
「ガストン・チャービル事務長はそのまま連行しろ」
「どういうことですか?魔道師長。どうして儂が?」
ガストンは大声で叫びながらも、ずるずると騎士に引きずられて、どこかへと連れていかれる。その様子を見ていた事務官たちは、確信する。きっと、彼が連れていかれる先は、きっと地下牢だろうと ──
何がどういけないのかは、わからなかったが、チャービル事務長は何か致命的なミスをおかしたのだ。ノワール魔道師長を、この事務長は完璧に敵に回してしまったのだ、と。
「用事はすんだ。帰るぞ」
ライルがそういえば、騎士達は素早くドアを開け、魔道師長の行く手を遮らないように配慮した。そして、騎士達もライルに続いて、無言のまま、彼の後を追う。
事務所の扉がぱたりと締まり、魔道師長と騎士達の姿が見えなくなると、事務員はたった一人、事務所に取り残される。喘ぐように安堵のため息をついた事務員は、へなへなと床に座り込む。
危なかった。恐怖のあまり、もうちょっとで漏らす所だった。
「ああ、怖かった・・・。でも、魔道師長は一体、何を取りに来たんだろう?」
雇用登録の一部を魔道師長は持っていったが、それが何かは事務員はわからなかった。
魔道師の絆は、どんな絆よりも強いという。
けれども、魔道師の誰かに、事務長が何か粗相をやらかしたのに違いない。あれほど、魔道師長を怒らせるようなミスがなんだったのかは、事務員には皆目見当がつかなかったが、きっと、ガストン事務長は、当分、ここへは戻ってこれないだろう。
もしかしたら五体満足ではいられないかもしれない。生きていれば、まだ御の字なのかもしれない。
これから彼が魔道師たちにどんな目に会わされるのだろうか。それを考えると、また背筋に冷たいものが走る。
やはり、魔道師を敵に回しちゃいけなかったのだ。
すっかり腰が抜けてしまって立ち上がれなかったが、まだ自分は連行されないだけ幸運だったのだ。
冷たい床の上に転がりながら、彼はガストンの無事を心から祈った。
そろそろ50歳を超えそうなガストンは頑固な男である。そして、わりと大雑把でもある。たまたま、親戚の縁故採用で、王宮の事務官になれたことはとてもラッキーだったと、ガストンは思っている。
事務所は今日も新しい従者の雇用登録で忙しい。会社でいうと人事部のような場所で、ガストンは主に採用に関する書類仕事にいそしんでいた。採用担当事務長というのが彼の役職名だ。
夕方に近い時間、あと小一刻で今日の仕事も終ろうとしている時だった。
「おい、今日は何人新入りが入った?」
椅子に座ったまま部下にぞんざいな口調で聞けば、新入りの文官は書類を見ながら、彼の問いに答えた。
「え~っと、三人ですね。清掃係が一名、貨物係が一名、それと・・・ああ、新しい下級侍女が一名ですか」
「ふーん、今日は少し少な目だな。明日はどうなってる?」
「明日は、新しく赴任してくる護衛騎士が一名、と、魔道師が一名ですね。こちらは丁寧に対応しないといけないので、こういう場合どうしたらよろしいでしょうか? 身分の高い人にこちらまで出向かせる訳にはいかないでしょうし」
この部署に来てから、まだ日も新しい事務官がガストンに尋ねると、ガストンはいかにも不機嫌そうな顔をした。
「けっ。あいつら偉そうに、俺達に出向けとか言いやがる。全く胸糞が悪いぜ。特に、魔道師。あいつら、神経質なくせにお高くとまりやがって、めんどくせえ」
「そういえば、ずっと前に雇用登録したダーマさんも、厩舎係りから白魔導師への登録に変わりましたね」
若い事務官は、一人の女の子の書類手続きをしたことを思い出した。
「は? ダーマ、誰だそいつ?」
「ほら、7歳くらいの女の子ですよ。フローリアって名前を書いたあの子です」
「ああ、あの嘘つきのチビか。全く、小さいくせに、偽名を使うなんてこざかしい真似をどこで覚えてきたのかね。俺が、あの子の親なら、こっぴどく尻を叩いてやる所だ」
「それでも、白魔導師だなんてすごいじゃないですか。事務長」
「けっ。あのチビが魔道師だなんて、片腹痛いぜ。あのチビも、ついにお高くとまった魔導師の仲間入りって訳か。女神になり損ねて、魔道師入りとは、小さいのに恐れ入るぜ。まったく」
「小さな女の子ですよ。もう少し、手加減してあげてはいかがですか?」
「俺がこざかしいチビに忖度してやらなきゃならん理由はないさ。そもそもさ、魔道師なんつー連中はな、何しろ気位が高いんだ。ちょっとでも気に入らないと、眉をしかめて、嫌みばかり言いやがる。なあ、お前たち、そう思うだろ?」
ガストンはくるりと後ろを振り返り、自分の後ろにいた部方たちに話しかける。その時、ガストンの背後の扉が静かに開いたことを彼は知らなかった。
部下たちから返事がないので、男は怪訝に思って、部下に視線を向けると、みんな目を丸くして、固まっている。
「なんだよ。お前らだって、魔道師たちが気に食わないって前々から言ってたろ?」
ガストンがそういうと、部下たちはさっと目をそらして下をむいた。
「へぇ、そうなんだ」
背後から、凍りつくような冷たい声が耳に響く。
「なんだよ。俺達は今、取り込みち・・・」
ガストンは、そう言って振り向きながら、途中で言葉を止めた。
自分は幻覚を見ているのではないかと、目をひん剥いて、目の前の人物を凝視しながらその名を呟く。
「ノワール魔道師長・・・・」
雑然とした事務所の入り口に立っていたのは、まぎれもなくライル・ノワール宮廷魔導士長である。彼の後ろには、なぜか騎士が立ち、なんとなく殺気を放っているのを、ガストンは見た。
「魔道師長ともあろうお方がどうしてここへ……」
周囲の文官たちも、突然のお偉いさんの登場で、仕事の手を止めて、ライルをじっと見つめている。
宮廷魔導士長と言えば、王族の居住区ですら自由に出入りをゆるされるほどの超VIPだ。
その美貌と魔力に惹かれるものは後を絶たないのだが、ライルは主に魔導士塔を中心に生活しており、一般従者にはまず滅多にお目通りできない人物である。
「きれい……」
そう呟いたのはまだうら若い女性の事務官だ。
ライルの紺色の瞳が機嫌悪そうに歪むのをガストンは息を詰めて見つめた。彼からは、いかにも不機嫌そうな雰囲気ひしひしと滲み出ている。魔力の強さと相まって、そのオーラは人を畏怖させるようなものだった。
「魔道師が気に入らないと聞こえたんだけどね」
あてこすりのようなライルの嫌味に、ガストンははっと襟を正した。今の陰口が、筒抜けだったと知った途端、男の顔からはさっと血の気が引く。
弾けたように椅子から飛び上がり、男は入り口のライルの所まで慌てて小走りに近寄っていった。
「魔道師長様、今日は、一体、どのようなご用で?」
ご機嫌を取るかのように、なれなれしく近寄ってきたガストンに対し、ライルは侮蔑的な視線を向ける。
そして、ガストンを冷たく無視して、ライルは自分の背後に控えていた騎士たちに声をかける。
「よし。始めろ」
ライルが珍しく騎士に声をかければ、騎士達は、「ははっ」と声をあげ、ガストンの両側からがつりと締め上げた。
「ノワール様、これは一体?」
ライルはガストンを冷たく無視して、周囲の事務官に声を上げる。
「国王陛下の名により、事務所をあらためさせてもらう。事務官は、全員、外に出てくれないか」
魔道師長の顔には、深い怒りのようなものが現れている。そう、ノワール魔道師長は、怒っている。その怒りはかなり根深いものに違いない。
魔道師を怒らせるととんでもない目にあわされるのを文官たちは知っている。ガストンを事務所に一人残したまま、彼らはわれ先にと、アリの子を散らすようにと逃げ出していく。
「おい、ちょっと待った」
ライルの背後に控えていた騎士が、そのうちの一人をひょいっと捕まえる。
「ひぃぃっ、お、お許しを・・・・」
意味が分からないまま、事務官は、恐怖に震えながら、騎士に引きずられ、ライルの前へと連れていかれた。
「私の調べものにちょっと付き合ってもらいたいんだ」
ライルの声は凍るように冷たく、凄い威圧感がある。今まで、ノワール宮廷魔導士長は怖い存在だとは聞いていたが、まさか、これほどまでとは思わなかった。まだ何もされていないのに、拷問されているような気になるのはなぜだ。
がくがくと足が震えて、立っているのがやっとの事務官に、ライルはぶっきらぼうに命令した。
「魔道師の雇用登録票を出してくれないか」
「は、はい。ただいま」
震える手で、棚の中から魔道師の雇用登録ファイルを見つけ出し、それを渡せば、ライルはすぐさまそれに目を通す。
ライルが探していたものはすぐに見つかった。雇用登録を行う際に、本人が書き込んだ書類だ。
「フローリア・ダーマ、17歳」
そこに書いてあった名前と年齢は二重線で訂正され、その代わりに、「フロル・ダーマ 7歳」と上書きされている。
それを見つけて、ライルは満足げに微笑んだ。
やはり、フロルの名前は、フローリアであったのだ。
「やはり思った通りだ」
そう呟くライルの声を聞いて、騎士たちは、お互いの目を見て頷きあう。
そして、ライルは、その書類を一枚、素早く抜き取り、ローブの中へとしまった。
これで証拠は押さえた。
ライルは、振り向いて騎士達に命じる。
「ガストン・チャービル事務長はそのまま連行しろ」
「どういうことですか?魔道師長。どうして儂が?」
ガストンは大声で叫びながらも、ずるずると騎士に引きずられて、どこかへと連れていかれる。その様子を見ていた事務官たちは、確信する。きっと、彼が連れていかれる先は、きっと地下牢だろうと ──
何がどういけないのかは、わからなかったが、チャービル事務長は何か致命的なミスをおかしたのだ。ノワール魔道師長を、この事務長は完璧に敵に回してしまったのだ、と。
「用事はすんだ。帰るぞ」
ライルがそういえば、騎士達は素早くドアを開け、魔道師長の行く手を遮らないように配慮した。そして、騎士達もライルに続いて、無言のまま、彼の後を追う。
事務所の扉がぱたりと締まり、魔道師長と騎士達の姿が見えなくなると、事務員はたった一人、事務所に取り残される。喘ぐように安堵のため息をついた事務員は、へなへなと床に座り込む。
危なかった。恐怖のあまり、もうちょっとで漏らす所だった。
「ああ、怖かった・・・。でも、魔道師長は一体、何を取りに来たんだろう?」
雇用登録の一部を魔道師長は持っていったが、それが何かは事務員はわからなかった。
魔道師の絆は、どんな絆よりも強いという。
けれども、魔道師の誰かに、事務長が何か粗相をやらかしたのに違いない。あれほど、魔道師長を怒らせるようなミスがなんだったのかは、事務員には皆目見当がつかなかったが、きっと、ガストン事務長は、当分、ここへは戻ってこれないだろう。
もしかしたら五体満足ではいられないかもしれない。生きていれば、まだ御の字なのかもしれない。
これから彼が魔道師たちにどんな目に会わされるのだろうか。それを考えると、また背筋に冷たいものが走る。
やはり、魔道師を敵に回しちゃいけなかったのだ。
すっかり腰が抜けてしまって立ち上がれなかったが、まだ自分は連行されないだけ幸運だったのだ。
冷たい床の上に転がりながら、彼はガストンの無事を心から祈った。
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