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一章 出会いとクリスタル

27話 罪と力(アキ視点)

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 リュージ様とミーア様が部屋から飛び出していく。僕は待っていろと言われた手前ここでただ何もできずじっとする。
 行っても足手纏いになることは十分に理解している。それでも二人の元にすぐにでも向かいたい。力になりたい。
 そんな気持ちが心の中を蠢き、ここで待っていなければいけないというのに、僕の足を動かそうとする。

「冒険者の人達が帰ってきたぞー!!」

 しばらくして家の外から聞こえてきたその言葉に背中を押され、意識していないのに僕は家の外に飛び出す。
 人が集まっている方に走り、その帰ってきたという人達の元に向かう。

「リュージ様……? ミーア様……?」

 しかし二人の姿はどこにもない。居るのは四人の大人と背負われた子供だけだ。
 その四人はボロボロで、内一人は大柄な男性に背負われている。お腹の部分の鎧が大きくひしゃげており、それ以外にも外傷が目立つ。

 そんな彼らを見てしまって、二人も近々このようになってしまうのではと、それどころかもっと酷い目に遭ってしまうのではないかと考えてしまう。
 胸が苦しい。ナイフを突き刺されたようだ。
 それくらいこの現状が辛く、何もできない無力な自分が本当に情けない。
 僕は二人によくしてもらって、優しさや温かさをたくさん分けてもらってきた。それなのに何も返せずにまた一人ぼっちになってしまう。

「僕が…….僕がクリスタルの力を扱えたら……!!」

 人混みから少し離れ自分の胸に手を当ててクリスタルの力を引き出そうとする。ミーア様にこの前教えてもらったように精神世界に行こうとする。

「うっ……ぐぅ……!!」

 できない。 
 どれだけ意識を集中させても途中で胸の鼓動が速くなり、頭を重たいもので殴りつけられたような痛みが襲い集中できなくなる。
 
 二人を助けたいのに……何で……どうして僕はこの力を扱えないの!? 僕が何をしたって……

 その考えが頭をよぎるのと同時に更に頭痛が酷くなる。まるで僕を誰かが罰するように与えられた痛みの中意識が闇へと落ちていく。
 目を覚ませば僕は暗く、空にはドス黒い何かが蠢いている空間にいた。

「何これ……これが僕の精神世界……?」

 辺りを見てクリスタルを探そうとしたが、視界が大きく揺れて僕は坂を転げ落ちていってしまう。その坂は妙に角張っていて硬く、転げ終わった後坂の正体が分かり背筋が凍りつく。
 僕が先程までいたのは頭蓋骨の山の頂上だった。数百もの頭蓋骨が積み重なっている。

「うっ……うぉぇぇぇぇ!!」

 頭蓋骨には血肉が付着しているものもあり、唐突に見せられたその惨状に耐えきれず僕はその場で嘔吐してしまう。
 吐く際下を向いた結果僕は更なる惨状を目の当たりにしてしまう。
 
 なんと地面が全て骨で埋め尽くされていたのだ。数多の誰かの屍の上に僕がいる。その事実のせいで胃の中のものが全て出されてしまう。
 骨が吐瀉物でまみれて、やっと僕は正気を取り戻し冷静に辺りを視認することができる。相変わらずの景色に吐き気が込み上げてくるがもう吐くものすらない。

「あれは……玉座?」

 数十メートル先に暗い赤色の玉座が置いてある。 
 骨の上に置かれているせいで傾いているそれの前まで来て僕は気づく。暗い赤色で装飾されているのではない。玉座に血がベットリと塗られているのだと。
 玉座の上には赤色の宝石が、クリスタルが三つ置かれておりそれらは突然浮遊しこちらに向かってくる。

 この景色が何を意味しているのかは分からない。でも、僕がやることは一つだ。僕は……

「二人の力になりたい!!」

 迷わず目の前のクリスタルに手を伸ばし掴み取る。
 胸の鼓動が速くなりとてつもない程の熱気に包み込まれる。しかしその熱気が僕に与える。自信を。

「この力があれば……!!」

 気づけば視界が元に戻っている。
 選択肢は一つだけ。僕はクリスタルの圧がする方へ駆け出す。
 木々の間を潜り抜け、最短距離で気配がする方へと突き進んでいく。

「待っててください……今行きます!!」

 こうして溢れ出す灼熱と自信を胸に仕舞い込み戦場へと向かうのだった。
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