30 / 38
予言された国難
ロットリア・デルタ
よろけるようにして、校舎裏の茨の茂みの側の、古びたベンチに体を横たえた。ぐらぐらと周りが回る気がしている。
なにが、どうしたらこんなことになったのか、この頃はずっと考えていた。私はこんな血族に生まれたのだから当たり前なのかもしれないが、私の友人にまで危害がおよぶだなどと。
私の家の?いや、私のあさはかな行動が起こしたことだ。分不相応にもエリーゼを好きでいたことが、まさか戦災を起こすだなんて。
「おや、探したよ?麗しい侯爵子息殿」
ゾッとするような声に飛び起きた。
「やあ、お目覚めか?目が赤いが、どうかしたかな?」
私はつい周りを見回した。
「ヴィルヘルム皇太子殿下、なぜ、このようなうら寂しい場所へ」
ふむ、と皇太子は顎の辺りに手をあて、唇を引き上げた。
「君に頼みがあってね、生徒会室へ行ったのだが、けんもほろろに追い返された。君になにかあれば、私のせいらしいね?彼らは私が誰か分からないらしい」
その言い方に、手のひらがじっとりと汗をかいてくるのがかんじられた。
「そういえば君も、私がわからないのか?それともなにか別の理由で、頭を下げるのは気に触るか」
慌てて、所々に茨の突き出た小道へ膝をつこうとした。
「皇太子殿下、ご無礼をいたしました。このとおり、深くお詫びを申し上げます」
おっと、と皇太子は私の肩を掴む。
「天下の侯爵子息殿がそこまでする必要はないさ。私のささやかな願いさえきいてくれるならね」
お願いごと、とつい口をついてでた。
「無論、どのようなことでも。私ひとりの命で引き換えられるものでしたら」
ふふふ、と皇太子は声をだして笑った。
「賢いな君は、怖いほどだ。つまりあの無礼の輩は捨て置けというわけだな?私に命令するとは、たいしたものだ。さすが皇帝の孫というわけか」
そう言って私の前髪を掴む。
「良かろう、お前一人に頼むことにするよ。ロットリア・デルタへ行き、契約の鍵を持ってこい。不死の聖騎士がいれば不可能でないと思ったが、約束は約束だ。お前一人、行くが良い」
ロットリア・デルタ。セレアザードの深い森の中を流れるという巨大な川の、我が国との国境付近にある中州のことだ。たんなる洲ではなくて、かなり堅牢な要塞になっており、要塞の中の迷宮には恐ろしい怪物がいて契約の鍵を守っているという。
その鍵をヒトである私がとりに行くということは、すなわち不可侵の契約を脅かすことになる。
成功しようと、失敗して死のうと、どのみち戦争は免れないのだ。
「どうした、やはり聖騎士か宰相の娘にでも行かせるか?それともあの無礼な子供のうちの誰かにやらせるか?」
いったいあいつらは何を言ったんだ?とにかく、皇太子には怒りをおさめてもらって、これ以上災禍が国家レベルにならないようにせねば。
「御意に従い、彼岸へまいります。もし、我が骸が帰らぬ場合は、どうぞ捨て置いて頂けますよう」
ふむ、と皇太子は眉をつりあげた。
「いいのかい?君はマルセルの嫡子だろう父上が放ってはおくまい」
わたしはゆるゆると首をふった。
「元より父は侯爵位を一代で返上する所存でございますれば。私は幼いころより、皇太子様御身に子爵としてお仕えし、いずれそれもお返しするようにと。妹たちは国外にて商家に嫁に行くよう手配していると聞き及んでおります」
皇太子は口元を覆い、眼光鋭く私を頭の先から足の先までながめた。
「その言葉が嘘でないなら、直ぐに発て」
御意に、と私が頭を下げるより先に、皇太子は立ち去った。……胃が痛い。
なにが、どうしたらこんなことになったのか、この頃はずっと考えていた。私はこんな血族に生まれたのだから当たり前なのかもしれないが、私の友人にまで危害がおよぶだなどと。
私の家の?いや、私のあさはかな行動が起こしたことだ。分不相応にもエリーゼを好きでいたことが、まさか戦災を起こすだなんて。
「おや、探したよ?麗しい侯爵子息殿」
ゾッとするような声に飛び起きた。
「やあ、お目覚めか?目が赤いが、どうかしたかな?」
私はつい周りを見回した。
「ヴィルヘルム皇太子殿下、なぜ、このようなうら寂しい場所へ」
ふむ、と皇太子は顎の辺りに手をあて、唇を引き上げた。
「君に頼みがあってね、生徒会室へ行ったのだが、けんもほろろに追い返された。君になにかあれば、私のせいらしいね?彼らは私が誰か分からないらしい」
その言い方に、手のひらがじっとりと汗をかいてくるのがかんじられた。
「そういえば君も、私がわからないのか?それともなにか別の理由で、頭を下げるのは気に触るか」
慌てて、所々に茨の突き出た小道へ膝をつこうとした。
「皇太子殿下、ご無礼をいたしました。このとおり、深くお詫びを申し上げます」
おっと、と皇太子は私の肩を掴む。
「天下の侯爵子息殿がそこまでする必要はないさ。私のささやかな願いさえきいてくれるならね」
お願いごと、とつい口をついてでた。
「無論、どのようなことでも。私ひとりの命で引き換えられるものでしたら」
ふふふ、と皇太子は声をだして笑った。
「賢いな君は、怖いほどだ。つまりあの無礼の輩は捨て置けというわけだな?私に命令するとは、たいしたものだ。さすが皇帝の孫というわけか」
そう言って私の前髪を掴む。
「良かろう、お前一人に頼むことにするよ。ロットリア・デルタへ行き、契約の鍵を持ってこい。不死の聖騎士がいれば不可能でないと思ったが、約束は約束だ。お前一人、行くが良い」
ロットリア・デルタ。セレアザードの深い森の中を流れるという巨大な川の、我が国との国境付近にある中州のことだ。たんなる洲ではなくて、かなり堅牢な要塞になっており、要塞の中の迷宮には恐ろしい怪物がいて契約の鍵を守っているという。
その鍵をヒトである私がとりに行くということは、すなわち不可侵の契約を脅かすことになる。
成功しようと、失敗して死のうと、どのみち戦争は免れないのだ。
「どうした、やはり聖騎士か宰相の娘にでも行かせるか?それともあの無礼な子供のうちの誰かにやらせるか?」
いったいあいつらは何を言ったんだ?とにかく、皇太子には怒りをおさめてもらって、これ以上災禍が国家レベルにならないようにせねば。
「御意に従い、彼岸へまいります。もし、我が骸が帰らぬ場合は、どうぞ捨て置いて頂けますよう」
ふむ、と皇太子は眉をつりあげた。
「いいのかい?君はマルセルの嫡子だろう父上が放ってはおくまい」
わたしはゆるゆると首をふった。
「元より父は侯爵位を一代で返上する所存でございますれば。私は幼いころより、皇太子様御身に子爵としてお仕えし、いずれそれもお返しするようにと。妹たちは国外にて商家に嫁に行くよう手配していると聞き及んでおります」
皇太子は口元を覆い、眼光鋭く私を頭の先から足の先までながめた。
「その言葉が嘘でないなら、直ぐに発て」
御意に、と私が頭を下げるより先に、皇太子は立ち去った。……胃が痛い。
あなたにおすすめの小説
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ゴミスキルと呼ばれた少女は無限を手にする
森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。
だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。
そして思い出す――
《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。
市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。
食料も、装備も、資金も――すべてが無限。
最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。
これは――
ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。