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予言された国難
ロットリア・デルタ
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よろけるようにして、校舎裏の茨の茂みの側の、古びたベンチに体を横たえた。ぐらぐらと周りが回る気がしている。
なにが、どうしたらこんなことになったのか、この頃はずっと考えていた。私はこんな血族に生まれたのだから当たり前なのかもしれないが、私の友人にまで危害がおよぶだなどと。
私の家の?いや、私のあさはかな行動が起こしたことだ。分不相応にもエリーゼを好きでいたことが、まさか戦災を起こすだなんて。
「おや、探したよ?麗しい侯爵子息殿」
ゾッとするような声に飛び起きた。
「やあ、お目覚めか?目が赤いが、どうかしたかな?」
私はつい周りを見回した。
「ヴィルヘルム皇太子殿下、なぜ、このようなうら寂しい場所へ」
ふむ、と皇太子は顎の辺りに手をあて、唇を引き上げた。
「君に頼みがあってね、生徒会室へ行ったのだが、けんもほろろに追い返された。君になにかあれば、私のせいらしいね?彼らは私が誰か分からないらしい」
その言い方に、手のひらがじっとりと汗をかいてくるのがかんじられた。
「そういえば君も、私がわからないのか?それともなにか別の理由で、頭を下げるのは気に触るか」
慌てて、所々に茨の突き出た小道へ膝をつこうとした。
「皇太子殿下、ご無礼をいたしました。このとおり、深くお詫びを申し上げます」
おっと、と皇太子は私の肩を掴む。
「天下の侯爵子息殿がそこまでする必要はないさ。私のささやかな願いさえきいてくれるならね」
お願いごと、とつい口をついてでた。
「無論、どのようなことでも。私ひとりの命で引き換えられるものでしたら」
ふふふ、と皇太子は声をだして笑った。
「賢いな君は、怖いほどだ。つまりあの無礼の輩は捨て置けというわけだな?私に命令するとは、たいしたものだ。さすが皇帝の孫というわけか」
そう言って私の前髪を掴む。
「良かろう、お前一人に頼むことにするよ。ロットリア・デルタへ行き、契約の鍵を持ってこい。不死の聖騎士がいれば不可能でないと思ったが、約束は約束だ。お前一人、行くが良い」
ロットリア・デルタ。セレアザードの深い森の中を流れるという巨大な川の、我が国との国境付近にある中州のことだ。たんなる洲ではなくて、かなり堅牢な要塞になっており、要塞の中の迷宮には恐ろしい怪物がいて契約の鍵を守っているという。
その鍵をヒトである私がとりに行くということは、すなわち不可侵の契約を脅かすことになる。
成功しようと、失敗して死のうと、どのみち戦争は免れないのだ。
「どうした、やはり聖騎士か宰相の娘にでも行かせるか?それともあの無礼な子供のうちの誰かにやらせるか?」
いったいあいつらは何を言ったんだ?とにかく、皇太子には怒りをおさめてもらって、これ以上災禍が国家レベルにならないようにせねば。
「御意に従い、彼岸へまいります。もし、我が骸が帰らぬ場合は、どうぞ捨て置いて頂けますよう」
ふむ、と皇太子は眉をつりあげた。
「いいのかい?君はマルセルの嫡子だろう父上が放ってはおくまい」
わたしはゆるゆると首をふった。
「元より父は侯爵位を一代で返上する所存でございますれば。私は幼いころより、皇太子様御身に子爵としてお仕えし、いずれそれもお返しするようにと。妹たちは国外にて商家に嫁に行くよう手配していると聞き及んでおります」
皇太子は口元を覆い、眼光鋭く私を頭の先から足の先までながめた。
「その言葉が嘘でないなら、直ぐに発て」
御意に、と私が頭を下げるより先に、皇太子は立ち去った。……胃が痛い。
なにが、どうしたらこんなことになったのか、この頃はずっと考えていた。私はこんな血族に生まれたのだから当たり前なのかもしれないが、私の友人にまで危害がおよぶだなどと。
私の家の?いや、私のあさはかな行動が起こしたことだ。分不相応にもエリーゼを好きでいたことが、まさか戦災を起こすだなんて。
「おや、探したよ?麗しい侯爵子息殿」
ゾッとするような声に飛び起きた。
「やあ、お目覚めか?目が赤いが、どうかしたかな?」
私はつい周りを見回した。
「ヴィルヘルム皇太子殿下、なぜ、このようなうら寂しい場所へ」
ふむ、と皇太子は顎の辺りに手をあて、唇を引き上げた。
「君に頼みがあってね、生徒会室へ行ったのだが、けんもほろろに追い返された。君になにかあれば、私のせいらしいね?彼らは私が誰か分からないらしい」
その言い方に、手のひらがじっとりと汗をかいてくるのがかんじられた。
「そういえば君も、私がわからないのか?それともなにか別の理由で、頭を下げるのは気に触るか」
慌てて、所々に茨の突き出た小道へ膝をつこうとした。
「皇太子殿下、ご無礼をいたしました。このとおり、深くお詫びを申し上げます」
おっと、と皇太子は私の肩を掴む。
「天下の侯爵子息殿がそこまでする必要はないさ。私のささやかな願いさえきいてくれるならね」
お願いごと、とつい口をついてでた。
「無論、どのようなことでも。私ひとりの命で引き換えられるものでしたら」
ふふふ、と皇太子は声をだして笑った。
「賢いな君は、怖いほどだ。つまりあの無礼の輩は捨て置けというわけだな?私に命令するとは、たいしたものだ。さすが皇帝の孫というわけか」
そう言って私の前髪を掴む。
「良かろう、お前一人に頼むことにするよ。ロットリア・デルタへ行き、契約の鍵を持ってこい。不死の聖騎士がいれば不可能でないと思ったが、約束は約束だ。お前一人、行くが良い」
ロットリア・デルタ。セレアザードの深い森の中を流れるという巨大な川の、我が国との国境付近にある中州のことだ。たんなる洲ではなくて、かなり堅牢な要塞になっており、要塞の中の迷宮には恐ろしい怪物がいて契約の鍵を守っているという。
その鍵をヒトである私がとりに行くということは、すなわち不可侵の契約を脅かすことになる。
成功しようと、失敗して死のうと、どのみち戦争は免れないのだ。
「どうした、やはり聖騎士か宰相の娘にでも行かせるか?それともあの無礼な子供のうちの誰かにやらせるか?」
いったいあいつらは何を言ったんだ?とにかく、皇太子には怒りをおさめてもらって、これ以上災禍が国家レベルにならないようにせねば。
「御意に従い、彼岸へまいります。もし、我が骸が帰らぬ場合は、どうぞ捨て置いて頂けますよう」
ふむ、と皇太子は眉をつりあげた。
「いいのかい?君はマルセルの嫡子だろう父上が放ってはおくまい」
わたしはゆるゆると首をふった。
「元より父は侯爵位を一代で返上する所存でございますれば。私は幼いころより、皇太子様御身に子爵としてお仕えし、いずれそれもお返しするようにと。妹たちは国外にて商家に嫁に行くよう手配していると聞き及んでおります」
皇太子は口元を覆い、眼光鋭く私を頭の先から足の先までながめた。
「その言葉が嘘でないなら、直ぐに発て」
御意に、と私が頭を下げるより先に、皇太子は立ち去った。……胃が痛い。
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