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【17】地獄帝国
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「おじ様、冒険者ギルドの場所を教えてくださらない?」
「なんだあんた、冒険者か? ……いや、冒険者になりたいのか?」
「ええ、お金を稼ごうと思って」
屋台でご飯を食べながら、エナは店主に冒険者ギルドまでの行き方を尋ねる。
「ふん、お金をねえ……あんた一人旅だろ?」
すると、店主はエナの姿をじっくりと観察していく。
冒険者になりたいと言う者は、星の数ほど存在する。その中には老人や小さな子供もいる。だからエナが冒険者になりたいというのを止めるようなことはしない。だが、
「ギルドは、あっちに真っ直ぐ進めば見えてくる。……ただ、ソロは危ないぞ。魔物退治の依頼を受けたいなら、パーティーを組んでから挑むんだな」
店主なりの優しさなのだろう。
新人冒険者が夢破れることがないようにと、エナに忠告する。
「ソロじゃなくて、パーティーね……それもいいアイディアだと思うけど、ここに長居するつもりはないから」
「長居しないって、まさか帝国にでも行くつもりか?」
「感が良いのね」
冗談で帝国の名を出した店主は、エナが肯定したことで顔を引きつらせる。
まさか本当に帝国を目指しているとは思ってもみなかったのだろう。
「おいおい、あんた一人で帝国に行くのか? あんなクソみたいなところに行っても、あんたじゃ絶対に生きていけないぞ……」
「帝国って、そんなに大変なところなの?」
「大変なんてもんじゃない、あそこは地獄だ」
エナの疑問に、店主が口を動かす。
同時に、その表情は苦虫を嚙み潰したように変化する。
「帝国は、いわゆる軍隊国家だ。力ある者が優先され、無き者は差別される。王国大陸のように、平民が平和に暮らすことなんてできないんだよ。だからな、俺たち王国民からは“地獄帝国”って呼ばれてる」
「地獄帝国ね……。案外、帝国も住み難そう」
とはいえ、国外追放処分となったエナには、王国大陸に居場所がない。たとえ帝国大陸が地獄のようなところだったとしても、行き先を変える選択肢はなかった。
「まあ、どうしても行くつもりなら、せめて死なないぐらい強くなってから行くんだな。それか、ソロを止めてパーティーを組むことだ」
「わたし最近、人のことをあまり信用できなくなったのよね。だからソロの方が気楽なんだけど」
「だとしてもだ。ソロで活動する間は野草を取ったり、ドブ拾いで小銭を稼げばいい。もっと稼いで帝国に行きたいなら、パーティー必須だ」
パーティーを組むことで、ソロでは太刀打ちできない魔物と戦うこともできるようになる。それに危険と隣り合わせの冒険者にとって、背中を任せることができるのはありがたい。
「まあ、命あってのものだからな。仮に魔物と出くわして、危ないと思ったらすぐに逃げることだ」
「助言に感謝するわ」
店主と言葉を交わしつつもご飯をしっかりと平らげ、空腹が満たされた。
お礼を口にしたあと、エナはその足で冒険者ギルドへと向かうことにした。
「なんだあんた、冒険者か? ……いや、冒険者になりたいのか?」
「ええ、お金を稼ごうと思って」
屋台でご飯を食べながら、エナは店主に冒険者ギルドまでの行き方を尋ねる。
「ふん、お金をねえ……あんた一人旅だろ?」
すると、店主はエナの姿をじっくりと観察していく。
冒険者になりたいと言う者は、星の数ほど存在する。その中には老人や小さな子供もいる。だからエナが冒険者になりたいというのを止めるようなことはしない。だが、
「ギルドは、あっちに真っ直ぐ進めば見えてくる。……ただ、ソロは危ないぞ。魔物退治の依頼を受けたいなら、パーティーを組んでから挑むんだな」
店主なりの優しさなのだろう。
新人冒険者が夢破れることがないようにと、エナに忠告する。
「ソロじゃなくて、パーティーね……それもいいアイディアだと思うけど、ここに長居するつもりはないから」
「長居しないって、まさか帝国にでも行くつもりか?」
「感が良いのね」
冗談で帝国の名を出した店主は、エナが肯定したことで顔を引きつらせる。
まさか本当に帝国を目指しているとは思ってもみなかったのだろう。
「おいおい、あんた一人で帝国に行くのか? あんなクソみたいなところに行っても、あんたじゃ絶対に生きていけないぞ……」
「帝国って、そんなに大変なところなの?」
「大変なんてもんじゃない、あそこは地獄だ」
エナの疑問に、店主が口を動かす。
同時に、その表情は苦虫を嚙み潰したように変化する。
「帝国は、いわゆる軍隊国家だ。力ある者が優先され、無き者は差別される。王国大陸のように、平民が平和に暮らすことなんてできないんだよ。だからな、俺たち王国民からは“地獄帝国”って呼ばれてる」
「地獄帝国ね……。案外、帝国も住み難そう」
とはいえ、国外追放処分となったエナには、王国大陸に居場所がない。たとえ帝国大陸が地獄のようなところだったとしても、行き先を変える選択肢はなかった。
「まあ、どうしても行くつもりなら、せめて死なないぐらい強くなってから行くんだな。それか、ソロを止めてパーティーを組むことだ」
「わたし最近、人のことをあまり信用できなくなったのよね。だからソロの方が気楽なんだけど」
「だとしてもだ。ソロで活動する間は野草を取ったり、ドブ拾いで小銭を稼げばいい。もっと稼いで帝国に行きたいなら、パーティー必須だ」
パーティーを組むことで、ソロでは太刀打ちできない魔物と戦うこともできるようになる。それに危険と隣り合わせの冒険者にとって、背中を任せることができるのはありがたい。
「まあ、命あってのものだからな。仮に魔物と出くわして、危ないと思ったらすぐに逃げることだ」
「助言に感謝するわ」
店主と言葉を交わしつつもご飯をしっかりと平らげ、空腹が満たされた。
お礼を口にしたあと、エナはその足で冒険者ギルドへと向かうことにした。
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