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【2-3】「門の向こう側へ」
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一時はどうなることかと思ったが、当初の目的通りに話を進められそうだ。
天井にぶつからないように空を舞い、城内を突き進むレッカスの後を追い、オレたちはまず、六の門へと足を運ぶ。
途中、他のプレイヤーに声を掛けられることがあったが、恐らくは魔王が誕生したことへの興味によるものだろう。中には握手をしてくれと言い出す者もいた。
「ほら、見えるか? あれが六の門だ」
螺旋状の階段を下りていくと、レッカスが声を掛ける。
視線を向けてみると、窓にへばり付いていた。
「あの門をくぐれば、六のエリア内に繋がってるからな。そこからは戦場だぜ?」
窓の外を見やれば、暗闇の中にひと際光り輝く巨大な門を視界に映す。あれが六の門か。
たった一度でも死ねば、現実世界でも死に至る状況にあるというのに、オレは今、心の底からワクワクしている。ログイン早々仲間ができて、パーティーまで組んでいるんだから当然だ。
現実世界において、隣の家に住む幼なじみがEGOで遊んでいることを知り、オレはずっと羨ましかった。オレもEGOで遊んでみたいと思っていたからな。
「行こう、六の門へ」
オレの声に皆が振り向き、返事をせずに小さく頷く。魔王討伐クエストの開始時刻まで、あまり時間は残されていない。ほんの少しでもいいから、EGOに慣れておこう。
「城を出れば門はすぐそこだ、気合入れていけよー」
一階へと下りると、そこは広々とした空間になっていた。
上の階だけでなく、此処にもまた同じように、沢山のモンスターたちの姿を見て取れる。魔王軍の陣地内では、此処が一番多くのプレイヤーが集まるのだろう。
彼らが向ける好奇の視線に触れながら、オレは城門の前まで歩いていく。近くまで寄ると、プレイヤーの存在を認知したのか、独りでに開き始めた。
「おぉ……、これがEGOの世界か……」
城門の外には、闇に染まった光景が視界を覆い尽くし、その中で唯一、闇に染まらないのが六の門だ。
城門から距離はあるものの、此処からでもその姿がよく見える。
「魔王軍の陣地は空から地まで真っ暗だからな、灯りがなけりゃ暮らしていけねえぜ」
ぽつぽつと、其処彼処に淡い光が漂っている。
恐らくは、魔法によるものだろう。そうでもしなければ外を歩くことすらままならないところなのだ。
「あっちにあるのがショップで、こっちに見えるのが飯屋だ。安いくせに味は確かだからな、魔王軍にいる奴らは誰でも一度は食いに行ったことがあるはずだぜ」
仮想世界の中で食事をして、満腹感を得られるのは、ある意味深刻な問題と言えるだろう。
EGOで食事をし続ければ、現実世界では何も食べていなくともお腹が減ることはない。だがそれが原因で栄養失調に陥る者も少なからず存在する。その点に関しては、テレビや新聞などで話題にも上っていた。
但し、それでも止める者はごく僅かしかいないし、現実世界で食事を取る行為を怠るプレイヤーが後を絶たないのは、VRMMOにおける全体的な悩みの一つとして挙げられる。
HPやMPを回復させる手段にも繋がるとはいえ、もう少し改良を重ねた方がよさそうな気がする。
「さあ、着いたぞー」
レッカスの案内を受けているうちに、どうやら目的地へと着いてしまったようだ。
オレの目の前には、六の門が聳え立つ。そう表現して間違いはないだろう。
そこら辺に作られた建物では比べものにならないほど立派で、魔王城に匹敵するであろう神々しさと高さを兼ね備えている。
さすがはEGOの看板といったところか。
「でかいな……」
「そりゃそうだ、門だからなー」
何がそりゃそうだなのかは不明だが、あえて突っ込まないことにした。
この門を前にして、そんな無粋な真似はできそうにないからな。
息を呑む暇すら与えずに、まずはレッカスが歩み寄り、光り輝く門をくぐった。
門の向こう側は、光の壁によって視認することができない。実際にくぐってみなければ、そこに何があるのか分からないってことだ。
「大丈夫だから、心配しないで」
不安を感じ取ったのか、オレの顔を覗き見るロアがぼそりと呟いた。
「ありがとよ、ロア」
オレは初めてロアの名前を呼び、首を縦に振る。
本来、勇者軍の陣地に転移するはずだった。
それなのにオレは、一人だけ魔王軍の陣地に飛ばされた。
でも、決して一人ではない。
ロアやレッカスがついている。
それにステータスも飛び抜けて高いんだから怖いものなんてない。
「行こう、門の向こう側へ」
視線を交わし、共に頷き合う。
そして、オレとロアは六の門をくぐった。
天井にぶつからないように空を舞い、城内を突き進むレッカスの後を追い、オレたちはまず、六の門へと足を運ぶ。
途中、他のプレイヤーに声を掛けられることがあったが、恐らくは魔王が誕生したことへの興味によるものだろう。中には握手をしてくれと言い出す者もいた。
「ほら、見えるか? あれが六の門だ」
螺旋状の階段を下りていくと、レッカスが声を掛ける。
視線を向けてみると、窓にへばり付いていた。
「あの門をくぐれば、六のエリア内に繋がってるからな。そこからは戦場だぜ?」
窓の外を見やれば、暗闇の中にひと際光り輝く巨大な門を視界に映す。あれが六の門か。
たった一度でも死ねば、現実世界でも死に至る状況にあるというのに、オレは今、心の底からワクワクしている。ログイン早々仲間ができて、パーティーまで組んでいるんだから当然だ。
現実世界において、隣の家に住む幼なじみがEGOで遊んでいることを知り、オレはずっと羨ましかった。オレもEGOで遊んでみたいと思っていたからな。
「行こう、六の門へ」
オレの声に皆が振り向き、返事をせずに小さく頷く。魔王討伐クエストの開始時刻まで、あまり時間は残されていない。ほんの少しでもいいから、EGOに慣れておこう。
「城を出れば門はすぐそこだ、気合入れていけよー」
一階へと下りると、そこは広々とした空間になっていた。
上の階だけでなく、此処にもまた同じように、沢山のモンスターたちの姿を見て取れる。魔王軍の陣地内では、此処が一番多くのプレイヤーが集まるのだろう。
彼らが向ける好奇の視線に触れながら、オレは城門の前まで歩いていく。近くまで寄ると、プレイヤーの存在を認知したのか、独りでに開き始めた。
「おぉ……、これがEGOの世界か……」
城門の外には、闇に染まった光景が視界を覆い尽くし、その中で唯一、闇に染まらないのが六の門だ。
城門から距離はあるものの、此処からでもその姿がよく見える。
「魔王軍の陣地は空から地まで真っ暗だからな、灯りがなけりゃ暮らしていけねえぜ」
ぽつぽつと、其処彼処に淡い光が漂っている。
恐らくは、魔法によるものだろう。そうでもしなければ外を歩くことすらままならないところなのだ。
「あっちにあるのがショップで、こっちに見えるのが飯屋だ。安いくせに味は確かだからな、魔王軍にいる奴らは誰でも一度は食いに行ったことがあるはずだぜ」
仮想世界の中で食事をして、満腹感を得られるのは、ある意味深刻な問題と言えるだろう。
EGOで食事をし続ければ、現実世界では何も食べていなくともお腹が減ることはない。だがそれが原因で栄養失調に陥る者も少なからず存在する。その点に関しては、テレビや新聞などで話題にも上っていた。
但し、それでも止める者はごく僅かしかいないし、現実世界で食事を取る行為を怠るプレイヤーが後を絶たないのは、VRMMOにおける全体的な悩みの一つとして挙げられる。
HPやMPを回復させる手段にも繋がるとはいえ、もう少し改良を重ねた方がよさそうな気がする。
「さあ、着いたぞー」
レッカスの案内を受けているうちに、どうやら目的地へと着いてしまったようだ。
オレの目の前には、六の門が聳え立つ。そう表現して間違いはないだろう。
そこら辺に作られた建物では比べものにならないほど立派で、魔王城に匹敵するであろう神々しさと高さを兼ね備えている。
さすがはEGOの看板といったところか。
「でかいな……」
「そりゃそうだ、門だからなー」
何がそりゃそうだなのかは不明だが、あえて突っ込まないことにした。
この門を前にして、そんな無粋な真似はできそうにないからな。
息を呑む暇すら与えずに、まずはレッカスが歩み寄り、光り輝く門をくぐった。
門の向こう側は、光の壁によって視認することができない。実際にくぐってみなければ、そこに何があるのか分からないってことだ。
「大丈夫だから、心配しないで」
不安を感じ取ったのか、オレの顔を覗き見るロアがぼそりと呟いた。
「ありがとよ、ロア」
オレは初めてロアの名前を呼び、首を縦に振る。
本来、勇者軍の陣地に転移するはずだった。
それなのにオレは、一人だけ魔王軍の陣地に飛ばされた。
でも、決して一人ではない。
ロアやレッカスがついている。
それにステータスも飛び抜けて高いんだから怖いものなんてない。
「行こう、門の向こう側へ」
視線を交わし、共に頷き合う。
そして、オレとロアは六の門をくぐった。
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