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5章 コスの人生

94話 学園祭

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「学生君、焼きそばを1つ」

「は、はい勇者様」


学園祭が始まり、屋台を回って食べ歩きを始めました、僕の付き人は各国の王族たちです、学園長たちは魔王さんの方に付いてるんだ、学生たちは僕たちの姿を見るとすごく緊張します、偉い人達が集まってるんだから仕方ないですよね、でも屋台の食べ物は、この為に作ったんだ、どうしても食べたいので勘弁してもらうよ。
ある程度お腹が満たされて、学園祭の目玉となる試合会場に向かいます、そこでは生徒たちの試合が既に始まっていました。


「ちょっと遅れちゃった」

「遅かったではないか勇者殿」


僕たちに用意されていた席は、会場の一番高い場所です、そこには魔王さんたちが既に座っていました、試合は魔族側の生徒と学園都市の学生たち、どちらもいい勝負を見せていいると魔王さんが教えてくれました、どうやら試合をずっと見ているみたいだよ。
屋台の方も見てほしいと思った僕は、収納から焼きそばやクレープを出して魔王さんに渡します、魔王さんは丁度小腹が空いていたと食べてくれたんだ、なかなか話の分かる魔王さんです。


「うむ、美味いな」

「そうでしょ、でももっとおいしい物もありますから、試合だけじゃなくてそっちも見て下さい」


考えておく、それだけを言って焼きそばを勢いよく食べていました、僕もそれ以上は言わず試合に注目です、ここからは準決勝、学園都市側も本気です、僕の作ったチェンジ型の装備を使いこなすメンバーが残ったんです、遠距離から接近戦に切り替えて戦うから対応が大変なんだ、魔王さんがそれを見て食べるのを止めたくらいなんだよ。


「す、すばらしい!?」

「そうでしょ、学園都市で研究した物なんです、そうだよね学園長」


学園長に話を振り、僕はザナルパープルちゃんを観戦です、魔王様も見ようとするんだけど、学園長がお話を進めるせいであまり見れてないです。
ごめんね魔王さん、ザナルパープルちゃんが決勝で見せたいって言う技を使ったのを見逃したよ、それもあって見せない様に手心を加えたんだ、選手が使う入り口の前でブルーパイさんがホッとした表情をしています。


「チェンジ式の装備相手だもん、さすがに牙突だけじゃ勝てないよ」


恐らく次は全てを見せないと勝てません、相手はチェンジ式を一番うまく使っているミレーヌです、凄く早くそれでいて鋭い攻撃をしてくるんだ。
今相手をしたアサラン君もなかなかでした、チェンジ式はそれだけ運動性能も上げてくれる、それは未熟な子たちだからクセを掴んで覚えられました、逆に先輩たちはすごく苦労していて予選落ちしました。


「アサラン君、よく頑張ったね」


立派だったよ、小声で称賛し次の試合です、選手はハーミオとミレーヌです、本来ならばハーミオが勝ちます、でもチェンジ式のお披露目の為、どうしても使わないといけなかったから不利です、コスの変更は僕にとってマイナスでしかないからね、何せ元は1レベルです。
予定通り、装備をチェンジさせてミレーヌに飛ばされて負けました、チェンジ式を使わないで相手したかったと、分身ハーミオは言っていたよ。


「あの子がパープルの相手となるのか」


魔王さんがミレーヌを見て呟き、少し硬い表情です僕は楽しみですねっと笑顔を見せました、これは戦争じゃないんだ、どちらが勝っても楽しい物にしたいんです、でもさすがに心配みたいだね、勝てるかは彼女次第になるよ。
竹の15が付いていた、だからきっと平気だよ、緊張も和らげちて回復も十分なはずさ。


「始まるのう、どちらが勝つのか楽しみじゃ」


学園長がポップコーンを食べながら登場する選手を応援しています、魔王さんはかなり緊張してるけど、これは平和の祭典です、学園長が正解なんだ、もっと楽しんでみないとね。
魔王さんに短剣ほどの棒を2本渡し両手で持ってもらいます、それは応援の旗が魔力で作れる魔道具、弧を描いた魔力は文字となって【パープルがんばれ!!】と表示されました、丁度たまたま観客席を見ていたザナルパープルちゃんが笑顔になったのは言うまでもないね。


「そなた!?・・・いや、感謝する」


魔王さんが何かを悟ったのかお礼を言ってくれました、僕は両方を応援しています、ふたりとも勝って欲しいんだよ、でもそれはないから、せめて全力で戦える様にしただけなんです。
試合は開始され、牙突のザナルパープルちゃんが突撃しました、それをミレーヌが近距離装備で見事に受けきったんです、でもその距離はザナルパープルちゃんの間合いです、連続の牙突を受けミレーヌは受けるのに精一杯です。


「今は我慢の時間だよミレーヌ」


ミレーヌだって近距離は得意です、だけど速度はザナルパープルちゃんに分がある、装備のおかげで何とか受けきってるけど辛そうだね、反撃の隙も無いから我慢が出来るかが勝敗をするかもです、ミレーヌが勝つには距離を取って魔法に切り替えるしかない、我慢だよっと心の中で応援です。
魔力を溜めるタイミングを取る為に頑張ってるミレーヌ、ザナルパープルちゃんもそれが分かってるから離れません、そこでミレーヌは近距離装備のままで火魔法を使いました、自分もダメージを受けたけど距離は取れたんだ、装備を変えて魔力を充填です。


「ミレーヌそこじゃまだ近い、もっと距離を取らないとダメだよ」


やっと距離を取ったからか、即座に装備をチェンジさせて魔力を溜め始めます、そこは不完全な距離で勝てない位置です、ザナルパープルちゃんは待ってましたよばかりに刀を飛ばしました、あれは必殺技【疾風牙突】です、有名な漫画のスクリュー突きの技をこちらで再現した改良型ですね。
ミレーヌは魔力充填していた為、防御するには魔力を使うしかありません、魔力すべてを回してしまい反撃は出来ません、疾風牙突はそれで防いだけど、ザナルパープルちゃんの技はもう一つあります、いつの間にか間合いを詰め、もう1本の刀である脇差を抜き【零式】を放ったんだ、ミレーヌは脇腹に受け場外まで吹っ飛んで負けちゃった。


「惜しかったねミレーヌ、もし距離をもっと取っていれば、疾風牙突を避けて魔法連打で勝ってたよ」


勝敗が決まり、会場は静かになっています、まさか魔族側が勝つとは思ってなかったのかもです、僕は立ち上がり拍手を送ります、戦争ではないんだ、勝利者を称賛しないとです。
僕の後に続いて会場から拍手が送られ試合は終わりました、魔王さんが涙を流していたけど見ないフリをしてあげました、ザナルパープルちゃんも場外にいたミレーヌと握手をして、感動的な状況ですね。


「クサイ!異様に臭いわねあなた達」


僕たちが二人の有志を見ていると、頭の中にそんな声が響きます、会場の人たち全員が聞いてるみたいで静かになったんだ、相手はどこにいるんだろう?あたりを見回していると、ザナルパープルちゃんたちの前にそいつは現れた、僕は指を指してみんなに知らせます。


「何者だお前は!」

「あらあら魔王様、アタシをお忘れですか?まぁ姿が違いますからね」


男はファントムクロウのキューロスと名乗りました、魔王さんはその名を聞いて魔力を溜めます、学園長まで戦闘態勢になったので、相手は両方の敵なんです。
学園長が僕に魔王の集合体だと説明してくれます、何でも前の戦いで前魔王を乗っ取っていたガスモンスターだそうですよ、それで分かりました、操られてる男は僕の知ってる奴だからね。


「生きていたとはな、今度は我を乗っ取る気か?」

「うふふ、そんな事はしませんわ、もっと良い体を貰ったの、この男よ」


勇者を乗っ取った、キューロスはそう言ってザナルパープルちゃんたちを人質に取ろうとします、だけど竹の15とハーミオが二人を助けました、同時にブルーパイさんも飛び込んだけど攻撃しようとした為、竹の15は二人を抱えてるよ、どうしてかふたりにキスされてるけど、もしかしてなのかもです。


「あらあら、さすがに速いわね」


キューロスは残念がったけど直ぐに僕たちの方を見てきました、魔王様と学園長は救出された直後に会場に飛び降りて行きました、剣を抜きキューロスを攻撃していきます、だけど黒田の体から黒いオーラが球状に発せられ、ふたりの剣はそれによって防がれました。
力を込めるけどそれ以上進めず、ふたりの悔しそうな顔を見てキューロスは笑いました、更にオーラを強めて二人を吹き飛ばしたんだ、そしてどうしてか僕を見てきます、標的になる覚えはないですよね。


「あなたが本物の勇者ね」

「黒田の体なのに、僕の事知らないの?」


勇者として標的になってる、僕を知ってるわけじゃないみたいです、でも黒田は前に負けてる、その記憶はないようで、掛かって来いと偉そうに言ってきました。
仕方ないので、黒田のお腹を目標に一撃を入れます、キューロスはオーラで防ぐつもりだったと思う、学園長と魔王様の様に吹き飛ばすつもりだったんだ、だけど結果は球体は破壊されキューロスが吹き飛んだ、拳は見事にお腹に入ってしまったんだよ、凄く壁にめり込んでしまいました。
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