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2章 歩み
23話 新たな決意
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オレはなんの役にも立たなかった。
アレストに運ばれてダンジョンを出て、オレは治療を受けた後そればかりを考えてベッドから起き上がれなかったよ。
「オレは強いと思ったのに、すっげぇ弱いな」
一番年下のレニーですら最後まで戦い、アルノとピュイはミノタウロスに一撃を与えたんだ。
それなのに、オレはアルシュナと一緒に一撃を与えただけで、その後は動けないで終わった。
「ミネルビル、元気出すの」
「そう、みんな頑張った」
「全員の勝利」
「お前たちはそうだろうよ、だがオレは違うんだ」
そんな事を言いたいわけじゃないのに、オレの口からはみんなを攻める言葉しか出てこない。
本当は、みんなで戦ったから勝利できたのも分かっていたが、それでもオレはみんなに酷い事を言うのが止まらなかった。
「お前らは、いつも後ろで魔法を撃つだけだもんな」
「ミネルビル、落ち着くの」
「レニーお前だって後ろから矢を撃つだけだろう、オレだけがいつも身体を張ってるんだよ」
「ミネルビル、らしくないわよ」
オレを止めたのは尊敬するキョウコ姉さんで、泣きそうなレニーたちを撫でて回ってくれた。
本当はオレの役目なのに、情けないと思ったよ。
「姉さん、オレは事実を言ってるだけだ」
「違うでしょミネルビル、あなた自身が責任を感じてそれに負けそうなだけよ、負けちゃダメでしょ」
「そんな事・・・オレは強いんだ、負ける訳ねぇ」
「そうかしら?アタシにはそうは見えないわよ」
キョウコ姉さんがベッドの横に座り、オレの顔を抑えてジッと見てきた。
目を逸らせる事が出来ず、オレはすべてを見透かされてる気分だったよ。
「今のあなたはとても弱いわミネルビル」
「そ、そんな事は」
「いいえ弱いのよミネルビル、仲間を信じられない今のあなたはとても弱い、認めなさい」
「分かってるよ、認めないといけないのは分かってる・・・だからあの時、アルノとピュイはオレに回復魔法を使わなかったんだ」
ミノタウロスに飛ばされた時、オレとアルシュナに回復魔法をかけ、二人で戦うのがいつもの戦法だった。
それなのに、俺が動けなかったから二人はアルシュナに全てを賭けたんだ。
「オレが弱いからだ、全部俺が悪いんだよ」
「そうじゃないでしょミネルビル」
「何が違うんだ、オレが弱いからだろう」
「まったく、言ってあげなさいみんな」
レニーたちに話を振り、泣きそうな顔を何とか堪えて話して来たが、それはオレも無意識でやっていた事だった。
ミノタウロスの斧をくらった時、俺は自分の斧と体を使い、アルシュナが出来るだけダメージを受けない様にしていたんだ。
「後ろで見てた」
「だから良く分かる」
「そうなの、ミネルビルが庇ったからウチたちも動いたの」
「そういう事よミネルビル」
倒れた時、オレの斧が無かったのはその為で、ベッドの横に置かれた斧(相棒)は、確かに折れていた。
自分が死ぬかもしれない攻撃を引き受けたオレの姿を見たから、レニーたちも勇気が出たと言ってくれたんだ。
「あなたがいたからみんなも戦えたのよ」
「そうだったのか・・・だがオレは弱いんだ」
「あなたが弱いんじゃなく、ミノタウロスが強かったのよ」
格上との戦いだと最初から分かっていたことで、勝てたのは奇跡とキョウコさんが言ってきた。
本来なら死んでもおかしくなかったし、勝てたのはアルシュナの力だったが、その奇跡を起こしたのはオレと言ってくれたんだ。
「あなたの勇気ある行動が奇跡を起こしたのよミネルビル」
「だけど、アルシュナは強かった」
「そうね、だからみんなももっと強くなりましょうね」
これから、もっと訓練をしようと提案してくれて、オレは望むところだとやる気が沸き上がったんだ。
まだまだ教える事があって伸びしろもあるからと、キョウコさんはニコニコしていて、オレは楽しみになったんだ。
「でもね、まずは身体を治す事が先決よ、アルシュナもまだ起きないしね」
「あの力の反動なのか?」
「覚醒したばかりだからね」
アルシュナが勇者と聞いて、オレも焦っていたのかもしれず、キョウコさんはそんなオレの気持ちを分かってくれていた。
そして、アレストも心配した一人で、だからこそ倒れたアルシュナではなく、アレストはオレを運んでくれたんだ。
「やっぱ敵わねぇな」
ベッドに横になり、オレはそれしか言えなかった。
レベルが違うのもそうだが、人としても全然敵わなくて、これが大人になると言う事なのかと羨ましくなった。
「大人の階段を登れば、少しは変わるのかな」
ちょっと方向は違うが、落ち着いてるキョウコさんを見るとそう思えて来て、誰かいないかと考えた時、アレストの顔が浮かんだよ。
だが、オレの様な女が迫っても困らせるだけだし、そのおかげで冷静にもなれたんだ。
「変な方向になったが、もっと強くなれば良いんだよな」
訓練を頑張ると言うのがオレの答えで、早く身体を動かしたい気分で寝てられないと思ったよ。
それはオレだけでなく、向かいに寝てるレニーたちも同じで、傷が痛くても起き上がろうとしていたよ。
「レニーさっきはすまなかった、アルノとピュイもすまん」
「気にしない」
「落ち込むことはある」
「そうなの、ミネルビルも女の子だったの」
レニーの答えにはちょっと文句もあったが、それ以上に許してもらえたのが嬉しかった。
怪我を治したら、甘い物でも買ってやろうと思い、その場はそれで終わったんだが、オレが一番損害が大きかったよ。
「50000メロ!」
中金貨50枚になるほどの修理費を聞き、オレはベッドに倒れてしまった。
アレストが言うには、斧が修復不可能だからで、新しく買わなけれはいけなかったからだ。
「中金貨50枚はね、小金貨5000枚でその下は無いんだよ」
「そんな事は聞いてないし、それくらい知ってるし・・・どうしてそんなにするんだよ」
「だって、もっと強くなりたいんでしょ?」
「そ、それはなりたいけど・・・だからってそんな大金」
大金貨までいかなかっただけでも良かったとかアレストは言ってきたが、それこそどれだけ良い武器を買わせようとしているんだと思ったよ。
だが、アレストは本気で、今までの貯金を使うとか言ってきた。
「貯金って、そんなのオレはしてないぞ」
「僕が勝手にしてたんだよ、報酬から引いてたんだ」
「い、いつの間に」
旅をするならそれくらいは考えようとか、ここでも教育を受けてしまい、それで足りるならとお願いした。
それだけではなく、その武器に似合う強さを付けようとか訓練の大変さを理解した。
「大丈夫、ミネルビルなら直ぐに強くなれるさ」
「他人事に聞こえるんだが、オレ死なないよな?」
「そんな大変じゃないよ、ちょっと倒れて動けなくなるくらいだよ」
「こわっ!すっげぇ怖いぞアレスト」
それで強くなれるのなら、オレはアルシュナの横に立てる強さが欲しかった。
何でもするとその時誓い、オレは必至で訓練を始めたんだ。
アレストに運ばれてダンジョンを出て、オレは治療を受けた後そればかりを考えてベッドから起き上がれなかったよ。
「オレは強いと思ったのに、すっげぇ弱いな」
一番年下のレニーですら最後まで戦い、アルノとピュイはミノタウロスに一撃を与えたんだ。
それなのに、オレはアルシュナと一緒に一撃を与えただけで、その後は動けないで終わった。
「ミネルビル、元気出すの」
「そう、みんな頑張った」
「全員の勝利」
「お前たちはそうだろうよ、だがオレは違うんだ」
そんな事を言いたいわけじゃないのに、オレの口からはみんなを攻める言葉しか出てこない。
本当は、みんなで戦ったから勝利できたのも分かっていたが、それでもオレはみんなに酷い事を言うのが止まらなかった。
「お前らは、いつも後ろで魔法を撃つだけだもんな」
「ミネルビル、落ち着くの」
「レニーお前だって後ろから矢を撃つだけだろう、オレだけがいつも身体を張ってるんだよ」
「ミネルビル、らしくないわよ」
オレを止めたのは尊敬するキョウコ姉さんで、泣きそうなレニーたちを撫でて回ってくれた。
本当はオレの役目なのに、情けないと思ったよ。
「姉さん、オレは事実を言ってるだけだ」
「違うでしょミネルビル、あなた自身が責任を感じてそれに負けそうなだけよ、負けちゃダメでしょ」
「そんな事・・・オレは強いんだ、負ける訳ねぇ」
「そうかしら?アタシにはそうは見えないわよ」
キョウコ姉さんがベッドの横に座り、オレの顔を抑えてジッと見てきた。
目を逸らせる事が出来ず、オレはすべてを見透かされてる気分だったよ。
「今のあなたはとても弱いわミネルビル」
「そ、そんな事は」
「いいえ弱いのよミネルビル、仲間を信じられない今のあなたはとても弱い、認めなさい」
「分かってるよ、認めないといけないのは分かってる・・・だからあの時、アルノとピュイはオレに回復魔法を使わなかったんだ」
ミノタウロスに飛ばされた時、オレとアルシュナに回復魔法をかけ、二人で戦うのがいつもの戦法だった。
それなのに、俺が動けなかったから二人はアルシュナに全てを賭けたんだ。
「オレが弱いからだ、全部俺が悪いんだよ」
「そうじゃないでしょミネルビル」
「何が違うんだ、オレが弱いからだろう」
「まったく、言ってあげなさいみんな」
レニーたちに話を振り、泣きそうな顔を何とか堪えて話して来たが、それはオレも無意識でやっていた事だった。
ミノタウロスの斧をくらった時、俺は自分の斧と体を使い、アルシュナが出来るだけダメージを受けない様にしていたんだ。
「後ろで見てた」
「だから良く分かる」
「そうなの、ミネルビルが庇ったからウチたちも動いたの」
「そういう事よミネルビル」
倒れた時、オレの斧が無かったのはその為で、ベッドの横に置かれた斧(相棒)は、確かに折れていた。
自分が死ぬかもしれない攻撃を引き受けたオレの姿を見たから、レニーたちも勇気が出たと言ってくれたんだ。
「あなたがいたからみんなも戦えたのよ」
「そうだったのか・・・だがオレは弱いんだ」
「あなたが弱いんじゃなく、ミノタウロスが強かったのよ」
格上との戦いだと最初から分かっていたことで、勝てたのは奇跡とキョウコさんが言ってきた。
本来なら死んでもおかしくなかったし、勝てたのはアルシュナの力だったが、その奇跡を起こしたのはオレと言ってくれたんだ。
「あなたの勇気ある行動が奇跡を起こしたのよミネルビル」
「だけど、アルシュナは強かった」
「そうね、だからみんなももっと強くなりましょうね」
これから、もっと訓練をしようと提案してくれて、オレは望むところだとやる気が沸き上がったんだ。
まだまだ教える事があって伸びしろもあるからと、キョウコさんはニコニコしていて、オレは楽しみになったんだ。
「でもね、まずは身体を治す事が先決よ、アルシュナもまだ起きないしね」
「あの力の反動なのか?」
「覚醒したばかりだからね」
アルシュナが勇者と聞いて、オレも焦っていたのかもしれず、キョウコさんはそんなオレの気持ちを分かってくれていた。
そして、アレストも心配した一人で、だからこそ倒れたアルシュナではなく、アレストはオレを運んでくれたんだ。
「やっぱ敵わねぇな」
ベッドに横になり、オレはそれしか言えなかった。
レベルが違うのもそうだが、人としても全然敵わなくて、これが大人になると言う事なのかと羨ましくなった。
「大人の階段を登れば、少しは変わるのかな」
ちょっと方向は違うが、落ち着いてるキョウコさんを見るとそう思えて来て、誰かいないかと考えた時、アレストの顔が浮かんだよ。
だが、オレの様な女が迫っても困らせるだけだし、そのおかげで冷静にもなれたんだ。
「変な方向になったが、もっと強くなれば良いんだよな」
訓練を頑張ると言うのがオレの答えで、早く身体を動かしたい気分で寝てられないと思ったよ。
それはオレだけでなく、向かいに寝てるレニーたちも同じで、傷が痛くても起き上がろうとしていたよ。
「レニーさっきはすまなかった、アルノとピュイもすまん」
「気にしない」
「落ち込むことはある」
「そうなの、ミネルビルも女の子だったの」
レニーの答えにはちょっと文句もあったが、それ以上に許してもらえたのが嬉しかった。
怪我を治したら、甘い物でも買ってやろうと思い、その場はそれで終わったんだが、オレが一番損害が大きかったよ。
「50000メロ!」
中金貨50枚になるほどの修理費を聞き、オレはベッドに倒れてしまった。
アレストが言うには、斧が修復不可能だからで、新しく買わなけれはいけなかったからだ。
「中金貨50枚はね、小金貨5000枚でその下は無いんだよ」
「そんな事は聞いてないし、それくらい知ってるし・・・どうしてそんなにするんだよ」
「だって、もっと強くなりたいんでしょ?」
「そ、それはなりたいけど・・・だからってそんな大金」
大金貨までいかなかっただけでも良かったとかアレストは言ってきたが、それこそどれだけ良い武器を買わせようとしているんだと思ったよ。
だが、アレストは本気で、今までの貯金を使うとか言ってきた。
「貯金って、そんなのオレはしてないぞ」
「僕が勝手にしてたんだよ、報酬から引いてたんだ」
「い、いつの間に」
旅をするならそれくらいは考えようとか、ここでも教育を受けてしまい、それで足りるならとお願いした。
それだけではなく、その武器に似合う強さを付けようとか訓練の大変さを理解した。
「大丈夫、ミネルビルなら直ぐに強くなれるさ」
「他人事に聞こえるんだが、オレ死なないよな?」
「そんな大変じゃないよ、ちょっと倒れて動けなくなるくらいだよ」
「こわっ!すっげぇ怖いぞアレスト」
それで強くなれるのなら、オレはアルシュナの横に立てる強さが欲しかった。
何でもするとその時誓い、オレは必至で訓練を始めたんだ。
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