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51、新たな妹と妹だった女
しおりを挟むオーロラの笑顔は他の男に見せられないという理由で、唇を塞いで顔を隠すという行動に出たノアール。レオンはため息、ノエルは生暖かい視線。そしてもう一人は・・・何かを得たようだ。
それまで静かだったエリサが口を開いた。
「私、わかりましたわ!オーロラ嬢を、ぜひお姉様と呼ばせて頂きたいですわ!私が欲していたのは、素敵な殿方ではなく、好みの殿方に育て上げることのできる女性だったのです!憧れます!お手本がいましたわ!」
目をキラキラ輝かせて見ているのは、いつのまにかノアールからオーロラへと変わっていた。
「オーロラお姉様に教えを請いたいです!男を手玉にとる淑女になってみせますわ!」
「兄上、またオーロラ嬢の影響かな?変わった子が生まれたね」
「あぁ、オーロラ嬢は人の心を掌握するのがうまいらしい」
「私何もしてませんのに・・・」
知らず知らずにオーロラ信者が増えていく。そこへサロンに見知らぬ従者が入ってくる。
「エリサ王女、そろそろお時間です」
「もう!?もっと、オーロラお姉様とお話しがしたかったわ」
「エリサ王女、楽しかったですわよ。ノアールはあげれませんが」
「えぇ、もういりません」
「まぁ・・・」
「お姉様、またお会いできる事を楽しみにしていますわ!」
エリサは元気に帰っていった。
「いらないとか言われると俺なら傷つくぞ?」
「さすがの僕も落ち込むでしょうね」
ノアールはオーロラの以外の女性の言葉はどうでもいい。というより耳に届いていない。なので、何も気にならない。
ノエルがふと、オーロラを見る。
「そうだ、オーロラ嬢、妹君の事だけど、ありがたく使わせて貰っているよ」
「いいえ、こちらこそ、扱いに困るので助かりましたわ。もう妹ではありません」
「まさかオーロラ嬢があんな提案してくるなんてね」
オーロラは夜会にて貴族牢に入れられていた妹ルーナを、第二騎士団へと下賜りしたのだ。
第二騎士団は、戦場の前線に出たり、暴力沙汰などの現場にも向かう。そういうことが多いため、戦いの後に気が昂ったままだと、気性が荒くなりがちで、女性に無貞を働いたり、娼館で花を買っても乱暴に扱ったりと問題になっていた。
その性のはけ口としてルーナを第二騎士団へと贈った。
「騎士達は喜んでいるよ。こういうのって、手を上げて喜んで行く女性なんていないからね。ルーナ嬢は見目もいいし、騎士達は気に入ったみたい。おかげで戦場から引き上げる騎士の乱暴さも軽減されたみたいだしね」
「それはようございました。男が好きなあの子には良い環境なのかもしれませんわ」
「あぁ、若い騎士もたくさんいる。彼らも喜ぶし、ルーナ嬢は満足する。いい事だらけだ」
ノエルがにこっと笑うが、性格を知らない者には爽やかな好青年にしか見えないだろう。ルーナをノエルに差し出したのにはわけがある。
レオンは第一王子で、間も無く立太子する事が決まっている。王太子となり、いずれ国王となるが、国を統べる力と能力があるかと言われればそうでもない。
能力、人望、王としての資質、どれをとってもノエルの方が勝っているのだ。ノエルはまさしく、非の打ち所がないという事。
しかし、ノエルを王太子にし、レオンをいずれ臣籍降下させるとなると、傀儡の王として祭り上げようとする貴族が出てくる恐れが高い。
第一王子であるレオンをそのまま国王にする為に王太子とし、ノエルがうまく立ち回っていく方が、国として安泰というわけだ。
ノエルは政務でも、外交でも手腕を見せるが、それは騎士団でも言える事。その為、騎士団の事情もよく知っているのだ。
今回ルーナを第二騎士団に贈った事で、問題になっていた事を軽減できた。その後のルーナがどうなっていくのかは、ノエルのみ知るところである。
「半年ももてばいいんじゃないかな・・・」
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次回
独占欲の塊になってる・・・
一体これは誰なんだ・・・
応援ありがとうございます!
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