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53、最初からそう決めていた
しおりを挟む食事も終わり、そろってお茶をしながら話していた。
「公爵様から、ノアールを養子にして、いずれはオーロラ様の夫として迎えたいと提案があった時は驚いたぞ」
「驚かせたのは悪かったと思いますが、俺自身も聞かされたのは一週間前です」
「公爵様の中ではだいぶ前から決まっていたような口振りだったぞ?」
「え?そうなんですか?」
ノアールは、オーロラの顔を不思議そうな顔で見る。相変わらずオーロラの定位置はノアールの膝の上だ。
「あぁ、それはね、私が頼んでおいたから」
「オーロラが?」
「えぇ、あなたが屋根の上から落ちた翌日に」
「なんだ、ノアール、屋根から落ちたのか?」
「えぇ、落ちました・・・」
「何やってるんだ・・・」
「お義父様、ノアールはドジをしたのではありませんのよ。王家での仕事に忙殺されていて、疲れがピークだったのでしょう。気を失ってそのまま屋根から庭に落ちたんですの」
「そうでしたか・・・しかし、なんでまた屋根の上なんかに・・・ん?どこの屋根だ?」
「あぁ、公爵家の別邸です」
「公爵家の別邸!?忍び込んだとでも言うのか?」
「お義父様、第二王子のつまらない頼み事のせいですわ。私がデビュタントもせず、社交界に姿を現さなかったことで、どんな女か気になったのでしょう。密偵として、ノアールが深夜に公爵邸に訪れたんですの」
「ノアール、お前城で侍従をしていたんではなかったのか?」
「王家の影ですわ。表向きと裏の顔がありますのよ。それだけノアールは能力が高いという事です」
「父上、別に影と言っても、暗部の者とは違う。暗殺とか人に危害を加えるものではなく、調査などがメインだ」
「そうなのか・・・まぁ、よくわからんが、公爵家に密偵に入って、屋根から落ちて怪我をして、保護されてといういきさつということですね」
「そうですわ。その・・・屋根にノアールがいる気配に、私の影が気付きまして、見に行ったんですのよ。私、月夜に見たノアールに一目惚れして、この人を夫にするって決めましたの」
オーロラの言葉に父も兄もノアールさえも驚いてる。
「そんなに前から俺の事・・・」
「そうよ、だから、言ったじゃない?公爵家に来なさいって言ったけど、使用人としてとは言ってないって。最初からそのつもりだったんだもの。ノアールに出会って、この人を夫にするって決めて、姉と妹をどうするか、私が公爵家を継ぐならと思ったのよ。だったら全て片付けておきたいじゃない?お姉様はサイラス様をお慕いしていらっしゃったから、二人を一緒にして差し上げたい。そしたらサンライズ公爵家を綺麗にしてあげないといけないと思いましたの。その前にレオン殿下に邪魔に入られても困りますしね。ノアールを何の憂いもなく公爵家で迎え入れるために、セシル殿下にも表舞台からは消えて頂きたい。国王に恩を売っておけば、ノアールが知り得る城の機密も多めに見てもらえる。尚且つレオン殿下に婚約者を見つけてあげたら感謝される!完璧でしょう?」
「・・・全部計画してた事だったのか・・・」
「えぇ、でも、あなたを養子縁組するっていうのは、あなたがイースブール男爵家の三男だと聞いた時。あぁ、きっとこの人は、爵位を気にして、気持ちを・・・本音を言わないわってわかったの。同じ立ち位置に立たせたかったの」
「それであの時、やたらと家の事とか兄弟の事とか聞いてきたのか」
「そういう事よ」
「ノアール、お前の未来の嫁はすごいな・・・」
「ノア、絶対に逃すなよ」
「逃すか。もう、俺はオーロラがいないと生きていけないからな。こんな俺でも必要としてくれて、どんな条件のいい男が現れたって俺を選んでくれる。こんないい女もういない。俺が感情を出さなかった、気持ちを言葉にしなかったことでオーロラが離れていくぐらいなら、どんなに格好悪くても全部さらけ出すって決めたんだよ」
ノアールはオーロラを見つめて微笑んだ。
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次回
これが本来のノアールですわ
だからこっちを見ろ!!
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