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60、ノアールは優秀
しおりを挟む次期公爵当主としての教育が始まって二週間が経った頃、終わる時間を見計らってオーロラが本邸を訪れてた。
「進み具合はどうです?」
「あっ!オーロラ!」
ノアールはすぐさまオーロラに抱きつく。
「あら、邪魔してしまいました?」
「ははっ、大丈夫だ。まぁ、座りなさい」
オーロラをいつものごとく膝にのせ、ノアールは公爵の向かいのソファに座る。
「ノアールはブレないな・・・」
「オーロラを愛でてないと嫉妬されてしまうので」
ノアールはニコニコしている。
「オーロラが嫉妬?」
「先日ちょっとありましてね。いつもこの様子でしょう?私がノアール専用のぬいぐるみのようだと言ったら、欲しいと言われましたのよ。常に一緒に連れ回すような言いぶりでしたので、だったら私もノアールのぬいぐるみを作るって言ったら、嫌がったんですの」
「なんで嫌がるんだ?」
「オーロラが俺じゃなくてぬいぐるみを愛でるって言うんです・・・嫉妬してしまうじゃないですか」
「それで、私の気持ちがわかったかしら?って言ったら、私が嫉妬した事が嬉しかったらしく、ぬいぐるみは嫉妬してくれない、抱きしめてくれない、ぬくもりがないんだそうなんです。ですから、以前に増してこの状況ですわ」
「・・・お前達、話題に事欠かないな」
「お褒め頂き光栄ですわ」
「いや、褒めてないが・・・まぁいい、ノアールは中々優秀だ。知らない事は多いが、飲み込みが早い。それに元々頭がいいのだろう、さすが城で侍従をしていただけの事はある。セシル殿下ではなくて、レオン殿下あたりの側付きであったなら、いずれは殿下の不足を補える存在になっていただろうと思う。王家も惜しい人間を逃したな。オーロラはさすがだ。見る目がある。私が婚約者選定をして当てがっても、ノアール以上はなかったかもしれん」
「それはよかったですわ。私に対してだけではなく、公爵家へのプレゼントとして頂いた事になりましたわね。陛下には改めてお礼しないといけないわ」
「礼はいいが、優しめので頼むよ」
「私が優しいのは、大切に思う方にだけですわ。まぁ、それも今は殆どノアールにですけれど」
オーロラはノアールの顔を優しい目で見つめる。
「ノアールが羨ましいな」
「お父様、それは禁句・・・あら?ノアール平気ですの?」
「ん?ノアールがどうかしたのか?」
「ノアールの事が羨ましいっておっしゃる方に、殺気を飛ばして威嚇するんですの」
「威嚇?・・・あぁ、確かに、前に殺気を向けられた事があったな」
「義父上は、オーロラを俺から奪い取ることはないですから、不安には感じません。俺の場所に誰かが取ってかわろうとするなら全力で牽制するまでです」
「そう言う事か・・・だからあの時私に殺気を向けたのだな」
「あの時・・・あぁ、書類にサインした時ですわね」
「そうだ。養子縁組の話を切り出した時だ。流石に肝が冷えたよ」
「あれは、俺が養子に入るということは、男子がいないこの家では後継になるという事。公爵家の当主になると言うことは、オーロラはどこかの嫁に行くことになる。そうすれば、俺は別の女を嫁にしなくてはならない。公爵家当主の座を手に入れても、オーロラが手に入らないなら、そんなものには何の価値もありません。だからあの時、義父上が俺からオーロラを取り上げるつもりだと思って敵意を向けたんです」
「お父様、命は大事になさってくださいね」
「もう、取り上げようなどとは思わん・・・だからこそ、お前達の婚約を早く周知した方がいいな」
「そうですわね、お父様、釣書の数に嫌気がさしているのでしょう?」
「その通りだ」
「釣書?」
「あぁ、先日の夜会に今まで表に出てこなかったトワイライト家の次女が出てきた。どんな女かと思えばこの見目だ。それに加えて、長女のセレーナがレオン殿下の婚約者候補に名前が上がっていた事も相まって、オーロラに釣書が集中し、一気に増えたのだ。人前に出るまでは全くだったのが、今や三桁を超えている」
途端にノアールの顔が険しくなる。
「安心しろ。オーロラのお眼鏡にかなう男は、もうお前しかおらんのだ。名前だけ確認して断りの返事を出す毎日だよ」
「そうよ、ノアール。お父様には、面倒だから、釣書はわざわざまわさないでって頼んであるの。だから私の手元には一枚もきてないわ」
「・・・よかった」
ほっとして力が抜けたノアール。
「それに、大きなニュースもある」
公爵が姿勢を正して話し出した。
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次回
また、何か企んでいるのか?
ノアール、信用は無くすなよ?
応援ありがとうございます!
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