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73、嫁の様子がおかしい
しおりを挟む二人が夫婦となり、少し経った頃。
オーロラがおかしい。ノアールは、少し前からオーロラの様子に違和感を覚えていた。
「ノアール、ちょっと待ってて、ここは今、入ってきちゃダメ!」
「どうして・・・一緒にいたい」
「ちょっとだけ待ってて、出てって!」
バタン
オーロラの部屋を訪れたノアールは、有無を言わさず追い出されてしまった。ショックの余り、その場に立ち尽くし一歩も動く事ができなかった。しばらくしてもオーロラは部屋から出てこない。段々と元気がなくなっていったノアールは、壁を背にずるずるっと力なく滑り、自身の膝を抱えて頭を下げ座り込んでしまった。一時間ぐらいして、部屋から出てきたオーロラは目を見開いて驚いた。
「ノアール!?何してるの?」
「・・・」
ノアールは眠ってしまったようで、反応がない。
「ノアール?・・・眠ってしまったのね」
オーロラはノアールの前に膝をつくと、静かに抱きしめる。
「どうしてこんなところで眠ってるの・・・出てってなんて言ってごめんなさい」
しばらく待っても反応はない。オーロラは、横に並ぶように床に座ると、ノアールに身体を預けた。気付けばオーロラも眠ってしまっていた。
「・・・ん・・・寝ちゃった・・・」
オーロラが目を覚ますと、二人を包むように毛布がかけられていた。オーロラは使用人の誰かが気付いてかけていったのだと思った。ふと、ノアールを見ると、ニコニコしてこちらを見ている。待ち疲れて眠っていたのかと安堵した。
「オーロラ、お腹すかないか?食事にしよう」
「えぇ、そうしましょう」
それから数日後の事。
「あれ・・・オーロラがいない」
ノアールは本邸から戻ると、サターン邸の中でオーロラを探し回っていた。どの部屋を探しても見つからず、あとは調理場や使用人が作業をする為に使用するスペース。向かおうとした方向からオーロラが現れた。
「ノアール、戻ってたのね」
「あぁ、さっき戻ってきて、オーロラを探してた・・・いないなぁって」
「そう、ねぇ、お茶にしましょう」
「あぁ」
なにか違和感を感じた。しかし、今は気付かないフリをした。
それからまた数日が経った日の事。本邸から戻ると、またオーロラが見つからない。先日、思わぬところで見かけたオーロラが気になって、まさかと思いながらも自然とそちらに足が向いていた。
「ノアール?」
「へっ・・・」
ノアールは、やっぱりこっちだったと思いつつも、オーロラがそのまま手をとって歩き出す。
「ノアール、クッキーがあるのよ。お茶にしましょう?」
「あ・・・あぁ」
オーロラに促されその場を離れていくも、この場所から遠ざけられているような感覚に陥った。
そしてまた、オーロラが見つからない。ノアールは、まっすぐ目的の場所に向かう。
「・・・え・・・なんで」
ノアールは厨房の奥で、料理長と親しげに話すオーロラが目に入った。絶望した気分だった。オーロラは料理長が好きになり、密かに調理場で会っているのか。ノアールはそう捉えた。声をかけるという選択もできただろうが、それどころではなかった。気付けば無我夢中で走っていた。
「なんでっ・・・いやだ・・・オーロラ・・・俺の事・・・いらないの?・・・いやだ・・・他の男と・・・なんで・・・いやだ!!」
自身の部屋に駆け込むと、寝台に飛び込み、シーツにくるまる。
「おーろらっ、うぐっ、ひくっ、俺いらなくなったの?・・・いやだ・・・おーろら・・・うっ」
嗚咽を漏らしながら泣いていた。気付けば泣き疲れて眠ってしまっていた。
(・・・あ・・・寝てた・・・)
コンコンコン
ガチャ
「ノアール寝てるの?夕食にしましょう?」
「体調悪いみたい、いらない」
「大丈夫?熱は?」
「ない」
「そう・・・後でスープかなにか持ってくるわ」
「いらないっ!」
「・・・ノア・・・ル?」
オーロラが声を掛けるも、ノアールはそれ以上何も答えなかった。
そのまま翌朝までシーツにくるまったまま出てこなかった。
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次回
気付かなかったのか?
なんでこんなことに・・・
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