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5、憤る侯爵

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「陛下、急な申し出にも関わらず、お時間頂きありがとうございます」

「いや、構わんが、どうしたのだ?」


リシェリアが家を出た日、侯爵は国王に謁見申請をし、翌日王宮へと出向いていた。


「陛下、まずは人払いを」

「人払い?・・・うむ」


国王に促され、応接室から侍従や護衛騎士などが退出していく。


「それで、話はなんだ?」

「えぇ、本日は急ぎお願いがございます・・・アイスフォード殿下とリシェリアの婚約を無かったことにして頂きたい」

「侯爵、急に何を申しておるのだ!」

「私もこんな事言いたくはありませんでしたよ。しかし失った娘が願ったのです」

「失った・・・だと?リシェリア嬢に何かあったのか!」

「リシェリアは・・・傷を負ったと、自分は王子妃になる資格はないと、姿を消しました」

「行方がわからぬと言うのか!?まさか他の者と駆け落ちしたとでも言うまいな?」

「それでしたらどんなによかったか!!!」


侯爵は怒気を露わにし、国王に怒鳴りつけた。


「あなたの息子に、王子に、リシェリアは・・・」


侯爵は怒りに震える拳を強く握り締め、言葉に詰まった。


「アイスフォードが何かをしたと言うのか?」


国王は、原因が自身の息子であると言う侯爵に怪訝な顔をする。


「アイスフォード殿下ではありません。昨日、王子妃教育を終えて、娘は泣き腫らした顔で屋敷に戻ってきました。親である私達に話すのがどれだけ辛く、恥ずかしかった事でしょう。フラムウェル殿下に純血を奪われたと・・・」

「フ、フラムウェルが・・・何故アイスフォードではなくフラムウェルなのだ・・・」

「そんなのどうだっていいですよ!フラムウェル殿下に襲われ純血を奪われた後、事もあろうか側近二人も無理矢理襲ったそうですよ・・・リシェリアが何か悪い事をしましたか?あの子は毎日、頑張っていました。アイスフォード殿下の隣に立てるようにと、努力を欠かしませんでした。そんなあの子がなぜこんな目にあわなければならないのです!娘は、王家と侯爵家の醜聞になると、自ら姿を消しました。ブルスト侯爵家には最初から娘は一人しかいなかったと言ったんですよ。なぜ娘がそんな仕打ちを受けなければならんのです!!」


事の顛末を聞いて国王は言葉を無くしたが、一つの疑問が浮かんだ。


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