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12、彼女はどこから
しおりを挟む手当てが終わり、ロストが疑問を投げかける。
「ところで、ご令嬢はどうして怪我を?」
「森を歩いてて・・・」
「森で?なぜそのような所に?お一人ですか?」
「はい、一人です。帰る場所が・・・ありませんので」
リシェリアは寂しそうな顔で俯く。
「ご令嬢、名前を伺っても?」
「リシェリア・ブル・・・リシェリアです!」
「リシェリア嬢ね、帰る場所がないとはどういう事かな?家出でもしてきた?」
「それは・・・すみません、言えません」
リシェリアは静かに首を横に振る。
「ロスト医師、矢継ぎ早にいろいろ聞くな・・・何か事情があるのだろう?ところで、帰る場所がないなら、今後どうするんだ?」
「それは・・・考えていません。あの時、狼に一思いに食べてもらえれば死ねると思ったのです。死ぬつもりだったもで・・・何も考えていませんでした」
アリエルとロストは、思いつめた様子のリシェリアに、かける言葉が見つからず無言になってしまった。
「私は役に立たない女です。令嬢としての役割も、娘としての役割もできませんでした。もう帰る場所なんてありません・・・」
「じゃあ、質問を変えよう。リシェリア嬢は、なぜ辺境まで来られたのかな?」
「・・・遠くに、出来るだけ遠くに行きたかったんです。本当は国を出たかった。でも、あの森で力尽きてしまって」
「うむ・・・王都に住んでたのかな?」
「えぇ、そうです、王都から離れたくて」
「そうか・・・遠くまで大変だったね・・・ところで、寝泊まりするところはあるのかな?」
「いえ、ありません」
「うん、困ったね・・・騎士団長、女性騎士の宿舎は空いてたか?」
「今は埋まっている。元が数が少ないからな。滅多に空くことはない」
「じゃあ男性騎士の独身用の宿舎しかないと言うことか・・・」
「いや、さすがにこんな若いご令嬢を野獣の檻には入れられん!」
「じゃあ、どうする?」
アリエルとロストが話し合っているが、リシェリアは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。一度は死ぬことを考えた。何の当てもなくただ遠くへと足を運んだ。たどり着いた先で心配をかけてしまっているのだ。
「あ、あの、お気になされずともいいですよ」
「いや、良くない。ここは王都ではない。粗暴な奴等が多いのだ。こんな外見の俺が言うのもなんだが、君には危なすぎる!」
「いえ、しかし・・・」
するとロストがいい事を思いついたと割って入ってくる。
「団長の屋敷に滞在してもらえばいいんじゃないかな?」
「はぁっ!?俺の屋敷に!?」
「決まりだね!」
ロストが勝手に決めてしまった。
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次回
【アリエルside】ロスト医師よ、今回ばかりは貴殿を称賛したい!
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