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47、アイスフォードの心
しおりを挟む泣き叫ぶアイリスに近寄って、アイスフォードが話しかける。
「君は・・・ご令嬢としては完璧だったのかもしれない。爵位も優秀さも。そして君はとても美人だよ。でも、私の側にいる女性としては、私には何も響かなかった。気の休まる場所ではなかった・・・
いなくなって初めて気付いたんだ・・・リシェリアがどれだけ大事な存在だったか。リシェリアの頑張りと気遣い、そして私に寄り添っていてくれた事。
アイリス嬢、今の君の気持ちはよくわかる・・・私もね、手に入れたい、愛した女性の心が手に入らなかった。リシェリアは今、叔父上の腕の中だ。彼女の居場所はもう、私の隣ではないのだ・・・
行方不明になっていたリシェリアを辺境で見つけた時は心底嬉しかった。神が味方したと歓喜したよ。彼女は笑っていたんだ。しかし、私には見せたことのないような、心からの笑顔で。辺境での暮らしがどれだけ彼女にとって幸せなのか一目で理解したさ。その時は・・・悔しかった。私は引き出せなかった表情だ・・・
だが、私は何でもある王都にいた方が、きっとリシェリアは幸せになれると信じて疑わなかった。失った彼女をもう一度取り戻せば元に戻れると思ったよ。
彼女を辺境の屋敷から攫って、無理矢理連れ帰ろうとした。いくら話しても首を縦には振ってくれなかった。私の知る彼女なら、いつでも寄り添ってくれて、私の話す事に意義など唱えることはなかった。しかし、彼女は変わった。強い意志を感じた。
心が手に入らないなら、身体を手に入れればいいと・・・私もフラムと同じ事をしようとした・・・まぁ、私は叔父上に遮られ、未遂に終わったけどね・・・」
いつしかアイスフォードの瞳からは涙が流れていた。
「リシェリアは、叔父上の腕の中にいる。私ではない。私の隣には・・・リシェリアはいない。あんなに素直に笑って、あんなに感情を露わにして、あんなに甘えて・・・何一つ私は知らない・・・何一つ見せてもらえなかった。辺境の環境が良かったんじゃない。叔父上がよかったんだ。そう知って打ちのめされた。必死に王都に帰ろう、俺とやり直そうと言った。でもね、目の前で振られた・・・夫にしたいのはアリエル・モーガンただ一人だと・・・」
アイスフォードはアリエルとリシェリアの方を向き、二人に真剣な瞳を向けた。
「叔父上、そしてリシェリア・ブルスト侯爵令嬢、大変すまない事をした、この通りだ」
アイスフォードは深く、深く礼をした。そして頭を上げると、アリエルの顔をしっかりと見つめた。
「許してくれとは言わない。謝っても許されない事をした」
そして、自身の父である国王に向き直る。
「父上、私、アイスフォード・アルタイルは許されない罪を犯しました。よって、王位継承権を放棄します」
「ア、アイスフォード、何を言うのだ!」
「こんな人間が、未来の国王など、誰がついてきてくれましょう・・・もちろんフラムウェルもです」
アイスフォードの瞳には決意の色がしっかりと見えた。
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次回
【アリエルside】
皆に知れ渡ってしまっな・・・まぁ、本人が覚悟した事だ
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