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58、リシェリアの体調不良
しおりを挟む「あぁ・・・今日も腕の中にリシェがいる」
アリエルは自室の寝台で目が覚めると、側にリシェリアがいるかどうかを確認する。今だにリシェリアが自身を選んでくれた事、婚約者になった事、まもなく本当の夫婦になれる事など、全てが夢ではないだろうかと思ってしまう時がある。目が覚めたら、全てが現実にはなかった事と、夢が覚めてしまわないか不安なのである。アリエルにとって、国王になる事よりも、リシェリアが側にいてくれることの方が何よりも大事なのである。
「・・・あるさまぁ・・・」
「リシェ?・・・なんか、声がおかしく・・・ん・・・熱いな、ちょっと待ってろ」
アリエルが寝台から出て、メイドのフローラを呼ぶ。
「おはようございます、どうされました?」
「リシェが熱いんだ。熱があるかもしれん」
「それは大変です!陛下に移ってはいけませんから、リシェリア様をお部屋へ移動させましょう」
「いや、リシェはこのままでいい。このまま俺の部屋に置いておく。とにかく医者を呼んでくれ」
「はい、かしこまりました」
「風邪のようですな。特に心配はいりませんが、安静にしておかれるのが良いでしょう。お薬を出しておきます」
「あぁ、すまんな」
アリエルの部屋の寝台に寝かせられたままのリシェリアは、不安な顔をしてアリエルを見上げる。
「あるさま・・・」
「リシェ、どうした?」
アリエルは寝台に腰を下ろすと、リシェリアの頭を優しく撫でた。
「ごめんなさい・・・こほっ」
「謝らなくていい。医者に薬を出してもらった。飯は食えそうか?」
「・・・はい・・・こほっ、こほっ」
「辛そうだな・・・よし、俺が食わせてやる」
アリエルはリシェリアの体を起こすと、後ろから包み込むようにして抱きしめながら、スプーンでリシェリアの口に食事を運ぶ。
「ほら、あーん」
「あーん・・・おいしいです」
「もうちょっと食え、あーん」
「あーん・・・」
「薬も飲んだな。よし、今日はゆっくり寝てろ、いいな?」
「・・・はい」
元気がないリシェリアが気になりつつも、アリエルは執務に向かった。少しでもリシェリアの近くにいたいと、いつも以上に執務を早く片付けた。
「リシェ?・・・寝てるな」
アリエルはそっと寝台に入ると、リシェリアを抱きしめた。しばらく寝顔を見つめていたが、気付けばアリエルも眠ってしまっていた。
夕方目を覚ますと、また飯を食えと、アリエルの世話焼きが始まった。
「あるさまに・・・うつって、しまいますよ?」
「大丈夫だ、俺の身体は頑丈にできてるからな。風邪なんか引いたことないしな」
そしてまた、夜はリシェリアを抱きしめて眠りについた。
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次回
あーんして、あーんして、あーんするんだ!
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