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国王との深夜のお茶

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レイドルートの入れたお茶の暖かさに、ローゼリアが安堵の息を漏す。ローゼリアの頬が少しばかり上気したように思えた。


「どうだ?」

「とってもおいしいですわ」


ローゼリアが嬉しそうに微笑んでいた。ローゼリアの笑顔が戻った事に、レイドルートはほっとしたのと同時に、心に温かいものを感じていた。このまま寝かせてやりたいところだが、今後の事を話さなければきっと同じ事を繰り返すことになりかねない。レイドルートは、緊張しつつも真剣な表情でローゼリアを見つめる。


「ローゼリア嬢は・・・その・・・見てしまったのだろう?」

「・・・殿下の部屋での事・・・ですよね?」

「あぁ・・・本当に愚息がすまない」


レイドルートはがばっと頭を下げた。


「へ、陛下!おやめください、何も陛下が謝る事では!」


レイドルートがゆっくりと頭を上げると、気遣わしげな表情のローゼリアが目に入った。


「ローゼリア嬢が義娘になるのを楽しみにしていたのだがな・・・」

「誠に申し訳ありません」

「ローゼリア嬢が謝る事ではないぞ?」

「いえ、私にもっと魅力があれば、殿下が他に気を取られることもなかったのだと思いますわ。全ては私の至らぬさ故です」

「・・・これ以上魅力が増してどうするんだ・・・」

「えっ?」

「あ、いや、こっちの話だ。だが・・・ローゼリア嬢と、ライモンドとの婚約をこのままにしておくわけにはいかないな」

「・・・それは・・・私が殿下の婚約者から降りるという事でしょうか?」

「そう・・・なるな」

「・・・そうですか・・・これまで長い間妃教育を頑張って受けてきました・・・グリンベル夫人に申し訳ないことをしてしまいますわね・・・でも、大丈夫ですわ。ミレーヌ様なら、きっと妃教育など簡単にこなされてしまいますわ。何より、殿下からの寵愛を受けていらっしゃるのですもの」


微笑むローゼリアだが、その笑みはどことなく影を見せ、それが本心ではないと訴えかけているようにも見えた。


「ローゼリア嬢はその・・・ライモンドのことを愛しておったのか?」

「・・・?愛・・・ないですね」

「・・・はっ?全くか?」

「えぇ、いずれこの人が夫になるのだと、子を設ける相手になるのだと、なんだか自分の事ではないような感覚でしたわね。まるで他人事のような・・・」

「そ、そうか・・・そうなのか・・・」

「はっ、も、申し訳ありません・・・陛下の唯一の御子息であらせられるのに」

「・・・いや、いい・・・」


自分の子に対して気持ちがないなど言われ、気分を害したかと思って伺ったレイドルートは、思いもしない表情をしていた。少し俯き加減に視線を外したレイドルートの表情は、どこか嬉しそうな表情だったからだ。









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『好きなのは貴方じゃない』





「お前の嫁ぎ先が決まった」

侯爵である父がそう言った。

スティファニアは、その時絶望で崩れ落ちそうになる。

想い描いていた未来はもう来ない。

諦めを抱いて辺境に来ると、使用人みんなが親切でとっても居心地がいい。だが、夫になった男爵にはひと目もかからないまま時間だけが過ぎていく。


「見ない顔だな、新入りか?」


夫は私ではない女を愛している。だから必死に心を保とうとした。


私が好きなのは貴方じゃない。
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