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17、あなたは私の騎士

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翌朝、バージルはミーティアのいるサファイア宮へと向かった。

コンコンコン。

「どうぞ」

「失礼します、第二騎士団バージル・ユリシールが参りました」

「ジル!!」

「ふっ、今日も元気だな、ティア」

「だってバージルに会えたんだもの」

「それは光栄でございます」

バージルはわざとらしく言ってお辞儀をする。

「護衛引き受けてくれたのね」

「あぁ」

「わたくし、今日から滞在されるライアン殿下嫌いなのよ」

「なんで嫌いなんだ?」

「覚えてるの、10年前のお茶会でお前だけ名前が違うって言われたの」

「ああ、あれその王太子殿下だったのか」

「ええ、隣国とは親交も深いから、お茶会や夜会、式典なんかに互いに参加する機会が多いの。だから殿下に会いたくなくて、一切参加したくないって断り続けてたのよ。なのに、何で今更・・・」

「そうだったんだな」

「だから、せめてジルに側にいて欲しかったの。他の護衛騎士じゃダメだわ!」

ミーティアは懇願するような表情でバージルを見つめる。

(ちょっと・・・マジ・・・上目遣いのそれはダメだろ・・・)

「・・・ふぅ」

一息ついてバージルは床に膝をつき、ミーティアの手をとった。

「ティア、俺を頼ってくれて嬉しいよ。俺は王太子殿下に抗う権力は持ち合わせていない。だが・・・」

もう片方の手で剣を抜き、ミーティアの手に持たせる。

「守ることはできる・・・ティア」

ミーティアは剣をゆっくり持ち上げ、バージルの肩にかざす。

「第二騎士団バージル・ユリシール、我、ミーティア・レクノールの盾となり、剣となりなさい」

「仰せのままに。バージル・ユリシールはミーティア・レクノール王女殿下に忠誠を」

数秒の沈黙の後。

「俺をティアの騎士にしてくれてありがとう」

「ジル・・・ジルはずっとわたくしだけの騎士様だったわよ、これからもね」

騎士の忠誠をたて、お互いの気持ちを確認した二人に侍女が声をかける。

「ミーティア王女殿下、隣国よりライアン・ガルシア王太子殿下が到着されました。謁見の間へ」

苦い表情をするミーティアに気付き声をかける。

「大丈夫だ、俺がいる」

「うん!」

たった一言で笑顔になれる。今のミーティアには、それが必要だった。

10年前に負った傷は大きすぎた。まだ5歳だったミーティアには、姉二人との違い、両親からの愛情、周りからの視線、全てが信じられなくなる程に、たった一つの出来事が自身に暗い影を落とした。

あの時、バージルとの出会いがなければ、今の前向きなミーティアはいなかった。

それだけ、バージルの言葉はミーティアに響き、勇気を与えるのだ。




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