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公爵令嬢ナディアに恋した伯爵令息
届く花と心の疲れ
しおりを挟む泣き疲れて眠ってしまった翌朝の事。
「お嬢様、お花が届いておりますよ」
「ありがとう、飾ってくれる?」
「では、こちらに」
「この花・・・見た事ない花だわ」
「えぇ、何という花でしょうね?」
そして翌日も。
また次の日も。
「お嬢様、名前も書かれていない花なんて、なんだか気味悪くないですか?」
公爵家のメイドは、この花が誰から贈られてきているのかを知らないため、気味が悪いと言い出した。もちろんナディアは誰からのものかわかっているので、気味が悪いとは思ってはいない。
「大丈夫よ、花に罪はないわ」
そして次の日も・・・
数日続けて届く花は何という花なのか。気になったナディアは書庫へ向かった。
「あ、あったわ。植物図鑑」
部屋に戻り、挿絵の花と見比べていく。
「これ・・・かしら。リナリア・・・この恋に気付いて・・・」
数日贈られてきた花は、リナリアという小さな花をたくさんつける品種だった。派手さはなく、可愛らしい印象だ。花言葉はこの恋に気付いて。送り主はもちろんあのマルクスだ。
(マルクス様、意味を知っておいでなのでしょうか?もしご存知なければ、あんな素敵な方から贈られたら・・・勘違いしてしまいますわ・・・」
その後、リナリアの花が毎日贈られ、気付けば三カ月経っていた。
「さすがにお礼を言わないと・・・でも、どうしてお名前を書かれないのかしら?」
リナリアの花を見つめて考えていた。
「・・・個人的に贈っているのが皆にわかってしまうと、余計な噂が立ちますもの・・・マルクス様はお困りになるわ・・・あくまで王太子殿下に代わって詫びをという事ですもの・・・勘違いはいけないわ」
その後も縁談の釣書が届き、父である公爵も婚約を纏めようと意欲的になってきていた。
「あれもだめ、これもだめ・・・何が気に食わんのだ!お前は一度婚約破棄された傷物だぞ?選べる立場ではなかろう!」
「お相手の方が気に入らないのではないのです・・・婚約はまだ考えられません・・・」
ここしばらく、毎日同じやり取りを繰り返している。
(もう・・・辛いわ・・・どこか遠くへ、誰も知らない場所へ・・・行けたらいいのに)
公爵の苛立ちをぶつけられるたび、ナディアの心は沈んでいった。もう、何も受け入れられない。もう、何も考えたくないと。
「お嬢様、花が届いております。毎日熱心な方ですね・・・もう三カ月ほどですか・・・」
「・・・そうね」
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次回
今日でリナリアは終わりです
応援ありがとうございます!
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