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王太子アルフレッドの新たな婚約者
倒れた理由と諦め
しおりを挟むエリアナが倒れて一月が経とうとしていた。エリアナ付きのメイド達もさすがに不憫に思えてきた。
「ねぇ・・・」
「はい、妃殿下、いかがされましたか?」
「次に殿下がいらっしゃったら、中にお通しして」
エリアナはメイドにアルフレッドを迎え入れるように頼んだ。
「これをエリアナに・・・」
アルフレッドはいつものように手紙をメイドに預ける。
「お預かり致します。王太子殿下、今日は叫ばないでください」
「なぜだ・・・エリアナに何かあったのか!?」
「違います、妃殿下がお会いになられると」
それを聞いた瞬間、アルフレッドは勢いよくサファイア宮の中へ駆け込んでいった。
バタン!!
「エリアナ!!」
「殿下・・・ご心配おかけしました」
「・・・よかった・・・」
「・・・殿下?」
「生きた心地がしなかった・・・今日は叫ぶなとメイドから言われて・・・何かあったのかと思った・・・エリアナに会えないのが堪える・・・」
床に膝をつき、寝台にクッションを背にして座るエリアナの足に頬を寄せる。腰にしがみつく様に抱きつくと、エリアナの存在を確認するように甘えた。
「殿下は甘えるのがお好きみたいですわね」
「・・・エリアナ補給をしている」
「私は殿下の・・・栄養ですか?」
「あぁ、元気の源だ」
グリグリ。掛布ごしにエリアナの足に頬を擦り付ける。
「まるで犬みたいですわ」
アルフレッドは顔を上げる。
「犬か・・・犬の方がいいかもしれんな・・・執務もなければ夜会もでなくていい、いつでもエリアナのそばにいられる」
「あら、可愛いかもしれませんが、犬とは結婚できません。夫婦にはなれませんわ」
「それは・・・困ったな・・・」
「ですから、殿下のままでお願いします」
「!・・・あぁ、わ、わかった。しかし、エリアナ・・・なぜ倒れたのだ?どこか悪いのか?」
「・・・」
エリアナは静かに俯き何も言わない。
「エリアナ?」
「もう、そろそろ諦めなければなりませんね・・・」
「何をだ?」
「・・・聞いて、くださいます?」
「もちろんだ!エリアナの話はなんでも聞く。エリアナの声は聞いていて心地がいいからな」
話は、幼くして出会い共に育ってた想いあっていた男の話であった。幼馴染で爵位が違えどいずれは一緒になる事を考えていた事。王命によって引き裂かれた事、相手の結婚を知り、一度倒れた事があった事。そしてその男に子どもが産まれた事を知り、今回倒れて起き上がれないほどに憔悴しきってしまった事。淡々と語るエリアナを、アルフレッドはただじっと見つめる事しかできなかった。
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次回
だからこれでいい、これでいいんだ
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