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純情令息とお転婆公爵令嬢
初めての挫折、初めての恋
しおりを挟む「あなた、怪我してるじゃない」
木陰で休んでいると、美しい女が声をかけてきた。
「・・・このくらいどうって事ない」
「ダメよ!きちんと手当しないと」
その美しい人は、木陰で休んでいた男の傷口を水で清め、自身のハンカチで手当をしてくれた。
「これでよし!あ、でも、ちゃんと後で医務室行きなさいよね?」
「・・・あぁ、助かった」
「あなた、強いのね」
「いや・・・負けた」
「でも、あれだけの数の中で準優勝なのよ?凄い事だわ!自信を持って」
「・・・あ・・・あぁ・・・」
「じゃあ、私は行くわ。ちゃんと医務室行くのよ?」
そう言うと、美しい人は去って行った。
(どこのご令嬢だろうか・・・凄い・・・か・・・素直に褒められた事なんてなかったな・・・当たり前の事だったし・・・ハンカチ汚れてしまったな)
この日、王都にある学園では、剣術大会が開催されていた。怪我を負った赤い髪の男は、セシル・アカシア。アカシア辺境伯家の長男である。剣術大会で順調に勝ち進んでいったが、決勝で黒髪の生徒とあたる。黒髪の男はセシルもよく知る相手だった。バージル・ユリシール子爵令息。アカシア辺境伯領の隣に位置し、よく行き来もする領地の貴族の子息だった。
「はぁ・・・まさかあいつに負けるとは・・・辺境伯の名に傷をつけてしまったな・・・」
セシルは辺境騎士団の屈強な騎士達の中で育ち、幼い頃から剣術を磨いてきた。辺境領では、歳近い者はセシルに敵う者はおらず、年上の騎士を負かすほどの実力であった。絶対の自信を持っていたのだ。最終学年での剣術大会で勝ち進んだ決勝、初めて参加したバージルに負けてしまった。
セシルはそれからとにかく無心で鍛錬を積んだ。悔しいなどの単純な思いだけではなかった。辺境では、他国からの侵攻、盗賊や害獣などからの被害も頻繁に起きる。辺境では、いつ命を落とすかわからない環境で負けは許されない。自分の腕に、身体に、辺境の安全がかかっていると言っても過言ではないと思っていた。上に立つ人間が強くある事で、騎士達も士気があがり強くなる。
「ちょっと、バージル待ちなさいよー!!」
大声を出す女生徒がいる。聞いたことのある声に、セシルはその方向を見ると、傷の手当をしてくれた彼女を視界にとらえた。
「俺は間違った事は言ってないぞ」
「なんですって、誰がガサツ女よ!!」
「そのまんまだろうが、普通、令嬢はそんなに大股で追いかけてこない」
「うるさーい!」
バージルと言う男子生徒を走って追いかける女生徒は、エミリア・ワルシャワ。公爵家の令嬢だ。ほとんどの令息は、これを見てお転婆だ、ガサツだ、感情が激しいと非難するだろう。しかし、セシルは辺境伯の子息である。辺境では、物静かで遠慮をする女には生きづらい場所。セシルはエミリアの威勢のよさを好ましく思っていた。
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次回
もうすぐ失恋するから弱みにつけ込めって
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