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恋した君と愛する君

彼女の特別な存在に

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マーガレットとサイラスは12歳になり、学園に通い出す。


「マーガレット様、おカバンお持ちいたしますよ」

「このくらい、大丈夫よ」

「段差があります、お気をつけてください」

「もう、子ども扱いしてるの?でも、ありがとう」

「マーガレット様、席をお取りしていますよ」

「サイラス・・・いつも悪いわ」


サイラスは、とにかくマーガレットの特別になりたかった。父が言う、他の令息達との差をつけろと言う言葉を忠実に守ろうとしていた。



「ええっ!そうなの?見てみたいわ!!」


廊下を歩いていると、愛しい人の声が聞こえてくる。しかし、その声は誰かと楽しそうに話している声で、相手は男だった。サイラスは不安になると同時に、黒いモヤが心を埋め尽くすような気持ちになっていた。

マーガレットは明るく、誰にでも優しく皆から人気があった。マーガレットの周りには、男女問わずいつも人が集まっていた。



(その場所は僕の場所なのに・・・邪魔だ・・・)



「マーガレット様が休めないだろう?ほどほどにしないか」

「マーガレット様がお疲れだ。またの機会にしろ」

「マーガレット様が困られている。そういうのはやめるように」


サイラスは公爵家の令息という立場を利用して、マーガレットの周りに寄ってくる貴族令息や令嬢達を蹴散らしていった。



「サイラス、あんな言い方はないわ。みな良くしてくれているのに悪いわ・・・」

「しかし、マーガレット様は王女殿下です。気安く話しかけられる相手ではないのですよ」

「では、あなたはどうなの?わたしが許可しなければ会話できない立場ではなくて?」

「私は公爵家の人間で、王家の次にあります。下位貴族を正すのが役目です」


サイラスはとにかくマーガレットの近くにいた。


「サイラス、学園でマーガレット王女殿下に付き纏っているそうではないか」

「父上、付き纏いなんかではありません」

「しかし、王家から厳重注意がきておる」

「厳重・・・注意?」

「お前はやり方を間違えたのだ。近付いても嫌われては何にもならないではないか」

「・・・」


それから学園内では、挨拶のみを交わすようになった。しかし、彼女の姿を目で追ってしまう。近寄れない。声をかけられない。他の令息達の方が距離が近い。サイラスは焦っていた。そして、段々と嫉妬深く闇に飲まれていく。



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次回

僕は特別だ・・・・




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