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25.怯える君

643.もとの君に

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「側にいてほしい、離れないでほしい、ぎゅっして一緒に寝てほしい、二人の家に帰りたい、また一緒におうどん食べてたい………」


アキラのお願いはどれもすごく些細なことで、そんな小さなお願いを涙を貯めながら必死でしてくる。


そんなの絶対に叶えるし…
ベッドのアキラの前に跪いて、見上げるようにして目を合わせれば
クシャリっと顔が崩れてしまう。


「わかった、大丈夫だからね…必ず全部叶えてあげるからね?
ちょっとだけ待ってね…
僕たちのお家を掃除しないと駄目でしょ?
だって一週間近くも帰ってないんだよ?
僕が綺麗にしてくるから…ちょっとだけ待っててね?」


ちょっと辛そうに眉間を寄せて、唇を噛みながらコクリっと頷いてくれた。
シノダ教授にアキラはお願いして、おじいちゃんと二人で部屋を出た。



「おじいちゃん、いろいろと買い替えたいんだよ、ベッドもあんなことあったから同じもの使いたくないし、部屋もめちゃくちゃだから直したい
一度帰ってみないとわからないけど…いろいろ壊してた気がするから」

「それはいいわい!
ワシがなんとでもしてやるが…
アキラ君は大丈夫かのう?
あんなことがあった部屋に、入った途端にフラッシュバックとか起らんといいが…」


僕もそれは考えたけど、アキラは二人の家に帰りたいっと言うから
それに、今度は僕がアキラを治してあげないといけないんだ。


「もしも、またアキラ君に異変があったら、すぐに連絡入れるんじゃぞ?」



================


「はぁ……、ロンさん…僕は自分が情けないです。
あれくらい平気だと思っていたんですよ、カズマは僕を殺しには来ていなかったし…」


そう…僕の中ではあれくらい・・・のことのはずだったんだ。
ジョンの精神を壊されることや記憶を消されることに比べれば、僕のされたことなんて些細なことだ
ただの身体的暴力なんて、ポーションや回復魔法でいくらでも治せる。
なのに、僕の気持ちは悲鳴をあげた…


「アキラ君、僕から見たら君は十分傷つけられることをされているよ?
情けなくなんかないさ…
それに、君はずっと酷いストレスにさらされていたじゃないか?
ジョン君を守らなければって、ジョン君を治さなければって……それに今も」


ロンさんの手が頬に添えられて親指で唇をなぞられる
その手が首筋を伝って胸に添えられる
急な意味深な動きに、驚きで体を固めていると


「怖いんだろ?ジョン君を受け入れれるかって…不安なんじゃないかな?
さっきは…ジョン君にアキラ君には珍しく声を荒らげてたから」

ロンさんの言葉に反論しようにも、胸に添えられた手の温もりがその気を削いでいく。


「大丈夫だよ、もし……受け入れられなかったら、俺のところにおいで?
ジョン君も了承済みだよ。
あの子はかなり今回のことで、大人になったね?
自分の弱さを受け入れたのかな?」


ロンさんの言葉に、息が詰まるのを感じた。
そうか、ジョンはどんどん大人になっていくのか…
きっとこの痛みはジョン離れの痛みなのかな?


胸の手に自分の右手を添えて、その痛みを逃がすように強く握りしめた。
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