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32.亀裂

983.貴方の手で終わらせて (sideシバ)

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雄の臭いがむせ返るような脱衣所をすごい勢いで駆け抜けて、シャワーの音がする浴室の扉を躊躇なくに開けば、そこには頭からシャワーを浴びるバスターさんがいて

目を見開いて驚いているけど、どこか気だるそうな雰囲気で…シャワーで濡れた姿は艶っぽくて、まるで事後のような姿に見えて、その姿を他の雄にも見せたかと思ったら、もうダメだった…


「ぐわああぁうぅぅ!!!!」

「うわっ!………シバっ?アッ……シバ……」


バスターさんの首筋に思いっきり歯を立てた。頸動脈を食いちぎる勢いで…
口の中に鉄の味が広がって、ポタリッと浴槽の床に鮮やかな赤い滴が落ちていく

バスターさんが俺に飛びかかられた勢いのまま、壁に当たってズルズルと床に沈むように腰を付く、俺はそれでもバスターさんの首に食いついたままだった。


「ゔぅ…ゔぅ…!ばしたぁしゃんの、ばかぁ!
なんで?なんでこんなっ…うわぁぁ!!」

「シバっ…すまない、勝手なことをして…シバを怒らせるのはわかってたのに、自分を止められなかった。…本当にごめんなっ」

「うわぁぁ!俺っ…俺は嫌だから、絶対に嫌だから!なんでっ?俺っ…でもっ!わああぁぁ!!」


俺の噛みつきなんて、バスターさんの防御力に敵うわけがなくて、頸動脈なんて食い千切れるはずもなくて…
わかってたんだ、敵うわけないことくらい
でも、もう俺をいらないっていうなら、俺を捨てるっていうなら、殺して欲しかった。
バスターさんを失って生きていくくらいなら、バスターさんに返り討ちにあって、バスターさんの手で終わりにして欲しかった。なのにバスターさんは俺を強く抱きしめてくれる。


「シバっ…ごめんなっ…申し訳ないって、悪いことだってわかっていたけど、本当に、ごめんっ…それでも私は耐えられなかったんだよ!」

「ゔぅぅえぇ!!…でもっ、嫌だ!バスターさんは…俺の雌でなきゃ嫌だぁ!俺だけのっ…嫌なんだよぅ!!」


もう駄々っ子のように泣き崩れて、意味もわからないような言葉を感情のままに叫んでいて
そんな俺を抱きしめながら、ごめんなって耐えられなかったんだってずっとバスターさんが謝ってくれる。

もう俺の服がビチョビチョだし、きっと俺の顔も涙と鼻水でぐちゃぐちゃだろうけど、でも全然気持ちを納められなくて、バスターさんの体に必死に体を擦り付ける。
バスターさんに付いた雄の臭いを上書きしたくて、でも…なんかっ?………雄の臭いが全然しない???

アレ?シャワー浴びたから臭いが取れたの?
でもたぶんまだ体は洗ってないし、頭も濡れてるだけだ、お湯で流したくらいじゃ絶対に致した臭いは落ちない!
部屋中には立ち込めれような、興奮した雄のの臭いがしたのに、なんでバスターさんの体自体からはしないの?

人狼とエッチしてきたなら、少なからず体からも臭いがするはずだし、俺の鼻は誤魔化されるほど悪くない!
………ってことは…抱かれてない?バスターさんは抱かれてないの!!

‥‥もしかして、抱いた?それも違うなぁ、体自体からは人狼の臭いがしない!たぶんこれは接触したかすら怪しいくらいだ!ならなんでバスターさんはこんなに俺に謝ってるの???


「ごめんなっ…勝手なことをしたのは重々承知なんだ、シバが怒るのも無理はないから、でも…耐えられなかったんだ…どうしたら許してくれるだろうか?」

「えっ??ちょっと待ってください…バスターさん、何をしてきたの?俺が怒ることって何?」

「はっ?わかってたんじゃないのか?
じゃあ、なんでそんなに怒って……えっ???」


お互いがもう呆けた顔で見つめ合ってしまった。
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