魔術師は黒猫がお好き-転生使い魔の異世界日記-

東 万里央(あずま まりお)

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第一話「月の光と胸の痛み」

009.ハチ退治にいこう!(3)

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 走って、走って、走って、低くを飛ぶキラー・ビーの背に飛び乗り、今度は高くにいる一匹に乗り換え、振り落とされる前に枝へジャンプする。

 私は木から木へと飛び移り、キラー・ビーの攻撃を避けながら、鼻に全神経を集中させた。

 キラー・ビーの指揮官と兵士は外見に区別がない。けれども、ひとつだけ指揮官にはある特徴がある。「ふぇろもん」と呼ばれる匂いだ。

 人間はこの匂いを感じ取れない。蟲と獣の姿を持つ魔物だけがわかる。そう、私にはわかる。私にしかできないんだ!

「……!!」

 私はある一匹のキラー・ビーに狙いを定めた。

 第三陣の斜め前にいるあいつ――あいつがこの軍隊バチの指揮官だ!! 

 私は後ろ足で思い切り木の幹を蹴った。逃げ惑う敗残バチを空中のクッションにして、第三陣へとまっしぐらに突っ込んでいく。

 慌てて兵士バチが針を向けるけど、私が小さいからか狙いを定めにくいみたいだ。

 私はジグザクにジャンプして攻撃をよけ、指揮官の間近にまで近づいた。

 キラー・ビーは蟲族でも殻がとても硬く、かまいたちの魔術を使えない私には倒せない。けれども、たった一ヵ所だけ柔らかく弱いところがあった。それは……目だ!! 

 私は前足の爪の全部を出し、指揮官の右目を左斜めに、左目を右斜めにしゃっと引っかいた。

『キィィィイイイィィィッッッッッッ―――!!!!!!』

 大きな目の中の細かい目が痛みに赤に、緑にとまたたく。傷口からは透明の液体が漏れ出ていた。きっとこれがキラー・ビーの血なんだろう。

 指揮官は思いがけないダメージに耐えられなかったのか、声もなくどすんと土の上に転がった。

 私はしゅたっと着地し部隊を見上げる。残された兵士バチが唸るようにざわめいていた。

『ギ、ギ、ギ』

『ギギ……』

『ギギッ……』

 一匹が身をひるがえしたのを合図に、四分の一の数となった軍隊は、クルトと私に背を向け一目散に逃げ出した。

『――クルト!!』

 私は思わず振り返りクルトを見た。クルトもこちらに駆けてくる。私は嬉しさに任せその胸へと飛び込んだ。

『クルト、クルト、私、うまくできた?』

 クルトは優しくほほ笑み私の背中を繰り返し撫でる。

「ああ、よくやった。上出来だ」

『……!!』

 褒めてくれた!!

「帰ったらササミをやるからな。今はキラー・ビーの後を追うぞ」
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