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第二話「空と海と嘘とキス」
048.海賊ヴォルフガング(5)
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私はベッドにすとんと座りこんで首を傾げた。
そのきってなんのきだろう? 大きいのかにゃ? それとも小さいのかにゃ?
船長は答えの代わりに、「面倒くせえな」とため息を吐くと、腕を伸ばして私のあごをつまんだ。
「おい、お前、名は?」
「る、ルナ」
「ルナ? 知らねえな。やっぱり新入りか」
まつ毛とまつ毛が触れそうくらい近くから、私の目をじっとのぞき込んでいる。
「……しっかしとんでもない上玉だな。ビアンカもどこから仕入れたんだか」
私はじょうだまじゃなくて、ケット・シーのルナだよ! それに、しゅっかはされたけれども、しいれられてはいないよ?
船長の金の混じる緑の目が、いら立たしそうにゆがめられた。
「お前、この船がこれからどこへ行くのかわかってんのか? ヴェンディス沖へひと稼ぎしにいくところなんだぞ」
みゃっ!? ヴェンディス!?
ないはずのしっぽがピンと伸びた気がした。つい船長につめ寄って肩を掴んでしまう。
「この船、ヴェンディスへ行くの!?」
「まあ、沖合だけどな」
「私も行く!!」
船長が「んだとお?」とスットンキョーな声を上げた。
「女を連れていけるか! お前、ビアンカから俺たちが何者なのか聞いてねえのか。冗談じゃねえぞ」
「知っているよ! 海賊でしょ? それに私は女じゃないもん! メスだもん!」
船長が「は?」と目を見開いた。私はえっへんと胸を張る。
「私は人間じゃなくて魔物のケット・シーなの。猫の姿と人の姿を持っているんだよ!」
「ま、ものお?」
「そうだよ! 昨日は猫の姿だったでしょう?」
店長は「馬鹿な」と息を呑んだ。
「お前が魔物で昨日の黒猫だ? んなの、信じられるか!」
「船長が信じられなくても、ほんとうにほんとうだもん!」
「じゃあ、この場で猫の姿に戻ってみろ!」
船長は私に人さし指を突きつけた。私はうっと口ごもってしまう。だって戻り方がわからないだもん……。
船長はさっきよりも深いため息を吐いた。
「ヘタな嘘はやめろ」
「……」
「お前、たぶんどっかのお嬢だったんだろ。境遇の変化に耐えきれないのはわかるがな、それでも食ってかなきゃならないんだからな」
船長がなんだかくどくどとおせっきょうをしている。私はそれをするーしていっしょうけんめい考えていた。ほんとうに私が昨日の黒猫なんだって、なんとか船長にしょうめいしなくちゃって。やがて「そうだ!」とめいあんを思いつく。
「昨日船長は私にゆでた鶏肉をくれたでしょう?」
「……?」
船長がおせっきょうをやめた。
「途中でメロンの女の人が来て、私のあごをなでてくれたの。すごいてくにっくだった!」
「……!」
目をまん丸にして私を見つめている。
「あのメロンの女の人ってそんなに美味しかったの? 五回もちゅうするなんて船長はぐるめなんだね!」
船長は「わかった、わかった!」と頭を抱えた。
「……頭の中身がやばい女ってやつか。ビアンカの店もいよいよ人手不足か?」
「みゃ?」
いったい何を言っているんだにゃ?
船長は「よし」と大きく頷くと、私に目を向けてひざにひじをついた。
「だったらこうしようじゃないか。お前がマジで昨日の猫だってんなら、今から一時間以内にネズミを十匹取ってこい。ったらヴェンディスまで連れてってやる」
「ネズミ?」
「ああ、そうだ」
首をかしげる私に船長はにやりと笑う。
「猫なら簡単だろ?」
私は「もちろんにゃ!」と胸を叩いた。
そんなの楽勝中の楽勝にゃ!
――それから一時間後に私は右手に五匹、左手に六匹のネズミのしっぽを束ねて、船長に「十一匹!」と笑いながら見せてあげた。
「これで私が猫ってわかったでしょ!?」
「……」
船長はぽかんと口を開けている。私はその顔を見てまた笑った。
「船長、約束だよ!!」
そのきってなんのきだろう? 大きいのかにゃ? それとも小さいのかにゃ?
船長は答えの代わりに、「面倒くせえな」とため息を吐くと、腕を伸ばして私のあごをつまんだ。
「おい、お前、名は?」
「る、ルナ」
「ルナ? 知らねえな。やっぱり新入りか」
まつ毛とまつ毛が触れそうくらい近くから、私の目をじっとのぞき込んでいる。
「……しっかしとんでもない上玉だな。ビアンカもどこから仕入れたんだか」
私はじょうだまじゃなくて、ケット・シーのルナだよ! それに、しゅっかはされたけれども、しいれられてはいないよ?
船長の金の混じる緑の目が、いら立たしそうにゆがめられた。
「お前、この船がこれからどこへ行くのかわかってんのか? ヴェンディス沖へひと稼ぎしにいくところなんだぞ」
みゃっ!? ヴェンディス!?
ないはずのしっぽがピンと伸びた気がした。つい船長につめ寄って肩を掴んでしまう。
「この船、ヴェンディスへ行くの!?」
「まあ、沖合だけどな」
「私も行く!!」
船長が「んだとお?」とスットンキョーな声を上げた。
「女を連れていけるか! お前、ビアンカから俺たちが何者なのか聞いてねえのか。冗談じゃねえぞ」
「知っているよ! 海賊でしょ? それに私は女じゃないもん! メスだもん!」
船長が「は?」と目を見開いた。私はえっへんと胸を張る。
「私は人間じゃなくて魔物のケット・シーなの。猫の姿と人の姿を持っているんだよ!」
「ま、ものお?」
「そうだよ! 昨日は猫の姿だったでしょう?」
店長は「馬鹿な」と息を呑んだ。
「お前が魔物で昨日の黒猫だ? んなの、信じられるか!」
「船長が信じられなくても、ほんとうにほんとうだもん!」
「じゃあ、この場で猫の姿に戻ってみろ!」
船長は私に人さし指を突きつけた。私はうっと口ごもってしまう。だって戻り方がわからないだもん……。
船長はさっきよりも深いため息を吐いた。
「ヘタな嘘はやめろ」
「……」
「お前、たぶんどっかのお嬢だったんだろ。境遇の変化に耐えきれないのはわかるがな、それでも食ってかなきゃならないんだからな」
船長がなんだかくどくどとおせっきょうをしている。私はそれをするーしていっしょうけんめい考えていた。ほんとうに私が昨日の黒猫なんだって、なんとか船長にしょうめいしなくちゃって。やがて「そうだ!」とめいあんを思いつく。
「昨日船長は私にゆでた鶏肉をくれたでしょう?」
「……?」
船長がおせっきょうをやめた。
「途中でメロンの女の人が来て、私のあごをなでてくれたの。すごいてくにっくだった!」
「……!」
目をまん丸にして私を見つめている。
「あのメロンの女の人ってそんなに美味しかったの? 五回もちゅうするなんて船長はぐるめなんだね!」
船長は「わかった、わかった!」と頭を抱えた。
「……頭の中身がやばい女ってやつか。ビアンカの店もいよいよ人手不足か?」
「みゃ?」
いったい何を言っているんだにゃ?
船長は「よし」と大きく頷くと、私に目を向けてひざにひじをついた。
「だったらこうしようじゃないか。お前がマジで昨日の猫だってんなら、今から一時間以内にネズミを十匹取ってこい。ったらヴェンディスまで連れてってやる」
「ネズミ?」
「ああ、そうだ」
首をかしげる私に船長はにやりと笑う。
「猫なら簡単だろ?」
私は「もちろんにゃ!」と胸を叩いた。
そんなの楽勝中の楽勝にゃ!
――それから一時間後に私は右手に五匹、左手に六匹のネズミのしっぽを束ねて、船長に「十一匹!」と笑いながら見せてあげた。
「これで私が猫ってわかったでしょ!?」
「……」
船長はぽかんと口を開けている。私はその顔を見てまた笑った。
「船長、約束だよ!!」
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