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第一章 始まりの館

Chapter36 ハンバーガー

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 翌日は晴れた。
まだ雲は多いが、いい天気だ。
アルシャインは朝早くにお守り匂い袋を作る。
〈…もしかして、私以外にも誰かが癒やしの素質を持っているのかしら?〉
考えながらダイニングのテーブルで作っていると、ノアセルジオが降りてきてコーヒーを注ぐ。
「おはよう、ノア」
「おはようアイシャ。手伝うよ」
ノアセルジオはコーヒーを一つアイシャに渡して向かいに座る。
「あら、ありがとうノア」
アルシャインはコーヒーの香りを楽しんでから飲む。
「…アイシャの髪ってサラサラして綺麗だよね」
そう言いノアセルジオはアルシャインの三つ編みを手にする。
「や、やぁねー、からかわないで」
「からかってないよ。俺はアイシャがーー」
言い掛けた時に卵を取っていたマリアンナとレオリアムが入ってくる。
「あ、あたしも手伝うわ!」
マリアンナが来てアルシャインの隣りに座り、布と針を手にする。
「僕もやるよ」
レオリアムもノアセルジオの隣りに座り、針と糸を手にした。
ノアセルジオは頬を赤らめながら俯いて、立ち直ってコーヒーを飲む。
「…もしかして邪魔した?」
レオリアムが聞くとノアセルジオは苦笑してお守りを縫う。
「いや…」
「…そういうのはカシアンがいない時がいいよ」
「分かってる」
2人でそんな会話をする。
マリアンナには何の話か分かったが、アルシャインはまるで分かっていないようで微笑みながらお守り匂い袋を作っていた。
途中からアルベルティーナとリナメイシーとクリストフも交ざる。
合間にアルシャインはお米を炊いた。
出来上がりに、みんなでお守り匂い袋に祈りを込める。
 怪我をしませんように
 病気をしませんように
 無事に帰れますように
そんな祈りを込める。
すると、起きてきていた男の子の方が近寄ってくる。
「マスターもそうだけど…君も、僧侶アポストルの素質あるね」
男の子はリナメイシーにそう言う。
「リーナが?アポストルってシスター?」
「シスターにもなれるし、冒険者にだって重宝されるよ。街の医者にもいいし…」
そう言うと、レオリアムが聞く。
「医者には僧侶アポストルの資格が必要?」
「必ずって訳じゃないけど、あれば癒せるから…あ、僧侶アポストルの入門書あげるよ、待ってて」
そう言って部屋に行き、男の子は女の子と共に何冊か入門書を置く。
「これ良かったら。ここではマスターが孤児を養って育ててるって聞いたから持ってきてたんだ」
本のタイトルは魔法の入門書、魔法と呪法、僧侶の入門書、戦士と騎士の入門書、医学の入門書など。
「わあ、ありがとう!…お礼は…そうね、新しい料理でいいかしら?」
アルシャインはそう言ってキッチンに行く。
「オムライスっていってね…トマトソースかデミグラスソースで食べるんだけど…卵を2つも使うから中々出来なくて。こういうお礼でしか作れないのよ」
そう言いながらアルシャインは野菜を炒めてからご飯を混ぜてトマトソースと絡める。
その上にふわふわに焼いた玉子を乗せる。
「トマトソースとデミグラスソース、どっちが好き?」
「あたしはトマトソースで…」
「僕はデミグラスを…」
2人がおずおずと答えながら席に着くと、オムライスと水の入ったカップが置かれる。
「どうぞ」
言われて2人はスプーンですくって一口食べて目を見開く。
「んん~!なにコレ美味い!」と男の子。
「美味しい…っ!玉子って美味しい!」
女の子が言いながらパクパクと食べていく。
みんなは思わずじーっと見ていた。
「あ、みんなのご飯も作らないとね…パンケーキはどうかしら?」
「いいね、ティーナも手伝うわ!」
そうアルベルティーナが言うとマリアンナとフィナアリスもキッチンに立つ。
その間に小さな冒険者達を見送った。

 ルベルジュノーがふと、黒板を見て言う。
「このパンケーキの名前変えない?」
「なんて?」
アルシャインが聞くと、ルベルジュノーが考えながら言う。
「基本は全部レタスとチーズとクリームと玉子が入ってるんだから〝レタスパンケーキ〟で、ベーコン入りは〝ベーコンパンケーキ〟他にもハンバーグ入れて〝ハンバーグパンケーキ〟とかステーキ入れて〝ステーキパンケーキ〟とかどうかな?」
「ジュドー天才ね!新メニューも出来てる!じゃあ、ローストチキンパンケーキもいいわね~!」
アルシャインが言うと、カシアンが言う。
「じゃあカンムリ鷹でも狩ってこようか?ちょうどボーガンあるし」
「お願いね!」
「あの辺に居るの狩るか」
「俺も行く!」
とリュカシオンとルベルジュノーとノアセルジオが弓矢を手にして、ボーガンを持つカシアンについて行った。
「書いてから行ってよ~」
マリアンナが文句を言いながら、黒板のメニューの書き直しをする。

新鮮なカンムリ鷹のローストを作ってからパンケーキを作ろうとして止まる。
「あ、これ〝ハンバーガー〟でいいかしら?!」
アルシャインがパンを2つに切って肉とレタスとチーズを挟んだ。
「これで食べてみて!」
まずは2個ずつ作って半分に切って、みんなに食べてもらう。
「あ、食べやすいよ!」とレオリアム。
「これなら持ち帰れない?!」とティナジゼル。
「美味い!」とルベルジュノー。
「ハンバーガーいいよ!」とクリストフ。
「じゃあ…パンケーキはやめてハンバーガーにしましょう!」
アルシャインが言い品名を書こうとして、みんなに止められた。
「ストップ!!」
「幾らがいい?」とレオリアム。
「ステーキは14Gでどうかな?レタスとチーズだけなら1G安めでいいと思う」とノアセルジオ。
「ベーコンハンバーガーは12Gでどう?あっさりして食べやすいし軽食にいいと思う」とマリアンナ。
「じゃあチキンハンバーガーは13かな。ステーキよりは薄いけど…」とクリストフ。
「ハンバーグハンバーガーは…言いづらいからハンバーガーにしようよ」
リナメイシーが言うと、みんなが頷く。
「ハンバーガーは14Gね!」
リナメイシーとティナジゼルが同時に言って笑い合う。
黒板には
チキンハンバーガー13G
ステーキハンバーガー14G
ベーコンハンバーガー12G
トマトハンバーガー14G
デミグラスハンバーガー14G
と付け加えた。
代わりにパンケーキは消した。
デザートのパンケーキの方は人気なのでそのままにした。
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