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第一章 始まりの館

Chapter38 査定

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 翌日は晴れていた。
アルシャインは朝早くからレース編みをして飾り付けて、しまっていた売り物や飾りを出した。
そして仕込みをしていると、ミュージやニワトリの世話や水やりや雑草取りの終えたみんながダイニングに集まる。
「やっとジャーキーが出来たから食べてみてね」
アルシャインは角キツネのジャーキーを切ってお皿に乗せてカウンターに置いた。
するとみんなが手に取って食べる。
「この味いい!」とメルヒオール。
「好きだな…」とノアセルジオ。
「これ手元に欲しいな」とカシアン。
「美味しいね」とマリアンナ。
「値段は…?」とフィナアリス。
みんながうーんと唸りながら、吊るしてあるジャーキーを見た。
「保存食としてなら、一食分に切って35Gとか…」
そうレオリアムが言うと、リナメイシーが言う。
「手間も掛かるから40Gよ。2日も乾燥させてたから」
「乾燥を一日減らしたらどんな感じか食べたいな」
アルベルティーナが言いながらカウンターに行く。
「そうね…これはどうかしら?」
アルシャインが肉を取って切り分けてみる。
「あ、これは柔らかい」とリナメイシー。
「これも売れそう。硬めと柔らかめで…その日に食べたらいいし!」
そうアルベルティーナが言うと、みんなが頷いて考える。
「値段は40G?」とクリストフ。
「45だろ」とルベルジュノー。
それでみんなが頷いたので、黒板には
ジャーキー(硬めと柔らかめ)45G
と書いた。

すると、行商人と旅人がジャーキーを買って旅立った。
「あら…もっと作らないとね!」
アルシャインが仕込みをすると、フィナアリスとマリアンナとリナメイシーとアルベルティーナがやってきて手伝う。
冷蔵庫の氷をルベルジュノーとリュカシオンが取りに行く間に、アルシャインはカシアンと共にギルドに向かった。

「孤児院ですか…」
呟いてギルドマスターが立ち上がる。
「これから私が客として行き、孤児院として相応しいかを査定します。その後で〝合格〟ならば孤児院の看板を渡して、孤児一人につき月に千Gをあなたの銀行に振り込みますので…」
「千?!あの、特にお金はいいのですが…」
「そうはいきません。子供は国の宝であり保護対象なので、国と地域が守る存在なのです。その為の費用は募金と国の援助で支払われますのでご安心を」
そう言いギルドマスターは色々な書物と筆記用具をカバンに詰めて歩く。
「自然な姿が見たいので、私がギルドマスターであるとは明かさないように」
「はい…」
アルシャインは緊張しながら歩く。
カシアンはその2人を見ながら歩いた。

アルシャインとカシアンが帰る。
「ただいまー!」
「お帰りなさい、アイシャママ!」
メルヒオールが抱き着いた。
「ただいまー!結構混んでるわね!」
アルシャインはキッチンへ入り、カシアンは家具作りへ向かった。
ギルドマスターは後から入る。
「いらっしゃいませー!こちら空いてます!」
そうティナジゼルが笑顔でギルドマスターを案内した。
ギルドマスターは店内を見回してから黒板を見た。
「そうですね…ランチには早いから、パウンドケーキ1切れとコーヒーを下さい」
「はーい」
ティナジゼルが答えて紙に書いてカウンターに置いた。
リナメイシーがパウンドケーキをお皿に盛って、クリストフが運ぶ。
「どうぞ!」
「ありがとう」
見ていると、レオリアムがコーヒーをカップに注いで持ってきた。
「コーヒーです。ミルクと砂糖は使いますか?」
「ああ、お願いするよ」
ギルドマスターが答えると、メルヒオールがミルクと砂糖入れを乗せたトレイを持ってくる。
「はい、使い終わったら持っていくから言って下さいね!」
「ああ」
答えてミルクと砂糖を入れたのでトレイを返して、パウンドケーキを食べているとティナジゼルがコロコロドーナツのカゴを持って回る。
「コロコロドーナツ1個1Gよ~いかが~?」
「クッキー2つで1Gだよ~」
とメルヒオールもクッキーのカゴを手に回る。
「1Gは安くないか?」
思わずギルドマスターが声を掛けると2人が顔を見合わせて言う。
「だってアイシャママが1Gが好きなんだもの!ほんとは3Gにしたいんだけどね」
ティナジゼルが言うと、メルヒオールも頷く。
「クッキーも4Gがいいと思うのにシブーイ顔するんだ!」とメルヒオール。
「そんな顔しないわよ~ふふふ」
アルシャインが苦笑してラザニアを作る。
するとエイデンがやってきてカウンターに座る。
「アイシャマスター!ほら看板だ!」
そう言い、鉄で作られた細かな羊とベッドと〝金の羊亭〟の文字の看板と、金の羊亭の文字の焼きごてと羊の焼きごてを出す。
「何この細かい看板~!素敵~!!見てみて」
アルシャインははしゃいでみんなに見せて、家具を作るチームにも見せに行く。
「ほら看板が出来たの!凄いでしょ!」
「おお!カッコいい!」
みんなが言って、アルシャインと共に歩く。
「早く付けようよ」とレオリアム。
「俺が付けるよ」とノアセルジオ。
「俺がやるって」とカシアン。
言いながら工具を手にして外に出る。
門にあるアーチに取り付けた。
「わー!カッコいい!」
ティナジゼルやリナメイシーも見に来てから戻っていく。
「アイシャママ!コトレッタのお肉が少ないわ!」
中からフィナアリスの声がする。
「え、あ、今日は狩りに行った?」
そう聞くとノアセルジオが言う。
「角ウサギと角キツネを取ったよ。もうリオンがさっき捌いたけど…」
中に入りながら言うと、リュカシオンが裏から肉を持ってやってくる。
「ごめん、皮を大事にしてたら時間掛かって。血抜きも完璧だから臭くないよ」
「ありがとうリオン!」
アルベルティーナが言って肉を切り分けて、リナメイシーが次々に冷蔵庫に入れていく。
とても連携が取れていて、楽しそうにしている様子が見えた。
ギルドマスターは査定しながら、チェックシートに○×を付けていく。
それに気付いたエイデンは外の様子を見に行く。
「焼きごてを使う時は注意が必要だから、手本を見せよう」
そう言い、アルシャインやカシアン達の前で外の窯を使って焼きごてを熱し、余った木に押し当てる。
「燃えない程度にな。どの板にやるんだ?」
「あのね、綺麗にした板があるの!」
アルシャインはすっかりギルドマスターの事も忘れて板を持ってきてエイデンに渡す。
するといい感じの看板が出来た。
「すごいわ、綺麗に出来てる!ありがとうエイデンさん!」
アルシャインはエイデンにハグをして頬にキスをする。
エイデンは照れながらも中に入った。
そこにロレッソとダンヒルとダグラムが来て、コーヒーだけ手にして家具作りやペンキの進行具合を見に行く。
アルシャインは看板をドアの横に設置して貰って、ランチに備えた。
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