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第一章 始まりの館
Chapter56 クロック・ムッシュ
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爽やかに晴れた炎の日。
庭の手入れの後に、アルシャインは庭でヴァイオリンを弾いた。
聖歌ではなく、昔習ったクラシック音楽の一つ〝月夜の薔薇に〟という題名の物だ。
8年前ーーーヴァイオリンの先生からは、その当時に流行っていたと聞いた。
本当か嘘かは分からないが、好きな曲の一つだ。
弾き終わると宿泊客の一人で、品のいい男性が窓を開けて言う。
「懐かしい曲だね、マスター」
「あら、おはようございます!起こしちゃいました?」
アルシャインは笑ってヴァイオリンをケースに入れて持ってから近寄る。
「何年も前に歌劇団でやっていた曲だよね、何だっけ…」
「月夜の薔薇に、だな」
隣の窓から同じ宿泊客が顔を出して言う。
「すぐに朝食の支度に掛かりますね!」
アルシャインは笑って言って中に入る。
もうフィナアリスとルーベンスとアルベルティーナとマリアンナとリナメイシーとクリストフが仕込みに取り掛かっている。
裏ではレオリアムとリュカシオンがジャガイモやニンジンの皮むきをしている。
アルシャインは2階に行ってミシン部屋にヴァイオリンを置いてから降りてきてエプロンを着けてキッチンに入る。
「アイシャママ、このパンはどう切るの?」
「あ、これはね…」
アルシャインは焼いておいた食パンを切っていき、バターとホワイトソースを塗って、ベーコンとレタスとチーズをはさんでまたチーズを乗せてフライパンで焼いて、パセリを散らした。
「クロック・ムッシュよ!焼いただけなんだけどね!」
そう言い、4つに切って側に居たフィナアリスとルーベンスとアルベルティーナに一つずつあげた。
「ん!美味しい!」とフィナアリス。
「これいい!チーズがガツンとくるよ!」とルーベンス。
「ホワイトソースが合う!」とアルベルティーナ。
「いいな~」
裏からルベルジュノー達が言う。
「朝はこれにしてみる?」
アルシャインが聞くと、みんなが
「する!」と答えた。
庭からも声がしたので、アルシャインは笑いながら作り方をフィナアリス達に教えながら焼いた。
「チーズが冷めない内に召し上がれ~」
アルシャインが座っているカシアンやノアセルジオ、ルベルジュノー、レオリアムに配る。
「美味い!!」とカシアン。
「これジャーキーも入れようよ」
とルベルジュノーがジャーキーを入れる。
「トマトも合いそうだ!」
レオリアムが庭から採ってきたトマトをスライスにして配って自分も入れて食べる。
「うん、ほら美味い!」
「うんうん」
カシアン達が頷く。
すると宿泊客も座って待った。
「………」
アルシャインは〝んー?〟と首を傾げて宿泊客を見た。
すると宿泊客はワクワクした様子で両手を広げて言う。
「マスター、こっちにも一つ頼むよ!」
「あら~…はいはい」
アルシャイン
キッチンに行くと、続々と宿泊客が座り出した。
「ご注文は?」
ティナジゼルが聞くと、みんなは
「同じ物を!」
と答える。
「あらあら…みんなー、幾らがいいかしら?」
アルシャインがカシアン達に聞くと、会議が始まる。
「パンとチーズとベーコンとレタスとトマト?…10は?」とレオリアム。
「ジャーキー入れて15Gで!」とカシアン。
うんうんと頷き合う。
そしてカシアンが黒板に
クロック・ムッシュ 15G
と書いた。
「ベーコンとジャーキーとレタスとトマトね~…こうかしら!」
言いながらパンで具材を挟んで焼いていく。
「みんなも食べちゃってね~」
次々に焼いて出して、みんなが交代で食べた。
宿泊客達はお土産や焼き立てのコロコロドーナツやクッキー、ジャーキーやお守り匂い袋などを買って出発した。
「ジャーキーの減りが早いわね…ちょっとお肉足りないかも…」
冷蔵庫の中のステーキやハンバーグなどの分の肉を見て呟く。
「何を狩ればいい?」
カシアンが聞くと、アルシャインは迷いながら答える。
「角キツネ一匹!」
「了解」
笑って答えてカシアンは狩りに行く。
フィナアリスとノアセルジオは仕込みをする。
子供達は教会へ向かう。
「行ってきまーす!」
「いってらっしゃ~い、気を付けてね!」
庭と門の外の掃除をしながらアルシャインが見送った。
手を振って見送った後に振り向いて掃除をしようとした時に、木の影に隠れる人影が見えた。
〈…孤児かな…〉
そう思うが、そんな小さくはなかった。
危ないから近寄らないようにじっと観察するが、分からない。
〈…気のせいね〉
そう思って中に入った。
木の陰からは、誰かが覗き見ていた。
庭の手入れの後に、アルシャインは庭でヴァイオリンを弾いた。
聖歌ではなく、昔習ったクラシック音楽の一つ〝月夜の薔薇に〟という題名の物だ。
8年前ーーーヴァイオリンの先生からは、その当時に流行っていたと聞いた。
本当か嘘かは分からないが、好きな曲の一つだ。
弾き終わると宿泊客の一人で、品のいい男性が窓を開けて言う。
「懐かしい曲だね、マスター」
「あら、おはようございます!起こしちゃいました?」
アルシャインは笑ってヴァイオリンをケースに入れて持ってから近寄る。
「何年も前に歌劇団でやっていた曲だよね、何だっけ…」
「月夜の薔薇に、だな」
隣の窓から同じ宿泊客が顔を出して言う。
「すぐに朝食の支度に掛かりますね!」
アルシャインは笑って言って中に入る。
もうフィナアリスとルーベンスとアルベルティーナとマリアンナとリナメイシーとクリストフが仕込みに取り掛かっている。
裏ではレオリアムとリュカシオンがジャガイモやニンジンの皮むきをしている。
アルシャインは2階に行ってミシン部屋にヴァイオリンを置いてから降りてきてエプロンを着けてキッチンに入る。
「アイシャママ、このパンはどう切るの?」
「あ、これはね…」
アルシャインは焼いておいた食パンを切っていき、バターとホワイトソースを塗って、ベーコンとレタスとチーズをはさんでまたチーズを乗せてフライパンで焼いて、パセリを散らした。
「クロック・ムッシュよ!焼いただけなんだけどね!」
そう言い、4つに切って側に居たフィナアリスとルーベンスとアルベルティーナに一つずつあげた。
「ん!美味しい!」とフィナアリス。
「これいい!チーズがガツンとくるよ!」とルーベンス。
「ホワイトソースが合う!」とアルベルティーナ。
「いいな~」
裏からルベルジュノー達が言う。
「朝はこれにしてみる?」
アルシャインが聞くと、みんなが
「する!」と答えた。
庭からも声がしたので、アルシャインは笑いながら作り方をフィナアリス達に教えながら焼いた。
「チーズが冷めない内に召し上がれ~」
アルシャインが座っているカシアンやノアセルジオ、ルベルジュノー、レオリアムに配る。
「美味い!!」とカシアン。
「これジャーキーも入れようよ」
とルベルジュノーがジャーキーを入れる。
「トマトも合いそうだ!」
レオリアムが庭から採ってきたトマトをスライスにして配って自分も入れて食べる。
「うん、ほら美味い!」
「うんうん」
カシアン達が頷く。
すると宿泊客も座って待った。
「………」
アルシャインは〝んー?〟と首を傾げて宿泊客を見た。
すると宿泊客はワクワクした様子で両手を広げて言う。
「マスター、こっちにも一つ頼むよ!」
「あら~…はいはい」
アルシャイン
キッチンに行くと、続々と宿泊客が座り出した。
「ご注文は?」
ティナジゼルが聞くと、みんなは
「同じ物を!」
と答える。
「あらあら…みんなー、幾らがいいかしら?」
アルシャインがカシアン達に聞くと、会議が始まる。
「パンとチーズとベーコンとレタスとトマト?…10は?」とレオリアム。
「ジャーキー入れて15Gで!」とカシアン。
うんうんと頷き合う。
そしてカシアンが黒板に
クロック・ムッシュ 15G
と書いた。
「ベーコンとジャーキーとレタスとトマトね~…こうかしら!」
言いながらパンで具材を挟んで焼いていく。
「みんなも食べちゃってね~」
次々に焼いて出して、みんなが交代で食べた。
宿泊客達はお土産や焼き立てのコロコロドーナツやクッキー、ジャーキーやお守り匂い袋などを買って出発した。
「ジャーキーの減りが早いわね…ちょっとお肉足りないかも…」
冷蔵庫の中のステーキやハンバーグなどの分の肉を見て呟く。
「何を狩ればいい?」
カシアンが聞くと、アルシャインは迷いながら答える。
「角キツネ一匹!」
「了解」
笑って答えてカシアンは狩りに行く。
フィナアリスとノアセルジオは仕込みをする。
子供達は教会へ向かう。
「行ってきまーす!」
「いってらっしゃ~い、気を付けてね!」
庭と門の外の掃除をしながらアルシャインが見送った。
手を振って見送った後に振り向いて掃除をしようとした時に、木の影に隠れる人影が見えた。
〈…孤児かな…〉
そう思うが、そんな小さくはなかった。
危ないから近寄らないようにじっと観察するが、分からない。
〈…気のせいね〉
そう思って中に入った。
木の陰からは、誰かが覗き見ていた。
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