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第一章 始まりの館

Chapter62 歌とダンス

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 午後はみんなで勉強だ。
その中でアルシャインがピアノを弾く。
「お池のお水が溢れそう~街にお水が溢れそう~♪誰ならお水を止められるかな~?」
そう歌うと、レオリアムが聞く。
「その水は何処から来て溢れそうなの?」
「池の底から湧いてるのよ~♪どんどんどんどんお水が湧くよ~♪」
「アヒルさんがグワーって口で吸い込むの!」とクリストフ。
「アヒルがガーガー頑張った!僕だけじゃ無理だよ~、誰か助けてよ~♪」
「分かった!ゾウさんよ!教会でゾウさんは鼻から水を吸って吐き出すって言ってたから、その水を川に流せばいいんだわ!」
そうアルベルティーナが言う。
「ゾウさんゾウさん頑張って!アヒルさんはもう泳いじゃったわよ~?誰が出来るかな~?」
ただの言葉遊びではなく、池の水をどうすれば止められるかを考えてもらいたくてアルシャインは歌っていた。
「…池の底から…みんなで川まで道を作ったらどうかな?溝を掘って、川を作るみたいに」
そうルベルジュノーが言うと、アルシャインが歌う。
「池から川まで溝を作るぞー♪誰がどんな風に作るのかなー?」
「さっきのゾウに荷車を引かせて、みんなでシャベルで掘る!」
ルーベンスが言う。
「みんなってだぁれ~?」
「んー…クマ!」とティナジゼル。
「じゃあクジラ!」とメルヒオール。
「うんいいね!クマさんは力持ちだし、クジラさんは泳ぎながら手伝えるよ!これで水が川に流れたね♪」
「やったね!」
パチンとティナジゼルとメルヒオールが手を叩き合う。
「あらあら川が深くなったら、みんなが渡れなくなったよ~、さあどうする~?」
「…橋を作る?」とユスヘルディナ。
「舟を出した方が早いよ」とマリアンナ。
「両方やったらどうかな?」とリナメイシー。
「どうする~?アリさんがケーキを対岸に運びたいって並んだよ~?」
「じゃあ舟を出してから、橋を掛けていこう」
そうルベルジュノーが言ってみんなが頷く。
どんどん問題を出して、解決策を考えてもらう言葉遊びだ。
「あら大変、雲がモクモク嵐が来るぞー!嵐が来ると何が起こる~?」
「えー…風が強いー」とティナジゼル。
「大雨!」とメルヒオール。
「さっきの川が増水して橋が流されるね」とノアセルジオ。
「えー!それヤダー!」とクリストフ。
「そう大雨の時は川に近付いちゃいけないよ!土砂も流れるから気を付けて!」
そうアルシャインが歌ってピアノを終わらせた。
「ねー、何が正解?」
ルーベンスが聞くと、アルシャインは笑う。
「正解はみんなが経験して作っていくのよ。池の水はね、川にするのが正解。川には橋と舟で正解なのよ」
アルシャインがそう答えると、ユスヘルディナが頷きながらノートに書く。
「じゃあ次はあたしが弾いていい?」
アルベルティーナが言い、イスに座って聖歌を弾く。
新しく習っている物で、楽譜を写してきていた。
楽譜の読み方もシスターに教わった。
するとアルシャインはミシン部屋に行ってヴァイオリンを持って来て共に弾く。


 ディナーの後で、みんなでダンスをした。
教会の子供達と踊ったとかで、リナメイシーとマリアンナとクリストフがみんなを誘って踊り出したのだ。
するとアルシャインがピアノを弾く。
「これ、隣国でも流行ってたのよ~!」
みんなで輪になって男女で手を合わせて回って手を叩いて、また反対に回って手を叩いて、男の子が隣の女の子に移るというフォークダンスだ。
「私も弾けるわ、アイシャママも踊って!」
そう言いフィナアリスがアルシャインを立たせて代わりにピアノを弾く。
「弾いた事はあるけど…踊った事は無いのよね~、あ、こう?」
「男の子と手を高く合わせて回るの!」
ティナジゼルが楽しそうにアルシャインに言う。
「回る時は片手でスカートを持ってスキップよ!」
アルベルティーナがそう言って回る。
「あはは、やだこれ楽しいのね!」
ぎこちないながらもアルシャインはリュカシオンと踊ってから次に来たノアセルジオと踊る。
「やーねー、なんか照れる…」
ノアセルジオの手が意外と大きくてごつかったのでアルシャインはドキドキしながらも手を合わせる。
「アイシャは意外と小さい手だよね」
そう言いにっこり笑い、ノアセルジオは指と指を絡ませるように握って回る。
するとアルシャインは真っ赤になって手をパーッと開く。
「ノア!」
「あはは、アイシャはシャイだなぁ」
笑いながら今度はちゃんと手を合わせて回る。
その次はカシアンだ…アルシャインはじっとカシアンを見てから、何かを警戒して一人でカシアンの周りを回る。
「アイシャ!そりゃないよ!」
「だってカシアンも手を握りそうなんだもん!」
そう言うとみんなが笑った。
「そんな事言うなら…!」
カシアンは強引にアルシャインの手を握ってクルクルと回した。
「ちょ、これ踊りになってない!」
「あるさ!どれだけ女の子が回れるかを見るやつ、ダンスの中間に!」
そうカシアンが言うと、リュカシオンがアルベルティーナの手を握ってクルクルと回し、ノアセルジオがユスヘルディナの手を握ってクルクルと回す。
ピアノもそれに合わせて鳴らされた。
すると周りが
「回って回ってお姫さま!」
と掛け声を言う。
舞踏会のお姫さまはクルクルと優雅に回るだろうという発想から、どれだけ回れるかを競う踊りでもある。
「いいわ、ひっさびさに回るわよ~!」
アルシャインはそう言ってカシアンの手を軸にして回り、今度はカシアンを回した。
「え、ちょ、手首っ」
手首をひねって回すので、カシアンが回れずに尻もちをついてみんなが笑った。
「駄目ね~カシアン!手首はこうひねるのよ」
アルシャインは言いながらみんなに教えて、またみんなで回って楽しんだ。
「回って回ってお姫さま!回った後は支えるよ!」
そう言い、フラフラになった女の子を男の子が支えるのだ。
そこを逆にアルシャインがクリストフを支えた。
「リフ上手いのね!」
「ふふふ、アイシャママのマネだよ!」
その次のメルヒオールも回るのが上手かった。
その日はみんな楽しくダンスをした。
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