2 / 11
2
しおりを挟む
山賊に襲われる数刻前ー。
舞踏会での騒動直後、俺は2人の騎士に連れられて別室にひとり軟禁されていた。
てっきり地下牢にでも入れられるかと思ってたのに、通されたのはお城の奥まった先にある貴賓室。
なんでだろう。
王子は俺のことをテオって呼んでたけど、テオって人が貴族だから?
暖炉でほどよく温められた部屋の中は美味しそうな匂いにあふれていて、腹のすいてた俺はテーブルにのってた食事をありがたくいただく。
「うまぁ・・・」
王子が言ってたランバート王国。
俺はその世界を知ってる。
それは前世でやったことのある、NL、BLなんでもありの選択分岐型の恋愛シュミレーションゲームで出てきた中世ヨーロッパのような世界だった。
ランバート国は穏健な王が治める豊かでいい国とあったけど、罪人の俺にまで、こんないい部屋に美味しいご飯まで用意してくれるのか。
あのザ!王子も、キラキラしてて超カッコよかったし。
俺、あの人から大勢の紳士淑女の前で婚約破棄されちゃったけど、このテオノアなんとかとして生きてきた記憶がないせいか、なにかの映画を見てるみたいであまり現実感がない。
着てる服も見慣れなさすぎて、バリバリ違和感を主張してくる。
王子とお揃いっぽい刺繍の柄が入った黒の礼装。
袖にフリルのついた手触りのいいブラウス。
あのあと返された短剣は、柄や鞘に品よく宝石があしらわれていた。
つまり、何もかもが高そう。
こんなの、日本で普通の大学生してた俺に絶対持てっこない。
けど、暖炉の上の鏡に映った俺は、黒目黒髪のフツメンだった。
背格好だけはまあまあいいガタイしてるかな?
それにしても、あまり取り柄のなさそうな見た目のテオがあんなに見目麗しい王子と婚約関係にあったとは驚きだ。
ここは同姓婚ができる世界で、男同士でも魔法を使えば子作りできる。
(不思議なことに、この世界の一般常識は頭に入ってるのに、登場人物やストーリーは全く思い出せない)
チートも加護もない異世界転生なんて、どんだけポンコツなんだ。
ふと、スープをすくっていたスプーンをおろす。
ひと息ついて脳裏に浮かぶのは、あの婚約破棄を言い渡された苛烈なシーン。
顔立ちは柔和なのにあの気迫、さすがは王族。
凛とした声は覇気があり言葉にも力があった。
おおかた王子とあの少女は相思相愛で、それに嫉妬したテオが何を思ったのか、短剣であの少女に切りかかりでもしたんだろう。
背中のドレスに短剣がかすったような跡があった。
鏡のなかにおさまるテオは落ち着いた佇まいで、とてもじゃないけどそんな思いきったことをする人に見えないけど、よっぽど追いつめられてたのかな。
そして王子の逆鱗に触れ婚約破棄された。
異世界転生でもバドエンのお約束パターンだ。
これから俺はどうなるんだろう。
表舞台を失脚して領地で隠棲とかならまだいいけど、死刑とかだったらやだな。
怖い。
どちらにしても、このままみんなに忘れられてひっそりと死ぬんだろうか。
自業自得とはいえ、なんてはかない人生。
あれ、なんだろ。
ポトポトとスープに水滴が落ちる。
頬に違和感を感じて手でぬぐえば、指先が濡れてた。
ああ・・・、泣いてるのか。
俺の気持ちと違うどこかで、テオが涙を流している。
そうか、テオは王子が好きだったんだな。
テオの悲しみがひたひたと心に押し寄せてくる。
テオ、君はこんな風に静かに泣く人生を送ってきた人なんだね。
そう思ったら俺まで悲しくなってきた。
この人は可哀想な人だ。
好きな人を思いながら、声も出さずに泣くなんて。
「テオっ!」
「!?」
俺以外は誰もいないはずの部屋の中から、誰かの声が聞こえてびっくりして振り向いたら、ちょっと年上っぽい男の人が立ってた。
壁の一部がぽっかりと開いて、暗い通路に続いている。
何その秘密通路!めっちゃお城あるあるなんですけど!
舞踏会での騒動直後、俺は2人の騎士に連れられて別室にひとり軟禁されていた。
てっきり地下牢にでも入れられるかと思ってたのに、通されたのはお城の奥まった先にある貴賓室。
なんでだろう。
王子は俺のことをテオって呼んでたけど、テオって人が貴族だから?
暖炉でほどよく温められた部屋の中は美味しそうな匂いにあふれていて、腹のすいてた俺はテーブルにのってた食事をありがたくいただく。
「うまぁ・・・」
王子が言ってたランバート王国。
俺はその世界を知ってる。
それは前世でやったことのある、NL、BLなんでもありの選択分岐型の恋愛シュミレーションゲームで出てきた中世ヨーロッパのような世界だった。
ランバート国は穏健な王が治める豊かでいい国とあったけど、罪人の俺にまで、こんないい部屋に美味しいご飯まで用意してくれるのか。
あのザ!王子も、キラキラしてて超カッコよかったし。
俺、あの人から大勢の紳士淑女の前で婚約破棄されちゃったけど、このテオノアなんとかとして生きてきた記憶がないせいか、なにかの映画を見てるみたいであまり現実感がない。
着てる服も見慣れなさすぎて、バリバリ違和感を主張してくる。
王子とお揃いっぽい刺繍の柄が入った黒の礼装。
袖にフリルのついた手触りのいいブラウス。
あのあと返された短剣は、柄や鞘に品よく宝石があしらわれていた。
つまり、何もかもが高そう。
こんなの、日本で普通の大学生してた俺に絶対持てっこない。
けど、暖炉の上の鏡に映った俺は、黒目黒髪のフツメンだった。
背格好だけはまあまあいいガタイしてるかな?
それにしても、あまり取り柄のなさそうな見た目のテオがあんなに見目麗しい王子と婚約関係にあったとは驚きだ。
ここは同姓婚ができる世界で、男同士でも魔法を使えば子作りできる。
(不思議なことに、この世界の一般常識は頭に入ってるのに、登場人物やストーリーは全く思い出せない)
チートも加護もない異世界転生なんて、どんだけポンコツなんだ。
ふと、スープをすくっていたスプーンをおろす。
ひと息ついて脳裏に浮かぶのは、あの婚約破棄を言い渡された苛烈なシーン。
顔立ちは柔和なのにあの気迫、さすがは王族。
凛とした声は覇気があり言葉にも力があった。
おおかた王子とあの少女は相思相愛で、それに嫉妬したテオが何を思ったのか、短剣であの少女に切りかかりでもしたんだろう。
背中のドレスに短剣がかすったような跡があった。
鏡のなかにおさまるテオは落ち着いた佇まいで、とてもじゃないけどそんな思いきったことをする人に見えないけど、よっぽど追いつめられてたのかな。
そして王子の逆鱗に触れ婚約破棄された。
異世界転生でもバドエンのお約束パターンだ。
これから俺はどうなるんだろう。
表舞台を失脚して領地で隠棲とかならまだいいけど、死刑とかだったらやだな。
怖い。
どちらにしても、このままみんなに忘れられてひっそりと死ぬんだろうか。
自業自得とはいえ、なんてはかない人生。
あれ、なんだろ。
ポトポトとスープに水滴が落ちる。
頬に違和感を感じて手でぬぐえば、指先が濡れてた。
ああ・・・、泣いてるのか。
俺の気持ちと違うどこかで、テオが涙を流している。
そうか、テオは王子が好きだったんだな。
テオの悲しみがひたひたと心に押し寄せてくる。
テオ、君はこんな風に静かに泣く人生を送ってきた人なんだね。
そう思ったら俺まで悲しくなってきた。
この人は可哀想な人だ。
好きな人を思いながら、声も出さずに泣くなんて。
「テオっ!」
「!?」
俺以外は誰もいないはずの部屋の中から、誰かの声が聞こえてびっくりして振り向いたら、ちょっと年上っぽい男の人が立ってた。
壁の一部がぽっかりと開いて、暗い通路に続いている。
何その秘密通路!めっちゃお城あるあるなんですけど!
1
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる