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33.マーフォークの村を支配下に

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 間もなく、僕たちはマーフォークの村を制圧した。
 降伏した村人たちは村長の家へと集まると、僕の姿を見て驚いていた。
「ほ、本物の……一角獣!?」
「そ、その角……ホンモノ?」
「そうだよ。触ってみるかい?」
「……ほ、本物だ!」
「恐ろしい魔王のダンジョンに取り込まれたと思っていましたが、ユニコーンだったとは……」

 村長が姿を現すと、村人たちは整列した。
 村長は僕の前に立つと、騎士のように跪いてから言う。
「ユニコーン様……村を危機から救って下さり、ありがとうございます!」
「うん……だけど、強硬派は一部が逃げ出し、川の対岸の岩場に身を潜めている。連中はいつ牙を剥くかわからない」
「はい……」
 村長が深刻な表情を頷くと、他の村人たちも頷いた。
「そうだよな。連中って……武器庫の武器を盗んでるんだろ?」
「ヤベーよ……」
「村長! こちらも強硬派の人質を取りましょう!」

 その話を聞いた村長は、険しい表情をしながら答える。
「それは困るな。向こうには密かに我々に情報を提供している人もいるのだ」
 その言葉を聞くと、村人たちも怒りを鎮めた。
「な、なるほど……それは、確かに……」
「命がけで情報を流してくれているんだもんな」
「ああ、人質作戦は無しだ」

 僕も頷いてから答える。
「この村の長を、エリアマスターに任命する。みんなは……」
「お待ちください、一角獣様」
「どうしたんだい村長?」
 そう聞き返すと、村長は部屋の隅に立っていた金色の鱗を持つ青年を呼び寄せた。
「私はもう歳です。ですから、エリアマスターには倅のマティスを……」

 マティスと呼ばれた青年は、村長の長男だ。
 彼が一族の者だというのは魚の部分を見ればわかるので、マーフォークたちを率いるのには打って付けの人材だろう。
「わかった。マティス……君をエリアマスターに任命する」
 そう言いながら僕が角を現して光らせると、マーフォークのマティスは「ははっ!」と答えながら、騎士のように跪いた。

「最初に君たちに命じるのは、逃亡した強硬派の討伐だ。完全に討伐して……この集落に平和をもたらすんだ!」
 マティスたちにそう命じると、彼らはしっかり「はい!」と返事をした。
「お任せください!」

 その様子を見ていた仔馬は、僕に視線を向けてくる。
「お父さん?」
「どうしたんだい?」
「マティスさんも、鏡を見れば特殊能力を持っているんじゃない? 確認してみようよ」
「そうだね」

 特殊能力と聞いてマティスも興味を持ったらしく、すぐに大きめの鏡を手に取っていた。
 僕もまた覗いてみると……

【SP100/100】
―――――――――――――――――――
100P エリアごと独立し反旗を翻す
 10P 魚の干物10キログラム製造
 20P マーフォークの傷薬製造
 40P 渡し舟製造
  5P マーフォークスピア製造
 10P ハルヴァード製造
 20P 武装サハギン召喚
100P 武装サハギン6体召喚

―――――――――――――――――――

 マティスの能力は、僕たちとは一味違っていて興味深かった。
 金貨や銀貨を出す能力の代わりに、魚の干物、薬、渡し舟を生産する力があり、更に武器を作るというのも独自色が強くて良いと思う。
 そして、モンスター召喚もできるのか。

 そんなことを考えながら見ていると、部下のマーフォークの1人が言った。
「若旦那。この武装サハギンってヤツを出してみたら?」
「そうっすよ。この100ポイントってのを出せば、1体増えてお得っぽいっすよ?」
「そうだね……じゃあ、出してみよう」

 マティスはサハギンを6体召喚すると、彼の目の前に劣化マーフォークと言える、モンスターサハギンが姿を現した。
「よし、さっそくこの6人に強硬派の討伐を行ってもらいましょう!」
 マーフォークの1人が言うと、別のマーフォークが反論した。
「いやいや、強硬派は14・5人いるんだぞ。こいつらだけだと……返り討ちが関の山だ」

 その話を聞いていたマティスは、僕を見てきた。
「一角獣様……援軍を出して頂けませんか?」
「仕方ないな。我が分身を1頭つけてやろう。ジルーはどうだ?」
「では、アタックドッグ9頭とコボルドを6人出すよ。もちろん、マーフォークのみんなも戦うんだよね?」

 ジルーがそう切り返したので、マーフォークたちも苦笑いしながら頷いた。
 さすがに、ここまで僕たちがお膳立てしたので、彼らも嫌とは言わなかった。

 こうしてマティスは、マーフォークの自警団員10人に、サハギン6人、更にアタックドッグ9匹、コボルド6人。ミニユニコーン1頭という戦力で、強硬派が逃げた対岸の岩場に攻撃を仕掛けることになった。



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