【完結R18】エリートビジネスマンの裏の顔

シラハセ カヤ

文字の大きさ
3 / 25
01.

03.軟禁

しおりを挟む



月曜、気分は最悪、身体もボロボロだ。
土日中、この男のいいようにされていた。

「この様子じゃ行けなそうだね、会社」
また私を見て満面の笑み。

「…会社に電話させてください」
「いいよ、掛けてあげる」
別の所に掛けないよう、ご丁寧に
私の上司の登録番号をタップされた状態で
携帯を渡される。

「もしもし」
「あっ、高瀬です…すみません、
 今朝から体調が悪くて、今日休ませてください」
「え、珍しいじゃん、どうしたの?熱は」
「少し、熱っぽいかもです…」

いつもは厳しくて細かくて、嫌いなのに、
今日は上司と話せて嬉しい。

「ちゃんと医者行けよ、お大事に」
「はい、すみません、ありがとうございます…」
流石に、これだけでは何も気付かれずに
無情にも通話は終わる。

「じゃあ僕は仕事行ってくるから
 ……逃げちゃダメだからね」




勝手に動いたら怒られる気がして、
朝ごはんから何も食べず、電気もつけずに
寝るという目的を達成するためのもの以外
何も無い部屋で、檜垣さんの帰りを待った。

定時は18時、営業職なので、接待がない日は
何かしら残業があるはずだ。

両手は離れないままだが、
自由に動き回れるようにはしてもらった。

逃げようと思えばいくらでも逃げられるが、
家はすぐ近くだし、檜垣さんの家を
無施錠で出ることが躊躇われた。

監禁されているのに
犯人に悪いことをできないなんておかしな話だ。
これまでの行いが良かったあの人を恨む。

早くともあ19時半、遅かったら23時頃まで
帰ってこないだろう。
毎日3食しっかり食べるタイプなので
流石にお腹が空いてくる。
悔しいが、事実私は檜垣さんの帰りを
心から待っていた。



ドアが開く音がする。
パチパチと電気のスイッチを入れる音。

私のいる部屋に真っ直ぐに向かってくる。
「…ただいま」

私がいてホッとしているのか、
気の抜けた顔をしている。

「電気くらいつけなよ」
まるで拗ねて真っ暗な部屋にいる奥さんに
言うように、溜息混じりで言う。
自分もどこかホッとしているのに、驚く。


「ご飯作るから待ってて」
ご丁寧に夕食まで用意してくれるとは。
気の利いた監禁だ。

温かくて美味しい食事に絆されて涙が出そうになる。
閉じ込められて頭がおかしくなりそうな時に
これは堪えた。


「お風呂一緒に入ろっか」
食事を終えて、後片付けもしてもらって、
檜垣さんが仕事の連絡を返し終えた頃に
声を掛けられる。

「…いいですよ」
私の素直な反応を見て一瞬動きが止まるが、
すぐ満面の笑みを浮かべる。不気味なくらいに。
嫌がったらもっと喜んで無理強いされるに違いない。私は全て素直に従うことにした。

これからどうなってしまうのだろうという不安には
蓋をして。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

処理中です...