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特別編2

第7話『さっそく助けてもらった。』

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 お互いの水着姿やツーショット写真を撮影した後、愛実が欲しいと希望した写真をLIMEで送信した。
 俺は男子更衣室に戻り、自分の荷物が入っているロッカーにスマホを入れた。
 愛実のところに戻ると、愛実は微笑みながら俺に小さく手を振ってくれる。離れたのは1分くらいなのに。こういうところも可愛いなって思う。

「お待たせ。屋内プールに行こうか」
「うんっ」

 愛実と手を繋いで、俺は屋内プールに入っていく。
 土曜日のお昼過ぎなのもあって、学生や親子連れを中心に結構な数のお客さんで賑わっている。外が暑いのもあって、まだ夏休みなんじゃないかと思えるほどだ。
 正面に見える青いコースのウォータースライダー、普通のプール、流れるプール、学校にあるような25mプール、子供でも安心な浅いプール、端の方にはたくさんサマーベッドが置かれているのも昔から変わらない。
 中学時代までに愛実とは何度も来たことがあるし、2週間ほど前にあおいとも一緒に来た。ただ、愛実と2人きりで来るのは初めてだから、屋内プールの景色がとても新鮮に感じられる。
 わぁっ……と、愛実は可愛い声を漏らして、

「リョウ君の言う通り、中も変わらず立派だね!」

 と、嬉しそうな笑顔でそう言った。これまでと変わっていないことが嬉しいのかもしれない。そうだろう、と俺が言うと、愛実は俺にニコッと笑いかけてくれた。可愛いな。

「おぉ、あの赤いビキニの女子、凄く可愛いな」
「だなぁ。胸もかなり大きいし。あの金髪の男子が羨ましいぜ。手を繋いでいるからきっと彼氏だろうし」

「いいなぁ、あの女の子。あんなにイケメンの男子と一緒で」
「いいよねぇ。きっとカップルだよ。でも、あの子は凄く可愛いもん。お似合いだよ」
「だねぇ。……あの女の子、本当に可愛いな」

 男女問わず、俺達のことを話している声が聞こえてきて。愛実が可愛いと褒めている声が多い。胸に関するコメントも聞かれるのでちょっとモヤッとした気持ちになるけど、恋人の水着姿が褒められるのは嬉しい。
 あと、俺が愛実と一緒にいることに関して、羨ましいといった言葉も聞こえてくる。ただ、妬ましさなどのマイナスな方のコメントが全然ないので良かった。
 また、俺達をカップルだと思っている人が多いからか、愛実はとても嬉しそうにしている。この笑顔を見ると、周りから注目が集まっているのも悪くないと思える。
 そういえば、あおいとプールデートに来たときも、水着姿のあおいを褒める言葉を結構聞いたっけ。俺の恋人と幼馴染は魅力的な容姿の持ち主だと再認識する。

「……愛実」
「うん?」
「俺達のことをカップルだって思ってくれる人が多いけど、水着姿の愛実が魅力的だから、愛実に言い寄ったり、何かしてきたりする人がいるかもしれない。愛実は海水浴のときにナンパされていたし、あおいとここにデートしに来たときにあおいがナンパされてた。何かあったらすぐに俺を呼んで。助けるから。まあ、一緒にいることがほとんどだろうけど」

 愛実のことを見つめながら俺はそう言った。
 愛実は夏休み中に行った海水浴で、海水浴場にあるお手洗いから戻るときにナンパされたことがある。そのときは俺が助けに行き、恋人のフリをして事なきを得たけど。今回もナンパされる可能性はゼロではないので、愛実に言っておきたかったのだ。
 愛実はとても柔らかな笑顔になり、

「分かったよ。ありがとう、リョウ君。恋人として頼りにしてるよ」

 と言ってくれた。本当に可愛い恋人だ。恋人として愛実のことを守ろうと胸に誓った。

「ああ。……よし、準備運動するか」
「そうだね。準備運動は大切だもんね」
「そうだな」

 ケガをしてしまうかもしれないし。そうなったら、プールデートが楽しめなくなる。しっかりと準備運動をしよう。
 俺達は屋内プールの端の方に移動し、準備運動を始める。愛実のことを見ながら、腕や脚を中心にストレッチしていく。
 準備運動をする愛実……とても綺麗だな。あと、体を動かすと大きな胸がプルンと揺れて。そのことに視線が釘付けになってしまう。

「どうしたの? 私のことをじっと見て」
「準備運動をする愛実の姿が綺麗だと思って」
「ふふっ、そっか。ありがとう。リョウ君も素敵だよ。ジョギングをして筋肉が付いたんだなって分かるし」
「そうか。ありがとう」

 ジョギングをするモチベーションが上がっていく。これからも無理のない程度にジョギングしていこう。

「……よし、これでOKだな」
「私も終わったよ」
「うん。じゃあ、プールでいっぱい遊ぶか」
「うんっ!」
「愛実はまずは何をして遊びたい?」
「そうだね……まずは普通のプールに入って、リョウ君と水をかけ合いたいかな。プールの水に慣れたいというか」
「おぉ、いいな。海水浴のときもまずは水をかけ合ったな。じゃあ、まずは普通のプールに行こう」
「うんっ」

 愛実と手を繋いで普通のプールに向かう。
 普通のプールはスイムブルーの中ではメインとなっているプールの一つ。大きさは一番だ。それもあって、プールの中にいるお客さんはそれなりにいる。
 俺達は普通のプールに入る。俺はへそのあたりまで、愛実は胸のあたりまで水に入っている状況だ。

「あぁ、冷たくて気持ちいい!」
「そうだな。外が暑いから、冷たいのが本当に気持ちいいな」
「うんっ」

 気持ちいいと言うだけあって、愛実はほんわかとした笑顔を見せる。可愛いなぁ。今すぐにスマホを持ってきて写真に収めたいほどだ。さっそく、プールに遊びに来て良かったと思える。
 水をかけ合うのが目的なのもあり、お互いに何歩か後ろに下がる。

「よーし、いくぞ。それっ!」

 最初なので、優しい手つきで愛実に向けて水をかけていく。俺がかき上げたプールの水は愛実の顔中心にかかる。

「きゃっ。冷たいっ」

 愛実は可愛い声を上げると、楽しげな笑顔で笑う。可愛い。超可愛い。また、プールの水で濡れたのもあり、ちょっと煌めいているようにも見えて。

「私もいくよ。それっ!」

 笑顔でそう言うと、愛実は俺に向かってプールの水をかけてくる。その水は俺の顔にクリーンヒット。

「冷たっ! 気持ちいいな!」
「冷たくて気持ちいいよね。もうちょっとやろう?」
「ああ。いくぞ!」
「私も」

 それからも、愛実とプールの水をかけ合っていく。
 水をただかけ合うだけなのにこんなにも楽しいなんて。それはきっと、相手が恋人の愛実で、愛実も楽しげな笑顔になっているからだろう。
 愛実に定期的にかけてもらっているのもあり、水から出ている部分も冷やされていく。また、顔にも何度も水がかかるけど、海水浴のときとは違って目が痛くならないな。
 お互いに水をかけ合うことをとても楽しんでいたからだろうか。気付いたときには、愛実のすぐ後ろにはビーチボールを使って遊んでいる黒いビキニ姿の女性がいた。

「愛実! 危ない! うしろ!」
「えっ?」

 俺の言葉もあってか、愛実は後ろに振り向く。しかし、その直後、

「うわっ!」
「きゃあっ!」

 愛実は後ずさりしている黒いビキニの女性とぶつかってしまい、前方に向かって倒れそうになる。

「愛実っ!」

 俺は急いで愛実のところへ駆け寄る。それもあって、愛実がプールに倒れてしまう前に抱き留めることができた。

「大丈夫か、愛実」
「……うん、大丈夫だよ。ありがとう、リョウ君」

 愛実は俺を見上げながらニコッと笑う。特にケガもなさそうだし一安心だ。

「大丈夫ですか?」
「気付かずごめんなさい」

 愛実とぶつかった黒いビキニの女性と、彼女と一緒に遊んでいると思われるビーチボールを持った黄色いビキニの女性が愛実に謝罪する。ちょっと申し訳なさそうにしている。
 愛実は女性達の方に振り向き、

「気になさらないでください。私も気づけなくてすみません」

 いつもの優しい口調でそう謝罪し、女性達に向かって頭を下げた。
 女性達は再び「すみません」と謝罪して、俺達に軽く頭を下げてこの場を立ち去っていった。穏便に済んで良かった。
 愛実は再び俺の方に向く。愛実の顔には嬉しそうな笑みが浮かんでいて。

「ぶつかったけど、リョウ君に抱き留めてもらえて嬉しいよ。さっそく私を助けてくれたし」

 だから、愛実は嬉しそうな笑顔になっているんだな。

「愛実らしいな。まあ、ハプニングが原因だけど、水着姿の愛実を抱きしめられたのは嬉しいよ」
「リョウ君がそう言ってくれて嬉しい。そういえば、海水浴で磯遊びをしたときも、転びそうになった私を抱き留めてくれたよね」
「岩場で足を滑らせたんだよな。あのときは後ろから抱き留めたっけ」
「そうだったね。あのときも今回も私を抱き留めてくれて。そのことに安心して。リョウ君のことが好きだなって改めて思うよ」
「愛実……」
「あと、プールの冷たさもいいけど、リョウ君の体の温かさもいいね」

 柔らかい笑顔で俺を見つめながら、愛実はそう言ってくれた。愛実の今の言葉にキュンとなって、体がちょっと熱くなったのが分かった。この熱もきっと愛実に伝わっているのだろう。

「そうか。嬉しいよ。俺も……愛実の体の温かさがいいなって思うよ」
「ありがとう、リョウ君」

 愛実はお礼を言うと、右の胸元にあるキスマークのところにキスした。軽く触れる程度だったけど、愛実の唇の柔らかさや温もりがはっきりと分かって。
 愛実のキスもあって、体の熱がさらに強くなっていく。ただ、それは結構心地良く感じられた。
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