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特別編2

エピローグ『いいスタートを切れた。』

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 サマーベッドで休憩をした後は愛実と一緒に25mプールで泳いだり、ウォータースライダーで2人用の浮き輪に乗って何回か滑ったりするなどしてたくさん遊んだ。
 この前のあおいと同じく、愛実と一緒に屋内プールで遊ぶのはとても楽しくて。だから、時間はあっという間に過ぎていって。

「……もう、そんな時間なのか」

 ふと、屋内プールの壁に掛けられている時計に視線を向けると、時計の針は午後6時近くを指していた。

「6時近くなんだ。いっぱい遊んだ自覚はあったけど、もうそんな時間になっていたんだね。とても楽しかったからかな」
「きっとそうだろうな。……スイムブルーは夜までやっているけど、どうする?」
「帰ることを考えたら、これで遊ぶのを終わる方がいいかな。夕飯を用意してくれているし」
「うちもそうだな。じゃあ、今回はここまでにするか」
「うんっ」

 愛実は笑顔で首肯した。
 俺達は屋内プールを後にする。
 水着に着替えたときと同じく、更衣室の前で待ち合わせするのを約束して、俺は男性用の更衣室に入った。
 水着から私服に着替えている人がそれなりにいる。シャワールームに向かって数人の列もできているし。そういえば、あおいとのプールデートから帰るときもこんな感じだったな。この時間帯になると帰る人が多いのかもしれない。
 服に着替える前に、シャワールームで全身の汗や汚れを洗い流す。今日はプールにたくさん入ったけど、冷たい水に当たる感覚がいいなって思う。
 シャワーを浴びた後、水着から私服に着替えていく。今日は屋内プールでたくさん遊んだので、この服を着るのが結構久しぶりな感じがする。
 着替え終わり、洗面台にあるドライヤーで髪を乾かした後、更衣室を出る。そこには……まだ愛実の姿はなかった。

「気長に待っていよう」

 きっと、愛実もシャワールームで体を洗い流していたり、髪を乾かしたりしているだろうから。あとはスキンケアもしているかもしれないし。
 スラックスのポケットに入っているスマホを手にして、アルバムアプリで写真を見ていく。
 水着姿の愛実を見られないのは名残惜しいけど、屋内プールで遊ぶ前に写真をたくさん撮って良かったな。写真に写っている水着姿の愛実を見ていると癒やされる。
 あの赤いビキニ……本当によく似合っていたな。来年の夏も見たいけど、愛実の胸は現在進行形で大きくなっているから、見られる可能性は低そうかな。ただ、愛実は可愛くてスタイルが抜群だから、色々な水着が似合いそうだ。今日のビキニとは別の水着姿も見てみたい気持ちもある。来年の夏を楽しみにしよう。

「お待たせ、リョウ君」

 愛実の声が聞こえたのでそちらを見ると、すぐ近くにスラックスにノースリーブのパーカー姿の愛実が立っていた。この姿を見るのも随分と久しぶりな気がする。

「何かいいことがあった? スマホを見ていい笑顔になっているから」
「写真を見ていたんだ。屋内プールに入る前に撮った写真を。愛実のビキニ姿が可愛いなって思って」
「そうだったんだ。リョウ君、凄く気に入ってくれているんだね。胸のサイズ的に今後着られるか分からないけど、大切に保管するよ」
「そうか」

 今後、赤いビキニを着た愛実を見られるかは分からない。ただ、ビキニを保管するという言葉を聞いて、心が少し温まった。

「じゃあ、帰ろうか」
「そうだな」

 俺達はスイムブルー八神を後にして、清王八神駅に向かって歩いていく。
 外に出ると、午後6時を過ぎているのもあり、空がかなり暗くなっていた。もう日の入りの時間なのだろう。
 また、日が暮れたのもあって、スイムブルーに来たときのお昼過ぎに比べて暑さが和らいでいる。たまに吹く柔らかな風が涼しくて気持ち良く感じられる。

「風が気持ちいいね、リョウ君」
「そうだな。晴れていると昼間は暑いけど、夜は過ごしやすくなってきたよな」
「そうだね。秋になったんだなって実感するね」
「ああ」

 いずれは昼間も過ごしやすくなって、そして夏の暑さが恋しくなるほどに寒くなっていくのだろう。季節は流れていっても、愛実とは変わらずに今のように手を繋いでいたいな。
 数分ほど歩いて清王八神駅に到着する。
 ホームには2本の電車が止まっていた。1本は今から2分後に発車する急行電車。もう1本は急行列車の10分後に発車する特急列車だ。
 急行列車は先発なのもあって、シートはほぼ全て埋まっていた。それに対して後発の特急列車はガラガラ。最寄り駅である調津駅は特急列車も停車する駅なのもあり、俺達は特急列車に乗ることに決めた。
 行きと同じで、進行方向の先頭車両に乗る。
 先頭なのもあって、人は全然いない。もちろん、余裕で愛実と隣同士の席に座ることができた。

「ほとんど人がいないね」
「ああ。ここは先頭車両だし、もうすぐ発車するけど、先発の電車が止まっているからな。プールでいっぱい遊んだ後だし、確実に座れるこっちで良かったと思うよ」
「そうだね。シートに座れて気持ちいいな」

 柔らかな笑顔でそう言うと、愛実は頭を俺の右肩にそっと乗せてくる。

「……こうしているともっと気持ちいいな。だから、帰りも……調津に着くまではこうしていていい?」
「ああ、もちろんさ。愛実に頭を乗せてもらえると、俺ももっと気持ちいいから」
「ありがとう、リョウ君」

 ちゅっ、と一瞬だけど、愛実は俺にキスしてきた。そのことでプールで遊んだ疲れが、体がすーっと抜けていく感じがした。

「今日のプールデート……とっても楽しかったな。リョウ君と2人きりでプールへ遊びに行くのは初めてだったけど、凄くいいなって思った」
「そうか。そう言ってくれて嬉しいよ。俺も今日のプールデート……とても楽しかった。プールデートしたいって誘ってくれてありがとう」
「いえいえ。これからも夏とか暑い時期にはプールデートしようね」
「ああ」

 夏中心の定番デートの一つになりそうだ。
 それから電車が発車するまでは今日のプールデートのことを話す。水をかけ合ったり、ウォータースライダーを何度も滑ったり、流れるプールでゆったりしたり、俺が逆ナンされたりするなど盛りだくさんだったのだと実感する。
 俺達の乗る特急電車は定刻通りに出発する。

「ねえ、リョウ君」
「うん?」
「とてもいい2学期のスタートを切れたなって思うよ。学校では席替えをしてリョウ君と隣同士になれて、あおいちゃんと理沙ちゃんとはご近所さんになれて。放課後や休日にはリョウ君と楽しくデートできて」

 愛実はとても嬉しそうな笑顔でそう言ってくれる。
 愛実が今言ったことを中心に、2学期が始まってからのことが次々と思い浮かぶ。2学期がスタートしてまだ3日目だけど、色々なことがあったのだと実感する。

「そうだな。学校でもプライベートでも愛実と一緒にいられて、俺も2学期のいいスタートを切れたなって思う。2学期はとても楽しく過ごせそうだ」
「そうだね! リョウ君とはもちろん、あおいちゃんや理沙ちゃん達とも一緒に楽しい2学期を過ごしていきたいね」
「ああ。楽しく過ごせるように頑張ろう」
「うんっ!」

 愛実は笑顔で可愛く返事をする。愛実の笑顔を見ていると、高2の2学期はとても楽しく過ごせそうだと強く思える。恋人の愛実だけでなく、10年ぶりに再会した幼馴染のあおいや、道本達といった友人もいるから。
 デートのことなどを話したり、車窓から見える夜景を見たりするのを楽しみながら、愛実との電車の時間を楽しく過ごすのであった。



特別編2 おわり



次のエピソードから特別編3です。
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