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特別編3

第9話『元気そうな姿を見られて良かった。』

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 あおいが愛実にいちごゼリーを食べさせた後、俺とあおいは今日の授業のノートを愛実に貸し、今日の授業で出た課題を渡して、一旦それぞれ自宅に帰ることに。午後6時過ぎに、部活が終わった道本達がお見舞いに行くタイミングで再び愛実の家に行くことを約束して。愛実は昨日のあおいと違って咳は出ていないけど、風邪がうつらないようにこのような形をとることにした。
 ちなみに、今日は体育があったため、教室で授業を受けたのは5教科。なので、あおいが3教科分、俺が2教科分のノートを愛実に貸している。
 また、ノートの内容や課題で分からないところがあったら、LIMEの個別トークや3人でのグループトークでメッセージや通話を使って質問することに決めた。
 帰宅し、制服から普段着に着替えた後、さっそく今日の授業で出た課題をすることに。どの教科も、今日の授業で習った内容なのでいい復習になっている。たまに、

『あおいちゃん、リョウ君、日本史のノートで質問してもいい?』

『涼我君。数学Ⅱの課題で分からないところがありまして……』

 愛実はもちろん、あおいからも質問されることがあって。自分の部屋で1人でいるけど、3人一緒に勉強している感じがして結構楽しかった。



 午後6時10分。
 俺は自宅を出て、自宅の前であおいと道本達のことを待つ。あおいの提案で、ここで4人と待ち合わせをして、愛実のお見舞いに行くことになっている。愛実も5人で来ることを了承している。
 つい先ほど、LIMEのいつもの6人のグループトークに、道本達から部活が終わったとメッセージが届いた。なので、自宅を出てここで待っている次第である。
 もう日が暮れて、空もかなり暗くなっている。それに伴い、気温も下がって過ごしやすくなっている。夏休み中は夜も蒸し暑かったから、秋になったのだと実感する。

「いってきます」
「いってらっしゃい」

 あおいと麻美さんの声が聞こえたので、あおいの家の方を見ると……膝丈よりも長いスカートに半袖のパーカー姿という私服姿のあおいが家から出てきた。愛実の家に行くので、先ほどと同じくマスクを付けている。
 家から出たあおいはすぐに俺に気付き、笑顔で手を振りながらこちらにやってきた。

「涼我君、こんばんは」
「こんばんは、あおい。その服、似合ってるな」
「ありがとうございます。涼我君もスラックスとワイシャツ姿が似合っていますよ」
「ありがとう」

 今のような服装はよくするけど、あおいに似合っていると言われて嬉しいな。あおいも同じような気持ちだろうか。

「1人で課題をやりましたが、涼我君のおかげで全て終わらせられました。ありがとうございました」
「いえいえ。俺もいい勉強になったよ。俺も課題が終わったし」

 また、愛実も俺達が貸した今日の授業のノートを写し終え、明日提出する必要がある課題も終わらせることができた。なので、この後に俺達はノートを返してもらう予定だ。
 愛実は昨日のうちに予習したり、俺達にLIMEで質問してきたりしたのもあり、今日の授業の内容は理解できたとのこと。さすがである。
 現在放送されているアニメのことであおいと話していると、

「おっ、麻丘と桐山がいたぞ!」
「本当だ」
「2人ともこんばんは」

 部活終えた道本達がやってきた。ただし、学校にいるときとは違って、3人ともマスクを着用している。3人が俺達に向かって手を振ってきているので、俺達も彼らに向かって手を振った。

「おっ、みんなお疲れ様」
「お疲れ様です!」

 俺達のところにやってきた道本達に労いの言葉を掛ける。それに対して3人は「ありがとう」とお礼の言葉を言う。マスクを付けているけど、3人が笑顔なのはすぐに分かる。

「道本達もマスクを付けているんだな」
「ちょっと予想外です」
「まあ、確定ではないとはいえ、昨日はあおい、今日は愛実が具合が悪くなったからね。愛実の体調も良くなったし、お見舞いの時間も短いけど……マスクをするに越したことはないと思って」
「それで、ここに来る途中にあるドラッグストアでマスクを買って、さっそく付けたんだ」
「オレは顔がデカいけど、サイズのデカいマスクがあって良かったぜ!」

 鈴木が明るく話すので、俺達5人の間に笑いが生まれる。
 よく見てみると……道本と海老名さんが付けているマスクと、鈴木が付けているマスクはデザインが少し違うな。鈴木は顔を含めて全身が普通の人よりも大きいからなぁ。大きめのマスクじゃないと圧迫感を感じたり、紐を掛ける耳が痛くなったりするのかもしれない。
 そういえば、子供や女性用といった普通よりも小さめのサイズのマスクは売っているけど、大きいサイズのマスクはあまり売っていないな。

「じゃあ、みんな集まったし、愛実の家に行くか」

 俺達は愛実の家の前に行き、俺がインターホンを押した。

『はい。……あっ、涼我君達来てくれたのね』

 と、インターホンのスピーカーから真衣さんの声が聞こえた。

「はい。今度は道本達とも一緒に来ました」
『ありがとう。すぐに行くわ』

 そう言う真衣さんの声は少し弾んでいた。
 それから程なくして、玄関の扉が開かれ、真衣さんが姿を現す。俺達が「こんばんは」と挨拶すると、真衣さんは嬉しそうな様子で「こんばんは」と挨拶した。

「みんな、愛実のために来てくれてありがとう。理沙ちゃん達は部活の後に。さあ、上がって。愛実は普段とほとんど変わらないところまで元気になっているわ」
『お邪魔します』

 俺達は愛実の家に上がり、2階にある愛実の部屋の前まで向かう。
 俺が部屋の扉をノックして、

「愛実。道本達とも一緒にお見舞いに来たよ。入っていいかな」

 部屋の中にいる愛実に向かってそう声を掛ける。

『どうぞ』

 部屋の中から愛実の返事が聞こえた。その声もいつもと変わらない感じだ。
 入るよ、と俺が言って、愛実の部屋の扉を開ける。
 愛実はベッドの上で腰を下ろしており、俺達に向かって可愛い笑顔で手を振ってくる。俺達がお見舞いに来たからか、愛実もマスクを付けていた。

「みんな来てくれてありがとう。あと、理沙ちゃん達は部活お疲れ様」
「ありがとう、愛実。元気そうで良かったわ」
「そうだな、海老名。昨日の桐山と同じく、香川もその日のうちにだいぶ良くなって安心した」
「そうだな! ここは家だけど、元気そうな香川を見られて良かったぜ!」

 海老名さんと道本はほっとした様子で、鈴木は嬉しそうな様子で愛実にそう言った。

「あと、リョウ君とあおいちゃんはノートを貸してくれてありがとう。分からないところも教えてくれたから、授業についていけなくなることはないと思う」
「それなら良かった」
「愛実ちゃんの力になれて嬉しいです!」

 あおいはとっても嬉しそうに言う。昨日は自分が愛実にノートを貸してもらい、分からないところを教えてもらったから、愛実の力になれることがとても嬉しいのだろう。

「今の様子なら、愛実は明日からまた学校に来られそうね」
「うん、たぶん行けると思う。みんな、心配掛けてごめんね」
「いいのよ」

 海老名さんは優しい笑顔でそう言うと、スクールバッグとエナメルバッグを床に置いて、愛実のことをそっと抱きしめた。中学時代から、海老名さんは愛実のお見舞いに行くと抱きしめることが多かったっけ。

「愛実の元気そうな姿を見られたから。良かった」
「ありがとう、理沙ちゃん」
「……学校でみんなとも話したけど、お見舞いのときには病気がうつらないように気をつけないといけないわね」
「そうだね。今回の風邪があおいちゃん由来だって決まったわけじゃないけど、気をつけなきゃいけないなって思ったよ」

 静かな声色でそう言うと、愛実は両手を海老名さんの背中の方に回す。海老名さんから優しい口調で注意を受けたけど、愛実は嬉しそうにしている。
 愛実と海老名さんが抱きしめ合っているのが羨ましく思ったのか、あおいは2人のところに行き、両手を大きく広げて2人を抱きしめていた。いい光景だ。

「今日もこうして6人で集まったけど、全員マスク姿だから何だか新鮮だな!」
「そうだな、鈴木。全員マスクを付けるなんてこと、これまで一度もなかったもんな」
「確かに」

 と、鈴木と道本の会話に俺は頷く。
 ただ、今回のことを通して、お見舞いに行くときはマスクを付けるようになり、6人でいるときも全員がマスクを付けているのが普通になるかもしれない。
 それから少しの間、俺達6人は談笑するのであった。
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