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いつも寂しそうにしている千景が、ずっと気になっていた。
笑ったところを見たことがなかったから、笑顔が見てみたい。最初はただそんだけの理由で話しかけていたように思う。
千景は、話すのが苦手なようで、話し相手が怒らないかどうかビクビクしながら話すから、タドタドしくて友達がいなかった。けれど俺は、話すのも食べるのも、ゆっくりした時の中で生きているような千景の隣にいると、とても安心した。
千景は体も強い方ではなかったし、なんと言っても運が悪くて俺の前でだってしょっちゅう危ない目にあっていた。
ほっとけなかった。
それがいつしか好きに変わって、何者にも変えがたい愛に変わった。
千景が、真っ赤な顔で俺に告白してきた時は、本当に天にも登る気持ちで……それなのに、そうだったはずなのに、俺は千景を裏切ってしまった。
和樹と付き合ったのは、特に深い考えがあってのことではなかったけれど、和樹からの告白と同時に1年の余命しかないと聞いて、かわいそうに思えた。
だから1年なら付き合うと答えてしまった。
1年なら千景は待ってくれると思った。
ゆっくりした時の中で生きている千景は、人に対して怒ったところを見たことがない。
だから、許してくれると思っていた。
千景に別れ話をして、和樹と付き合っている最中、千景が和樹をいじめていると噂がたった。
千景を屋上に呼び出して、待っていると、千景は俯いたままやってきた。
「千景。和樹を虐めているって聞いたけど」
「っ」
千景が言葉に詰まって、急いでスマホを取り出して、文を打つ。
『ごめん。今声が出ないから、これで話すね。僕は和樹くんと話したこともないんだ。だから虐めてないよ』
スマホの画面を見て、自分で眉間にシワが寄るのがわかった。
こんなタイミングで都合よく声が出なくなるなんてことがあるだろうか。
和樹から直接、泣きながらいじめの内容を聞いていたこともあって千景に対して初めて不信感が湧いた。
「あのさ。和樹が言ってたんだよ。千景にいじめられてるって」
千景はプルプルと震えて、その顔は青ざめているように見えた。
『僕は、本当に虐めてなんかない。信じてよ』
スマホの画面にはそんな文章が映し出されている。
けれど、それも演技なのかもしれない。
千景は俺しか頼る人がいないから、それを取られまいと必死なんだろ?
「その声が出ないってのもさ、俺に構ってもらうための嘘だろ? いいよそう言うの」
『これは、さっき殴られて叫んでたら出なくなって』
「いいって。千景、どこかで聞いたんでしょ? 俺と和樹が付き合うことになったきっかけ」
俺が、和樹に同情して1年付き合うことにしたと知ったから、自分も可哀想アピールしてるんだろ。
「だから、そう言うのもういいって。和樹はそんな嘘なんかじゃなくて、本当に病気なんだ。1年持つか分からないって心臓の病気。可哀想だろ?」
そこまで言って、俺は口をつぐんだ。
千景が傷ついた顔をしていた。
俺に対してはここ最近向けられることのなかった心を閉ざした顔だ。
今俺はなんて最低なことを言った?
わかってるのに。千景がそんなことをするはずないって分かってるのに、俺は自分が和樹と付き合うことの正当性を得るように、千景が悪いことにしたくて言ったんだ。
「和樹が俺のことが好きだから1年でいいから思い出として付き合って欲しいって。だから俺は和樹と付き合うことにしたんだ。千景は元気だから大丈夫でしょ? 1年くらい我慢できるでしょ? 1年したら戻ってきてあげるから虐めなんてするなよ。ね?」
言い訳のように口からついて出た言葉はもっと最低で、和樹のことが好きなわけじゃないから、1年くらいなら待てるだろ? と俺は自分自身の情けなさを全て千景に押し付けたような言葉だった。
笑ったところを見たことがなかったから、笑顔が見てみたい。最初はただそんだけの理由で話しかけていたように思う。
千景は、話すのが苦手なようで、話し相手が怒らないかどうかビクビクしながら話すから、タドタドしくて友達がいなかった。けれど俺は、話すのも食べるのも、ゆっくりした時の中で生きているような千景の隣にいると、とても安心した。
千景は体も強い方ではなかったし、なんと言っても運が悪くて俺の前でだってしょっちゅう危ない目にあっていた。
ほっとけなかった。
それがいつしか好きに変わって、何者にも変えがたい愛に変わった。
千景が、真っ赤な顔で俺に告白してきた時は、本当に天にも登る気持ちで……それなのに、そうだったはずなのに、俺は千景を裏切ってしまった。
和樹と付き合ったのは、特に深い考えがあってのことではなかったけれど、和樹からの告白と同時に1年の余命しかないと聞いて、かわいそうに思えた。
だから1年なら付き合うと答えてしまった。
1年なら千景は待ってくれると思った。
ゆっくりした時の中で生きている千景は、人に対して怒ったところを見たことがない。
だから、許してくれると思っていた。
千景に別れ話をして、和樹と付き合っている最中、千景が和樹をいじめていると噂がたった。
千景を屋上に呼び出して、待っていると、千景は俯いたままやってきた。
「千景。和樹を虐めているって聞いたけど」
「っ」
千景が言葉に詰まって、急いでスマホを取り出して、文を打つ。
『ごめん。今声が出ないから、これで話すね。僕は和樹くんと話したこともないんだ。だから虐めてないよ』
スマホの画面を見て、自分で眉間にシワが寄るのがわかった。
こんなタイミングで都合よく声が出なくなるなんてことがあるだろうか。
和樹から直接、泣きながらいじめの内容を聞いていたこともあって千景に対して初めて不信感が湧いた。
「あのさ。和樹が言ってたんだよ。千景にいじめられてるって」
千景はプルプルと震えて、その顔は青ざめているように見えた。
『僕は、本当に虐めてなんかない。信じてよ』
スマホの画面にはそんな文章が映し出されている。
けれど、それも演技なのかもしれない。
千景は俺しか頼る人がいないから、それを取られまいと必死なんだろ?
「その声が出ないってのもさ、俺に構ってもらうための嘘だろ? いいよそう言うの」
『これは、さっき殴られて叫んでたら出なくなって』
「いいって。千景、どこかで聞いたんでしょ? 俺と和樹が付き合うことになったきっかけ」
俺が、和樹に同情して1年付き合うことにしたと知ったから、自分も可哀想アピールしてるんだろ。
「だから、そう言うのもういいって。和樹はそんな嘘なんかじゃなくて、本当に病気なんだ。1年持つか分からないって心臓の病気。可哀想だろ?」
そこまで言って、俺は口をつぐんだ。
千景が傷ついた顔をしていた。
俺に対してはここ最近向けられることのなかった心を閉ざした顔だ。
今俺はなんて最低なことを言った?
わかってるのに。千景がそんなことをするはずないって分かってるのに、俺は自分が和樹と付き合うことの正当性を得るように、千景が悪いことにしたくて言ったんだ。
「和樹が俺のことが好きだから1年でいいから思い出として付き合って欲しいって。だから俺は和樹と付き合うことにしたんだ。千景は元気だから大丈夫でしょ? 1年くらい我慢できるでしょ? 1年したら戻ってきてあげるから虐めなんてするなよ。ね?」
言い訳のように口からついて出た言葉はもっと最低で、和樹のことが好きなわけじゃないから、1年くらいなら待てるだろ? と俺は自分自身の情けなさを全て千景に押し付けたような言葉だった。
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