僕が死んだあと、あなたは悲しんでくれる?

いちみやりょう

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今日も快晴の空を見上げて、僕は考え事をしていた。
僕がお腹の中にいた時から、ずっと僕のそばに居続けたというフェルレントも、最近は溜まっていた仕事を再開させて、僕は1人で居る時間が出来た。

「千景様、お茶にしませんか?」
「アダンさん。うん、ありがとう」

お茶の時間は大体は庭に出るか、部屋で飲むかで、今日は庭で飲むことにした。
椅子に座って庭を見渡すと、僕の墓参りをしている使用人の姿が見える。これは最近は見慣れた光景だ。

「どうぞ、お熱いですのでお気をつけください」
「ありがとう」

アダンから紅茶を受け取り、そっと口をつけると、ダージリンの香りが鼻を抜けた。

「……千景様、何かお悩みですか?」
「え? 分かる?」
「ええ。ひょっとして、旦那様が最近お忙しいのと関係がおありですか?」
「え?」
「つまり……寂しい、とか」
「えっ!? そんな、違うよ! えっと、最近フェルレントの誕生日を聞いたんだけど、はぐらかされちゃって。フェルレントは僕を生まれた時からずっと見てて僕の誕生日だってなんだって知ってるのにって寂しくなっちゃったんだ」
「はぐらかされた……? 旦那様が? どのように言っておりましたか?」

アダンが目を見開いて尋ねた言葉に、僕は頷いた。

「えっと、“生まれた日付けは覚えていない”って。あと“千景の誕生日を祝えるだけで私は幸せだから私のことを祝おうとしなくても大丈夫”だって」
「それは、まさに本心からそうお思いなのでしょう。こちらの世界の種族は人間と比べるとはるかに長く生きますから、誕生日は覚えていないことが多いんです」
「そうなの?」
「ええ。ですが、こちらで記録を探し出して、旦那様のお生まれになった日を調べることも可能ですよ。少しばかり時間をいただくことになりますが」
「本当っ!? ありがとう! お願いしてもいい……?」
「かしこまりました。お任せください」

アダンは胸に手を当てて、ウィンクしてきた。
顔が整った壮年男性なので、それがやけに様になっていた。

僕にも何か手伝えることがないか尋ねたけど、それは大丈夫だと丁重に断られてしまい、フェルレントへのプレゼントを考えておく時間にした。

フェルレントは、早ければ夕方くらいに帰ってくるし、遅いと日付も変わった後になる。
死神の仕事は死者の道案内だって言っていたけど、フェルレントの仕事はその死神達の統率らしい。フェルレントに仕事の話を聞いた時、『つまり、千景に分かりやすく説明すると、私の仕事はエリアマネージャーだよ』と言っていた。
僕はアルバイトもしたことがないままだったので、そう言われてもいまいちピンと来なかったけど、なんだか忙しそうなことだけは分かった。
それでもちゃんと僕との時間を作ってくれて、その時間には存分に愛を伝えてくれるので、僕がフェルレントに何かできることはないのかと思っていた。
僕がまだ生きていた頃、18歳の誕生日の3日後に、フェルレントは僕におめでとうと言ってくれた。
しかも、実際は僕が認識することができなかっただけでフェルレントは当日にも言ってくれていたらしい。
誰かから生まれたことをお祝いされるのは、とても嬉しいことだと僕は思う。
それに大切な人の大切な日を、僕も一緒に祝いたい。

フェルレントの誕生日が分かる日までに、誕生日に何をあげたら良いのかアダンに相談すると、彼は真っ先にそれならアクセサリーがいいでしょうとお勧めしてくれた。しかも妻から夫へのプレゼントなら手作りのアクセサリーを贈るのがいいらしい。
アダンが材料を揃えてくれたので僕は指輪を作り始めた。
粘土みたいなものに、魔石を砕いたものを入れておけばお守りみたいな扱いになるらしい。
それをフェルレントが寝ている間にこっそり測っておいた指の大きさに合わせて成型していく。
何回も失敗して、最初からやり直した。

そうしている間に、使用人たちが記録を確認してくれてフェルレントの誕生日を知ることができた。
しかもその日は1ヶ月後に迫っていた。
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