(完結)好きな人には好きな人がいる

いちみやりょう

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会長視点2

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「最近、毛色の違った生徒と一緒にいるんだって?」
「金田くん……。何の話だろう?」
「あはは。隠したって無駄だよ。放課後、遅い時間にここで仲良くしているって、一部では噂になってるんだよ? 野田くんだったかなぁ。可愛い子だよね」

金田はニヤニヤと意地悪く笑いながらそう言った。童顔の顔が悪意ある笑顔をしているというのは、それだけでゲスさが増す。

「ああ。彼のことだったんだね。確かに、最近手伝いに来てくれることもあるかな」
「わざっとらし~。まぁ、会長はアルファ様だもんね~。野田くんはオメガでしょう?」
「何が言いたいんだか」
「だからぁ。野田くんがオメガだから、オモチャにするつもりなんだぁって」
「残念ながら、俺にはそんな趣味はないよ」

金田家は冬馬家と古くから付き合いがある。父親からは、昔から金田と仲良くする様にと口をすっぱくして言われていた。けれど龍一郎はいまだにこの金田という人間を少しも好きにはなれなかった。

「会長にその気がなくても彼はどう思うだろう? 冬馬家が今までオメガにしてきた仕打ちを、彼が知ったら、可哀想だなぁ」
「何が言いたいのかな?」

悪意のある言葉にイライラして、コーヒーが飲みたくなった。
律葉の入れた、少し苦めのコーヒー。

「会長のためにも、彼のためにも、会長は彼と関わらない方が良いんじゃないかなって」
「どうして?」
「会長って、あんまり気がついてないかもしれないけど、とっても人気があるんだよね~。それなのに、誰か1人を。しかもその相手がよりにもよってオメガだった日には、その子は妬み嫉みをぶつけられて、傷つくことになると思うよ」
「……そうか」
「というか、もう嫌がらせなんかはかなりされているみたいだけどね~」

そう言って龍一郎の様子を伺い見る金田に、龍一郎はなんてことのない顔を装った。

律葉の近くにいることは楽しくて居心地がいい。
出来ることなら、彼の隣で過ごしたい。

(けど、それは俺のわがままなのかもしれないな)

龍一郎は代々オメガやベータを蔑んできた家系の跡取りで、あのクズな父親の息子で、アルファだ。
もしかしたら自分はいずれ父親のようになってしまうかもしれない。
彼を大事に思うけど、彼を大切に出来る自信も守る自信もない。

だから彼を遠ざけた。
迷惑だと言って、あの居心地の良い空間を終わらせた。

それから彼のことは頭の隅に追いやり、いつも通りの味気ない日々を過ごしていた。

放課後、以前なら彼が来ていたくらいの時間、生徒会室に居るとノックの音が部屋に響いた。

「どうぞ」
「失礼する」

そう言って入ってきたのは辰巳だった。

「辰巳か。こんな所に来るなんて珍しいね」
「ああ。校内でストーカー被害にあっている生徒がいるから、協力してもらいたくてな」

校内でストーカーというのは珍しいが、協力依頼自体はよくあることだ。

「ストーカー?」
「下駄箱や引き出しに体液のついたティッシュを入れられたりしているらしい。被害者はかなり傷ついているし、このまま行けばエスカレートする可能性もある」
「そうだね分かった。もちろん協力するよ。それで被害を受けた生徒は?」
「野田律葉という生徒だ。彼は教師くらいの男性に不信感を持っているようだから、この件は生徒会と風紀委員で解決できればと思っている」
「っ」

律葉の名前に、龍一郎は息をつまらせた。

「どうした?」

龍一郎を訝しげに見やった辰巳に、慌てて微笑みを返す。

「あ……、いや。それじゃあとりあえず調査と、下駄箱周辺の見回りを強化しよう」
「ああ、頼む。風紀の方でも調査と見回りをするからあとで資料を持ってくる」

そう言って辰巳は生徒会室から出て行った。

律葉を守りたいと思う。
けれど、自分が表立って彼と関わると、彼にとって良くないことだと思った。

その後、ストーカーの容疑者は割とすぐ炙り出せ、予定とはだいぶ変わったが、犯人を捕まえることができた。
彼のことを、陰ながら助けることができて龍一郎はただ満足した。
今回のことの様に影からでも助けたり、こっそりと少しでも関われればそれで良いと思った。

それなのに。龍一郎が律葉にあんなにひどいことを言って拒絶したのに、彼は龍一郎と関わることが多くなる書記に自ら立候補したのだ。

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