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12 嬉しくない1位
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その後、ルーナストは何試合かした。結果的に言えば、ルーナストはトーナメント1位になることができた。
(あんまり嬉しくない1位だけどね……)
数名、ロイと同じようにわざと手を抜いている試験生がいたのだ。
この1位は本当の1位ではない。
ルーナストは最後まで釈然としない思いで戦った。
最後の1人にも難なく勝つと、椅子に座って鋭い目で見ていたベルガリュードはゆっくりと立ち上がり、ルーナストに向かって歩いてきた。
目の前で立ち止まったベルガリュードはやはり背が高い。
ルーナストは170センチほどだが、そのルーナストよりも頭ひとつ分はでかそうに見えた。
「優勝おめでとう」
低い声が上から降ってくる。
「ありがとうございます」
「さて、約束だ。私に叶えられる願いなら聞き入れてやろう。何か望みはあるか」
「はい、閣下。私の望みはドラスティール元帥閣下との一戦です」
「私と戦いたいと?」
「はい」
「……いいだろう。だが、今のお前の力ではさすがに私も楽しめまい。お前が無事、試験に受かりその後新兵の訓練に絶え抜いた暁にはその願いを叶えてやろう」
口の端をわずかに上げ、ルーナストを静かに見下ろすベルガリュードは楽しそうにも見える。
(それでは話が違う)
けれど、ルーナストはうなずくしかった。
「ルート! どうだった?」
別の試験場に行っていた訓練生が戻ってくる中、ダダダと走り寄ってきたのはショーンだ。
「ショーン! ショーンこそどうだったの?」
「僕はまぁ、手応えありかな! 多分受かると思う」
ショーンはニコニコ顔だ。
「本当? 私も受かるとは思うけど、ちょっと自信はない」
トーナメント1位とはいえ、中には本気じゃない試験生もいた。
その人たちにルーナストは勝てる気がしなかったのだ。
「え~。あのルートが!」
「なにその言い方」
「だって、ルートってばいっつも余裕綽綽みたいな感じだったじゃん。僕、ルートに勝ったことないし」
「上には上がいるんだよ」
「へ~。あ、ところで横にいるでっかい人は誰?」
ショーンが少し警戒したようにルイを見た。
「ああ、友達になってくれたロイ・アスランだよ。剣がとっても強い。で、ロイ、この子はショーン・ウィリー。私の友人だからショーンとも仲良くしてくれると嬉しい」
「ロイ・アスランです。ロイと呼んでくれ。よろしく」
「……ショーン・ウィリー。ショーンでいいよ」
2人の自己紹介が終わって、ルーナスト達3人は試験結果を待つ間少し話しながら待った。
話すうちにショーンは、ロイがその見た目とは裏腹に、無骨だけれどもいい人間であると判断したのか警戒を解いてそれなりに仲良くなったようだ。
「そういえば、こっちの試験会場にはあの、ドラスティールの鬼神がいたんだよ!」
嬉しそうに報告するショーンにルーナストは首を傾げた。
「ドラスティールの鬼神って、ベルガリュード・リック・ドラスティール第二皇子殿下?」
「そうそう! とっても大きくてかっこよかった! ルートはファンだったよね? ルートも見られる機会があるといいけど」
「見たよ。私たちのところにもずっといらっしゃったし」
「え……。嘘。じゃあまさか、分身?」
「そうかも。本当、すごい方だね」
分身はかなり高度な魔術の上に、うまく魔力をコントロールしなければ多くの魔力を消費する。
常人にはとても真似できるような魔術じゃないのだ。
「ねぇ、ロイもドラスティールの鬼神のファンでしょ? この帝国領の軍人を目指す人はみんなファンだよね」
ショーンはそれはもう嬉しそうにロイに尋ねた。
「まぁ、すごいお方だと俺も思うが、ファン……ではないな」
「ええーー!? そんな」
ロイの返事が想定外の返事すぎたのか、ショーンは信じられないものを見る目でロイを見て固まった。
(あんまり嬉しくない1位だけどね……)
数名、ロイと同じようにわざと手を抜いている試験生がいたのだ。
この1位は本当の1位ではない。
ルーナストは最後まで釈然としない思いで戦った。
最後の1人にも難なく勝つと、椅子に座って鋭い目で見ていたベルガリュードはゆっくりと立ち上がり、ルーナストに向かって歩いてきた。
目の前で立ち止まったベルガリュードはやはり背が高い。
ルーナストは170センチほどだが、そのルーナストよりも頭ひとつ分はでかそうに見えた。
「優勝おめでとう」
低い声が上から降ってくる。
「ありがとうございます」
「さて、約束だ。私に叶えられる願いなら聞き入れてやろう。何か望みはあるか」
「はい、閣下。私の望みはドラスティール元帥閣下との一戦です」
「私と戦いたいと?」
「はい」
「……いいだろう。だが、今のお前の力ではさすがに私も楽しめまい。お前が無事、試験に受かりその後新兵の訓練に絶え抜いた暁にはその願いを叶えてやろう」
口の端をわずかに上げ、ルーナストを静かに見下ろすベルガリュードは楽しそうにも見える。
(それでは話が違う)
けれど、ルーナストはうなずくしかった。
「ルート! どうだった?」
別の試験場に行っていた訓練生が戻ってくる中、ダダダと走り寄ってきたのはショーンだ。
「ショーン! ショーンこそどうだったの?」
「僕はまぁ、手応えありかな! 多分受かると思う」
ショーンはニコニコ顔だ。
「本当? 私も受かるとは思うけど、ちょっと自信はない」
トーナメント1位とはいえ、中には本気じゃない試験生もいた。
その人たちにルーナストは勝てる気がしなかったのだ。
「え~。あのルートが!」
「なにその言い方」
「だって、ルートってばいっつも余裕綽綽みたいな感じだったじゃん。僕、ルートに勝ったことないし」
「上には上がいるんだよ」
「へ~。あ、ところで横にいるでっかい人は誰?」
ショーンが少し警戒したようにルイを見た。
「ああ、友達になってくれたロイ・アスランだよ。剣がとっても強い。で、ロイ、この子はショーン・ウィリー。私の友人だからショーンとも仲良くしてくれると嬉しい」
「ロイ・アスランです。ロイと呼んでくれ。よろしく」
「……ショーン・ウィリー。ショーンでいいよ」
2人の自己紹介が終わって、ルーナスト達3人は試験結果を待つ間少し話しながら待った。
話すうちにショーンは、ロイがその見た目とは裏腹に、無骨だけれどもいい人間であると判断したのか警戒を解いてそれなりに仲良くなったようだ。
「そういえば、こっちの試験会場にはあの、ドラスティールの鬼神がいたんだよ!」
嬉しそうに報告するショーンにルーナストは首を傾げた。
「ドラスティールの鬼神って、ベルガリュード・リック・ドラスティール第二皇子殿下?」
「そうそう! とっても大きくてかっこよかった! ルートはファンだったよね? ルートも見られる機会があるといいけど」
「見たよ。私たちのところにもずっといらっしゃったし」
「え……。嘘。じゃあまさか、分身?」
「そうかも。本当、すごい方だね」
分身はかなり高度な魔術の上に、うまく魔力をコントロールしなければ多くの魔力を消費する。
常人にはとても真似できるような魔術じゃないのだ。
「ねぇ、ロイもドラスティールの鬼神のファンでしょ? この帝国領の軍人を目指す人はみんなファンだよね」
ショーンはそれはもう嬉しそうにロイに尋ねた。
「まぁ、すごいお方だと俺も思うが、ファン……ではないな」
「ええーー!? そんな」
ロイの返事が想定外の返事すぎたのか、ショーンは信じられないものを見る目でロイを見て固まった。
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